住まいのコラム

同棲解消が決まったらすべきことは?
退去や引越しにかかるお金を解説

最終更新日:

監修者
高野 友樹
公認不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
同棲の解消が決まったらやることは?
まずは新しい住居を探し、現在の住居を引き払う手続きを進めます。そして、退去や引越し、そのほかの費用について話し合い、どのように分担するかを決めます。ペットがいる場合はどちらが引き取るか、いっしょに買った家具や家電のローンが残っていれば、支払いをどうするかなどの話し合いも必要です。

同棲解消は、恋愛関係の破局とも相まってデリケートな出来事ですが、解消することが決まったら、同時に多くの手続きや調整、お金の問題などが発生します。現在の住居を退去する手続きから、新居への引越し、それらに伴ってかかる費用の管理まで、計画的に進める必要があるでしょう。
この記事では、同棲解消時にすべきことを時系列順に紹介し、退去や引越しにかかる費用に解説します。

同棲経験者のおよそ2割が「同棲解消」している

同棲経験のある20代~30代の男女654人にアンケートしたところ、同棲後、その生活を解消したという人は22.9%とおよそ2割でした。
結婚前提に開始することも多い同棲ですが、その後解消となるケースは決して珍しくないと言えそうです。
※対象者:全国の同棲経験のある20代~30代男女654人 調査時期:2024年1月

アンケートで聞いた 同棲を解消した経験はある?

  • 同棲を解消したことがある…22.9%
  • 同棲を解消したことはない…77.1%

同棲解消のきっかけや理由は?

上記のアンケートで「同棲を解消した」と答えた人に、その理由について聞いてみました。

アンケートで聞いた 同棲を解消した理由は?

付き合いを解消した:26.0% 価値観のズレ:24.0% 転勤などやむを得ない事情:13.3% 結婚のタイミングが合わなかった:13.3% 関係がマンネリ化した:10.0% 自分の時間が欲しい:8.0% その他:5.3%

付き合いを解消し別れたため

恋愛感情が冷めたり、将来的にいっしょにいることに疑問を感じたりすることが原因で、単純にカップルとしての関係を終わらせることで、同棲を解消するケースがあります。ほとんどの場合、付き合いを解消して別れることになれば、それに伴って、同棲も解消することになります。

生活スタイルや価値観のズレ

いっしょに生活をして初めて、生活スタイルや価値観の違いを実感するというケースは多々あります。家事の分担の不公平感、金銭感覚にずれがある、プライバシーについての感覚が大きく異なるなどの問題があると、どちらか、もしくは双方がストレスを感じるようになるでしょう。その結果、耐えられなくなれば、最終的に同棲解消に至ります。
このケースでは、同棲だけを解消してお互い別々に暮らすものの、カップルとしての関係は継続する場合もあります。

転勤などやむをえない事情

愛情があっても、転勤や親の介護などやむをえない事情で、生活の場所を別々にする必要が出てくることもあります。この場合は、一時的に同棲を解消するという選択も考えられます。

結婚のタイミングが合わなかったため

お互いの結婚に対する考え方やタイミングに違いがある場合、そのことが原因で同棲解消に向かうケースもあります。
たとえば、一方がすぐにでも結婚を望んでいるのに対し、もう一方がまだ結婚はしたくないと考えているなど、将来のビジョンにタイムラグがあると、結婚しないまま同棲している関係がずっと続くことになります。この場合、結婚を考えている側が見切りをつけて、別れると同時に同棲を解消する流れになりやすい傾向です。

同棲を解消する際にすべきこと

同棲を解消することが決まってから、実際に別々に暮らし始めるまでには、さまざまな手続きなどがあり、意外と時間がかかります。同棲解消が決まったら何をすべきなのか、順に紹介します。

1. 引越し先を探す

まずは、引越し先である新しい住居を探す必要があります。同棲を解消したときは、主に次の2つのパターンが考えられます。

<同棲解消時の現住居の扱い>
・どちらか片方が新しい住居を探して引越しをする。もう一人は(少なくとも当分のあいだ)現在の住居に住み続ける。
・双方が新しい住居を探して(または実家に帰るなどの選択をして)、どちらも引越しをする。現在の住居は退去する。

このうち、後者の2人とも引っ越す場合には、2人のスケジュールをある程度合わせる必要があります。退去する日の目安を相談して決めて、それに合わせて引っ越せる新しい住居を、双方とも探さなければなりません。

2. 住んでいる物件の退去手続きを進める

退去手続きは契約書に従って進めますが、一般的には、退去する日の1ヵ月以上前に退去の意思を伝えなければいけません。契約書を確認し、退去の意思をいつ伝える契約になっているか、まずは確認してください。

