住まいのコラム
保証人なしでも賃貸物件は契約できる?保証人がいない場合の対処法
最終更新日:

- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 保証人がいなくても賃貸物件は契約できる?
保証人がいなくても契約できる賃貸物件は存在します。一部の賃貸物件は、家賃保証会社の利用や家賃一括払い、クレジットカード払いを条件に保証人を不要としています。近年は保証会社の利用を義務づけ、保証人がいなくても入居しやすい物件が増えていますが、保証会社の利用には保証料の支払いが必要になる点には注意が必要です。
かつては賃貸物件の契約時には必ず保証人をつける必要があるといわれてきました。しかし近年では家族形態の変化などにともない、保証人不要で借りられる物件が増えてきています。
今回は、賃貸における保証人の役割や保証人なしで賃貸契約する方法、保証人なし物件のメリット・デメリットについてご紹介します。
賃貸物件を契約するときの「保証人」とは?

賃貸借契約を結ぶ際、大家さんや管理会社が入居者に「保証人」をつけるように求める場合があります。賃貸借契約における保証人とは何のために設定され、どのような役割が求められるのでしょうか。
家賃が支払えないときに入居者に代わって支払う人
保証人とは、入居者が家賃を支払わずに滞納を続けた場合、入居者に代わって支払い義務を負う人のことです。
入居者が家賃を滞納すると、大家さんはその分家賃収入を得られなくなります。 家賃収入は部屋数×家賃で上限が決まっているため、滞納者が出た分の損失を他でカバーできません。大家さんは家賃を滞納する入居者をすぐにでも退去させたいところですが、一度賃借人として住み始めた入居者は借地借家法で保護されるため、追い出しは非常に困難です。そのため、大家さんは家賃滞納が長期化し法的にも改善の見込みがないと判断されるまで入居者を退去させることができません。
そうした状況を避けるため、大家さんは滞納された家賃を回収するための対策として、入居時に保証人の設定を義務づけるケースが増えています。
連帯保証人との違い
賃貸借契約を結ぶ際、保証人ではなく「連帯保証人」をつけるように求められる場合があります。
保証人と連帯保証人は、どちらも賃借人(入居者)が滞納した家賃を代わりに返済する義務を負いますが、この両者には保証に対する責任の重さに違いがあります。
保証人は主債務者である賃借人の債務を代理返済する立場にありますが、保証人本人が債務を負うわけではありません。そのため大家さんが滞納分の返済を保証人に求めたとしても、保証人は主債務者である賃借人に請求するように求めることが認められています。また、賃借人が家賃を支払う能力があるにもかかわらず滞納していた場合には、大家さんに対して賃借人の財産に強制執行をするように主張できるのです。
一方の連帯保証人は、保証人よりも重い弁済責任が課せられます。賃借人の債務=連帯保証人の債務と同義に扱われる立場にあるため、大家さんに対し賃借人への請求を求めたり、賃借人の財産を取り立てるように主張したりすることが認められません。
どちらも最終的には賃借人に代わって滞納分の家賃を支払う義務を負いますが、連帯保証人のほうが早い段階から支払い義務が発生する点に大きな違いがあります。
保証人に求められること
大家さんが保証人を設定する理由は、前述の通り滞納された分の家賃の支払いを保証させる点にあります。ただし、多くの大家さんは滞納が発生した直後から保証人へ支払いを求めるわけではなく、いくつかの段階を踏みながら賃借人に支払いを求めるように手順を踏みます。
家賃を滞納し始めた賃借人が大家さんとの連絡を絶つことは珍しくありません。大家さんは電話や手紙などで支払い請求を続けますが、賃借人から反応を得られない状態が続く場合、大家さんはやむを得ず保証人への連絡を開始します。
一般的に大家さんよりも賃借人との関係が深い人物が保証人になるため、賃借人も保証人からの連絡には反応を示すことがあります。この時点で家賃が支払われるケースも多いため、保証人は代理返済の請求先としての役割以上に、連絡先としての役割が重視されると考えられるでしょう。
保証人なしで賃貸物件を借りるには?

