住まいのコラム

敷金・礼金を簡単にわかりやすく解説!
いつ払う?返ってくるの?

最終更新日:

監修者
矢野 翔一
2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
敷金・礼金はどんな費用?
敷金・礼金は賃貸借契約を結んだ後に支払う初期費用の一種です。敷金は、退去時の原状回復費用や家賃の未払いに備え、前もって大家さんが入居者から預かるお金です。一方、礼金は、入居者から大家さんに対する謝礼の意味を持ちます。どちらも契約後に1度だけ支払うもので、毎月支払いが発生するものではありません。

初期費用の1つである「敷金」と「礼金」は、物件によって金額設定が異なります。合計で家賃3~4ヵ月分を支払うこともあれば、入居しやすいようにどちらもゼロ円に設定された物件もあります。
入居にかかるコストを大きく左右する敷金・礼金はそれぞれどのような役割を持っているお金なのでしょうか。今回は賃貸物件を借りる前に知っておきたい敷金・礼金の仕組みについてご紹介します。

敷金・礼金とは?いつ払う?返ってくる?

敷金・礼金は、多くの賃貸借契約に関係する費用です。賃貸借契約に関わる費用にはさまざまなものがありますが、その中でも敷金・礼金はそれぞれどのような役割を持つのでしょうか。

敷金・礼金は賃貸契約時支払う初期費用の一種

敷金・礼金は賃貸借契約を結んだ後に支払う初期費用の一種です。契約後の1度だけ支払うもので、家賃や管理費のように毎月支払いが発生するものではありません。
それぞれ「家賃○ヵ月分」と設定されることが多く、その他の諸費用と同時に仲介会社へ支払います。

一般的には、敷金・礼金を含む諸費用の支払いが契約における最後の手続きです。即時入居可能な物件であれば、契約締結のタイミングで鍵を受け取れるため、すぐに入居できるようになります。

敷金とは?返ってくるって本当?

敷金は、退去時の原状回復費用や家賃の未払いに備え、前もって大家さんが入居者から預かるお金です。一部の地域では「保証金」と呼ばれていますが、役割は同じです。

入居者は、退去時に部屋を入居前の状態に戻す「原状回復」の義務を負います。一般的な経年劣化にともなう修繕や設備交換の費用は大家さんが負担しますが、故意・過失によって破損・損耗した設備の回復費用は、入居者が負担しなければなりません。

しかし退去時に数万円~数十万円の原状回復費用を請求されても、入居者に支払い能力がなく支払えない場合があります。そうした費用の未払いに備え、前もって家賃の1~3ヵ月分程度を預かっておくのが敷金の仕組みです。

敷金はあくまで預かり金であるため、原状回復費用が敷金の金額内に収まった場合は、差額敷引きのようにが返還されるケースがあります。ただし、敷引きのように原状回復費用にかかわらず敷金を返還しない契約となっている場合もあるので、契約時に確認しておくとよいでしょう。

敷金とは?礼金との違いや返金の有無、なしの場合のデメリットを解説

礼金とは?

礼金は、入居者から大家さんに対して支払う謝礼としての意味を持つ費用です。今ほど賃貸で借りられる物件が多くなかった時代に、貴重な家を貸してくれた大家さんへのお礼の気持ちとして渡されていた風習が今も残っているものといわれています。

礼金は今後の生活に向けた心付けや入居のお礼として支払うお金であるため、敷金のように原状回復費用には充てる義務はなく、退去時の返還もありません。なお、地域によっては礼金の文化がなく、代わりに敷金の一部を必ず償却する「敷引き」の制度を採用する場合があります。

敷金・礼金の相場

敷金・礼金の金額には法的な制限はなく、大家さんの一存で決められます。とはいえ高額にしすぎると入居希望者が集まりにくくなるため、一般的に採用されやすい大まかな相場は存在します。

出典:国土交通省住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」

国土交通省住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、令和4年に設定された敷金(保証金)の月数は「家賃の1ヵ月ちょうど」が最多の64.9%。「2ヵ月ちょうど」が25.0%と続きました。

出典:国土交通省住宅局「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」

礼金も「1ヵ月ちょうど」が69.4%、次いで「2ヵ月ちょうど」が17.7%となっています。このことから、敷金・礼金ともに家賃の1ヵ月ちょうどがおおよその相場と考えてよいでしょう。

敷金・礼金が相場以上の物件の特徴

一方、敷金・礼金ともに3ヵ月超に設定しているという物件もありました。
なぜ敷金・礼金を相場よりも大幅に高い設定にする必要があるのでしょうか。その理由の1つに、退去時の原状回復費用が一般的な物件よりも高額になるという事情があります。

傷みや汚れがない築浅の物件は、原状回復費用がわずかな金額で収まりやすく、敷金1ヵ月分で十分にまかなえることがほとんどです。一方で、築古の物件ほど修繕費用やクリーニング代が増えやすいため、高額の原状回復費用を見越して1ヵ月分よりも多い敷金を設定している可能性が考えられます。

礼金は原状回復費用に充てる義務はないと前述しましたが、礼金の使い道は大家さんが自由に決められます。大家さん負担の原状回復費用に充てたいと考える大家さんもいるかもしれません。特に築古の物件ほど経年劣化に対する原状回復が必要になるため、2ヵ月分以上の礼金を設定するケースが増えるでしょう。

敷金・礼金は交渉できる?