退去日の希望は、管理会社に連絡して伝えます。現在の住居と次の住居の家賃をなるべく二重に支払わなくてすむよう、スケジュールを調整しましょう。

3. 家具や家電などの分配を決める

同棲中に共有して使っていた家具や家電をどうするかも、2人で話し合って決めておきます。どちらが引き取るか、または買い取るか、それとも処分するかなど、すべての家具・家電について細かく決める必要があります。
共同の貯金がある場合には、その分配についても話し合いが必要です。これらの分配の話し合いを先延ばしにしてしまうと、引っ越す直前になってもめる原因にもなります。

また、いっしょに飼っていたペットがいる場合には、どちらが引き取るかも大事な問題です。植物を育てていた場合なども、どちらかが新居に持っていくかを決めることになるでしょう。
大きな家具や家電の不用品が出た場合は、粗大ごみの回収依頼手続きも早めにしておく必要があります。住んでいる場所によっては、申込みから回収まで1ヵ月近くかかることもあるためです。

4. 電気・ガス・水道・インターネットの解約など

住所が変わると、電気・ガス・水道の引越し手続きが必要になります。退去時の使用停止の手続きは、日程の決まりはありませんが、連絡せずにそのままにしておくと、引越し後も料金を支払うことになりかねません。電気・ガス・水道ともに引越しの1~2週間前を目安に、インターネットか電話で手続きを済ませておきます。

新居での入居時の使用開始の手続きも、忘れずに行いましょう。電気・ガスは引越しの1~2週間前、水道は3~4日前を目安にすませておくことが必要です。入居時のガスの開栓には、必ず立ち会わなければいけません。

また、インターネット回線についても、解約・新規契約を進めます。新居でのインターネット回線の開通には時間がかかることもあるので、新居が決まったらすぐに手配しておくことをおすすめします。さらに、引越し後も旧住所に郵便物が届かないよう、郵便局に転送の手続きをすることも忘れずに行ってください。

5. 新居に引越しをする

引越しの準備も計画的に進めていきましょう。見積もりを取るなどして引越し業者の選定をして、日時を決めて依頼します。荷造り作業は基本的に2人がそれぞれ行うことになるので、どちらの荷物かわからなくならないよう、箱の置き場所を分けるなどの工夫が必要です。

引越しに伴って、旧住居のエリアの役所に転出届の提出(引越し日の2週間前~当日)をし、新居のエリアの役所に転入届を提出します(引越し日から2週間以内)。なお、同じ市区町村内での引越しの場合は転居届を役所に提出します(引越し日から2週間以内)。

また、役所では、マイナンバーカードや国民年金の住所変更、印鑑登録、国民健康保険の場合は加入手続きなども必要です。
そのほか、銀行、クレジットカード、生命保険、携帯電話、各種会員サービスの住所変更手続きも進めます。

同棲を解消した人に聞いたアンケートによると、同棲解消での手続きでもっとも大変だったのは引越し準備でした。
新しい引越し先がすぐに見つかるとは限らないので、同棲解消が決まったらできるだけ早めに準備を開始しましょう。

アンケートで聞いた 同棲解消で大変だった手続きは?

引越し先探しなど引越し準備:57.3% 住んでいる物件の退去手続き:27.3% 新居への引越し:27.3% 家具や家電などの分配を決めること:19.3% 電気・ガス・水道・インターネットなどの解約:14.7% その他:1.3% 大変だったことは特にない:34.7% (複数回答)

同棲を解消して引っ越すとなると、手続きの数も多くなります。「この手続きはきっと相手がやっているだろう」と、担当を曖昧にして進めてしまうと、退去連絡ができていなかったなど、手続きの見落としが発生してしまい、余計なお金がかかることもありえます。やるべきことのチェックリストを作成して、見落としがないよう、お互いに確認しながら進めていくのがおすすめです。

同棲解消にかかるお金

同棲解消に伴い発生する手続きには、さまざまなお金がかかります。中には、2人で費用の分担を相談しなければならないお金もあります。お金に関しては、後々トラブルの種にもなりやすいので、しっかりと話し合いをして、分担を決めることが必要です。

住んでいる物件の退去費用

退去費用とは、賃貸物件の原状回復のための修繕費やクリーニング代などの費用です。入居時に敷金を支払っていれば、その差額のみが必要となり、返金がある場合もあります。

故意や過失、管理の義務を怠ったなどの理由で生じたキズや汚れがあった場合は、借主である自分たちが原状回復のための費用を負担することになる可能性があります。その場合も、費用は敷金から差し引かれますが、敷金を上回る金額になる場合には、追加で料金を支払わなくてはなりません。
間取りごとの退去費用の相場は、下記のとおりです。

