住宅ローン基礎知識 新規借り入れ
注文住宅の購入とは、すでに建築された状態の家を買うことではなく、これから自分好みの家を建てることをいいます。
注文住宅の建築では住宅が完成するまでの道のりは長く、多くの注意すべき点があります。
今回は注文住宅購入時の「お金」に関する問題について解説します。
注文住宅建築の大きなリスクの1つに、工事を依頼した建築会社の倒産があります。
工事請負契約を結んだ建築会社が、工事着工後の建築期間中に倒産してしまうと、その工事は立ち行かなくなります。もし、着手金や中間金を支払っていたら、支払い済みの代金が返還されることは難しいでしょう。
工事を引き継いでくれる建築会社が見つかったとしても、以前の契約をそのまま引き継ぐことはほとんどありませんので、工事代金が当初の予算よりも高額になる可能性があります。
そこで、建築会社の倒産リスク対策のために「完成保証制度」をおさえておきましょう。建築会社選びには、価格や工法、デザインも大事なポイントですが、このような「完成保証」に加盟しているかどうかを確認することも重要です。
「完成保証制度」とは、建築会社の倒産などにより工事が中断した場合に、注文者の負担を最小限に抑えるため、工事の中断や引継ぎで発生する追加の工事費用や、前払金の損失を一定の限度額まで保証金でカバーしてくれるものです。
また、希望により代替履行業者(工事を引継ぐ業者)を用意してくれます。
住宅購入者が住宅ローンの融資を受けた後で死亡した場合は、一般的に団体信用生命保険に加入していますので、団体信用生命保険の保険金で住宅ローンは完済されます。
ただし、これから建築を開始する注文住宅においては、住宅ローンの組み方によって注意が必要です。
土地を購入する時点、もしくは建築着工の時点で、全額一括融資するタイプの住宅ローンを利用する場合は、すでに全額融資を受け、団体信用生命保険も付保されています。
そのため、建築途中で一家の大黒柱が亡くなっても、保険金で遺族は住宅を完成させることが可能です。
土地購入資金と住宅建築資金とわけて融資するタイプの住宅ローンや、住宅建築資金の融資でも、中間金と完工金にわけて融資するタイプの住宅ローンを利用する場合は、すでに融資を受けた部分には、団体信用生命保険が付保されているので問題ありません。しかし、まだ実行されていない融資部分については、融資がされないことに。
分割実行の住宅ローンを利用している場合、住宅建築途中に施主が死亡してしまった場合の選択肢は以下のとおりです。
・工事を中断して、すでに発注している分のみ代金を支払う(家は現状の状態で買い取ってくれる業者を探すか解体する)
・手持ちの資金や死亡保険金など活用して残金を支払う
・配偶者に年収があれば、新たに住宅ローンの審査を受ける(両親との親子リレーローンなども選択肢に入れる)
団体信用生命保険付きのつなぎ融資を利用する場合は、分割実行の場合と同様になり、融資がまだなされていない分に対応しなければなりません。
団体信用生命保険なしのつなぎ融資を利用している場合には、現在の工事が止まってしまうだけでなく、つなぎ融資で借りた分の返金も要求されます。
つなぎ融資で借りた額に加えて、建築完了までの資金を用意できない場合には、解体費用をかけて更地にして売却するか、もしくは、現状の建築途中の状態で売却に出すこととなります。
注文住宅の建築には、とても大きなリスクが存在します。これらのリスクに対応するためには、住宅ローンや団体信用生命保険付きのつなぎ融資が使える金融機関を探すか、着工前に生命保険の金額を増額しておくことが肝心です。
※本記事は、2021年3月時点の情報に基づき一部内容を修正しました
監修者:逆瀬川 勇造(宅地建物取引士)