大家さんによっては、値下げ交渉によって敷金・礼金を値引きしてくれる場合があります。比較的、減額交渉が成功しやすいのは敷金です。敷金は原状回復費用や家賃滞納分に充てるための預かり金にすぎません。大家さんが敷金をゼロにしたとしても、入居者が負担する原状回復費用の支払いタイミングが退去時に変更されるだけです。実質的に大家さんは何も損をしていないことになるため、値下げや無料化の交渉は通りやすいと考えられます。

敷金に比べると、礼金の減額交渉を成功させるのは難易度が高いでしょう。大家さんが礼金を原状回復費用の財源と見込んでいるケースもあるからです。ただし、数ヵ月以上入居者が決まらない状況が続いているような場合には、少しでも早く入居者を決めるため減額に応じるケースはあります。

初期費用の負担を少しでも抑えたい方は敷金・礼金の値下げ交渉が効果的です。一方、長期入居を予定していて家賃負担を軽減したい方は家賃の減額を交渉したほうがトータルの家賃を抑えられるので、目的によって使い分けましょう。

敷金・礼金ゼロの物件もある

敷金・礼金なしのいわゆる「ゼロゼロ物件」というものも存在します。

敷金・礼金ゼロ物件とは?

敷金・礼金ゼロ物件とは、その意味のまま、初期費用としての敷金・礼金を0円としている物件のことです。

敷金・礼金の設定は義務ではなく、あくまで大家さんが設定の有無を決定しています。礼金があれば大家さんは収入が増え、敷金があれば原状回復費用を取り損ねる心配がなくなります。しかし入居者が支払う初期費用が増えるため、入居までのハードルが上がるのは間違いありません。

そこで大家さんは早期に次の入居者を決めるため、敷金・礼金をゼロに設定する場合があります。入居者側としては少ない初期費用で入居できるため魅力的に感じられるでしょう。

敷金・礼金なし物件のメリット・デメリット

敷金・礼金なしの物件には、一般的に以下のようなメリット・デメリットがあるといわれています。

  メリット デメリット
敷金 ・初期費用が安くなる
・退去時に敷金の残額を償却されない
・退去時、原状回復費用を用意する必要がある
・家賃滞納時に敷金で補填できない
礼金 ・初期費用が安くなる ・礼金がない分家賃が割高の場合あり
・競争率が高く好物件に入居しにくい

メリット

敷金・礼金なし物件の最大のメリットは初期費用の安さです。
初期費用には敷金・礼金のほか、家賃2ヵ月分(入居当月および次月)と仲介会社に支払う仲介手数料が含まれています。それらを合計すると、初期費用としてかかるお金は家賃5~6ヵ月分にもなるといわれています。そのうち2ヵ月分の負担がなくなるのは大きなメリットといえるでしょう。

デメリット

敷金・礼金を払わないことで、退去時の支払いが大きくなる可能性があるというデメリットがあります。
敷金・礼金がなくなったところで、退去時の原状回復費用の負担が減るわけではありません。退去時は、引越しなどで出費が増えているタイミング。原状回復費用を資金繰りするのが難しいケースも少なくありません。
また、礼金がない分普段の家賃を割高に設定している場合もあります。物件によっては、結果的にトータルの支出が増えてしまう可能性があるので注意しましょう。

敷金・礼金なしはやめたほうがいい?借りるときの注意点

注意したいデメリットもある敷金・礼金なし物件ですが、すべての敷金・礼金なし物件が要注意というわけではなく、中には、礼金分の広告費用を削り、学生さんや新社会人が入居しやすい初期費用にするといった大家さんの厚意であるケースも少なくありません。

目当てのゼロゼロ物件が本当にお得な物件であるかを確かめるには、敷金・礼金以外の条件も比較するとよいでしょう。周辺物件の家賃相場に比べて割高でなく、室内の設備・備品の状態も良好であれば、好条件の物件といえるかもしれません。
また、入居時の契約内容も事前に確認しましょう。入居後1年以内での退去時には違約金を支払う必要があるなど、ゼロゼロ物件ならではの条件が追加されている場合があります。

ゼロゼロ物件は、退去する際、敷金から原状回復費用を充当することができません。部屋の使い方によっては大きな金額が請求される場合があるため、入居中から退去費用を貯めておく、日頃から部屋を汚さないよう気をつける、などの努力も必要です。

敷金がゼロでも原状回復費用の負担が免除されるわけではなく、退去時に原状回復にかかった費用やクリーニング費用を請求される可能性があります。クリーニング費用は物件ごとに異なるため、契約時にクリーニング費用がいくらか確認しておきましょう。

まとめ

賃貸借契約の内容は物件によってさまざまであり、敷金・礼金の扱いも大きく異なります。初期費用が安くても退去時の費用負担が大きいようなケースもあり、敷金・礼金の額だけでは契約の善し悪しは図れません。

賃貸物件を選ぶ際には、物件の状態と費用総額の釣り合いが取れていることが重要です。敷金・礼金の安さといった目先の費用に惑わされないよう、契約内容の確認は十分に行いましょう。

監修者プロフィール 矢野 翔一 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

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