■間取り別・退去費用の目安

間取り 退去費用の目安
ワンルーム・1K 1万5000~4万円
1DK・1LDK 3万~5万円
2DK、2LDK 4万~8万円
3DK・3LDK 5万~10万円

追加料金が発生した場合は折半するのかなど、2人でどのように費用を分担して払うのかを決めておきます。

新居の賃貸契約の初期費用

新居の賃貸契約に伴う初期費用については分担の必要はありませんが、どのくらいの費用がかかるのか把握しておきましょう。
賃貸物件を借りて、新たに一人暮らしを始めるために必要な、契約時の費用の目安は下記のとおりです

■新居の契約費用の目安(家賃7万円の場合)

項目 相場 金額
敷金 1ヵ月分 7万円
礼金 1ヵ月分 7万円
前家賃 1ヵ月分 7万円
日割家賃 仮に半月とする 3.5万円
仲介手数料 1ヵ月分+消費税(10%) 7.7万円
火災保険料 1年で1万円程度 1万円
保証料 半月分~1ヵ月分 3.5万~7万円
鍵交換費用 実費 2万円
合計 38万7000~42万2000円

また、一人暮らしの引越し費用の相場は、繁忙期(3~4月)で3万5000~6万円、通常期(5~2月)で2万7000~4万円程度です。

引越し初期費用や費用を抑える方法についてはこちらでも詳しく解説しています。

引越しの初期費用の相場は?払えないときの対処法とは

2人で購入した家電や家具などのローン

同棲中に2人で購入して、まだローンが残っている家具や家電がある場合には、残額の支払い方法について相談が必要です。後回しにしてしまうと、引越しをした後から連絡を取り合うことになり、さらにどちらが払うかもめることもあります。どのように支払っていくのかを、事前に話し合いましょう。

慰謝料を請求される場合も?

婚約といえるような結婚の約束をしていたり、長期間にわたって同棲していて内縁(事実婚)状態と認定されたりするような場合は、片方の意向による同棲解消に伴い、もう一方から慰謝料の請求が発生することも考えられます。

婚約解消で請求される慰謝料の相場はケースバイケースですが、およそ50万~100万円です。もし慰謝料を支払うことになる場合は、大きな出費となります。慰謝料を請求されかねないような別れ方は避けるべきです。また、どうしてもそうした状況になった場合は、弁護士などに相談することをおすすめします。

敷金以外にも、契約時に保証金のようなものを払っているケースがあります。たとえば、プロパンガス会社との契約時は保証金を支払うケースがありますが、入居当初にバタバタしていて、どちらが払ったか覚えていないなど、返金先についてトラブルになることもあります。同棲中に支払った金銭などは、リストにして保管しておくとよいでしょう。

同棲解消の方法やタイミングは?

同棲解消は、感情的にも、実際の手続きにおいてもデリケートな問題を含んでいます。自分自身が同棲を解消することを決心したら、それをどのように相手に伝えるべきなのでしょうか。押さえておきたいポイントを紹介します。

家ではなく外で話す

同棲解消の話を切り出すときは、家ではなく外で話すようにしましょう。家の中では感情が高ぶりやすく、話がこじれることがあるためです。人目のあるカフェやレストランであれば、お互いに冷静になることができ、テーブルを挟んで対面すれば、あらたまった話もしやすいはずです。

お互いの繁忙期を避ける

同棲解消の話し合いをするタイミングも重要です。どちらかが忙しい時期は避け、余裕を持って、落ち着いて話せるタイミングを見計らいます。平日よりも休みの日など、仕事の疲れがないときを選ぶのも大切です。

同棲解消の具体的な理由を伝える

同棲解消の理由を聞かれたら、なるべく具体的な理由を伝えます。冷静に、けれど気持ちは隠さず素直に話すことで、お互いに納得のいく解決へと進むことができるはずです。

片方が突然決断して、一方的に押し付けるのは避けるべきです。お互いの意見を尊重しながら、同棲解消へのプロセスを進んでいくのが理想的です。

同棲の解消はデリケートな問題ですが、賃貸物件に住んでいる場合、同時にさまざまな手続きが発生します。同棲の解消を決意してから、相手に伝えるまでに時間がかかってしまうと、その後、無事退去日を迎えるまでには、さらに数ヵ月の日数がかかることもあります。うまくタイミングを見計らい、話し合いの場を設けるようにしましょう。

まとめ

.同棲を解消するときには、さまざまな手続きやお金に関する問題が出てきます。感情や気持ちも揺れ動くかもしれません。
しかし、2人でしっかりと話し合い、納得し合うことができれば、お互いにとって前向きな結論を得られるはずです。次のステップに向けて新たな一歩を踏み出せるよう、新居の手配や退去手続きなど、目の前のタスクをクリアしていきましょう。

監修者プロフィール 高野 友樹 公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
不動産会社にて600件以上の仲介、6000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は株式会社高野不動産コンサルティングを設立し、不動産コンサルティングを行う。

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