賃貸借契約において保証人は非常に重要な役割を担いますが、一方ですべての入居者が保証人を用意できるとは限りません。保証人を頼める関係者がいない入居希望者は、次のような方法により賃貸物件を借りることができます。
保証会社を利用する
近年、保証人を設定する代わりに保証会社の利用を義務づける物件が増加しています。保証会社は、入居者が滞納した家賃を大家さんに立替払いし、立替分を入居者に請求する仕組みです。保証会社が行うのはあくまで立替であり、最終的には入居者が支払い義務を負います。
家賃を滞納しがちな入居者にとっては厳しい制度であるといえますが、大家さんにとっては確実に滞納分を回収できるため、今後も利用を義務づける物件は増加していくでしょう。
賃貸の保証会社について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

保証人をつけていても大家さんは必ず滞納している家賃を保証人から徴収できるとは限りません。なぜなら保証人に支払い能力がない可能性があるためです。そのため、昨今は確実に家賃を徴収するために保証会社の利用を義務化するケースが増えています。
賃料を前払いする
一部の物件では、ある程度まとまった期間分の家賃の前払いを条件に、保証人なしでも契約を認める場合があります。大家さんがもっとも心配するのは、家賃の支払い能力がない入居者との契約です。入居者が家賃1年分などまとまった金額を支払えるようなら、少なくとも1年間は家賃の未納がなくなる証明になります。
なお、家賃の前払いを条件とした保証人の免除は、一般的に用いられる賃貸借契約の条件ではありません。あくまでイレギュラーな契約条件であるため、前払いをすれば必ず契約が結べるわけではないと認識しておきましょう。
クレジットカード払いで保証人不要という物件も
家賃の支払いをクレジットカード払いにするという条件で、保証人を不要にする物件があります。
クレジットカードは、発行前にカード会社からの厳しい審査に通過する必要があります。年収や勤務先、過去の金融事故履歴などが審査対象になるため、基本的に経済状態に問題がある人はクレジットカードを作ることができません。
そのため、管理会社はクレジットカード払いができるという時点で、支払い能力に問題がないと判断できます。
ただし、管理会社がクレジットカード払いを認める場合、利用できるカードを管理会社と提携するカード会社の発行カードに限定するケースは珍しくありません。また、クレジットカード払いと並行して連帯保証人を求めるケースや、クレジットカード手数料を家賃に上乗せして入居者側に負担させる場合など、クレジットカード払いを認める条件は管理会社によって異なります。
保証人不要のUR賃貸住宅を借りる
UR賃貸住宅は、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が管理・提供する賃貸住宅です。原則として保証人や家賃保証会社の利用が不要であるため、保証人を用意できない人でも一定の要件をクリアできれば入居可能です。
UR賃貸住宅への入居時には、主に申込者本人の平均月収額が審査されます。
世帯でお申し込みの場合家賃額 | 基準月収額 |
---|---|
82,500円未満 | 家賃額の4倍 |
82,500円以上 20万円未満 | 33万円(固定額) |
20万円以上 | 40万円(固定額) |
家賃額 | 基準月収額 |
---|---|
62,500円未満 | 家賃額の4倍 |
62,500円以上 20万円未満 | 25万円(固定額) |
20万円以上 | 40万円(固定額) |
審査基準はある程度厳しめですが、礼金や仲介手数料がかからず、UR賃貸住宅内での転居時には手続きが簡略化されるなどのメリットがあります。
UR賃貸住宅の特徴や入居方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
UR賃貸住宅とは?ふつうの賃貸と家賃は違う?メリット・デメリットを解説

UR賃貸住宅には、保証人不要というメリットのほか、礼金なし、更新料なし、仲介手数料なしといったメリットもあります。そのため、初期費用を抑えたい人にも向いているでしょう。
保証人不要の物件のメリット

保証人不要の賃貸物件は、近年増加傾向にあります。保証人がいらない物件は、従来の物件に比べてどのような点にメリットがあるのでしょうか。
保証人になってくれる人を見つける必要がない
賃貸契約を難しいものにしている要因のひとつに、保証人選びの手間があります。
保証人は入居者が滞納した家賃を代わりに支払う義務を負う立場です。家賃数ヵ月分という決して安くない負債を負うリスクがあるため、親兄弟にも保証人を引き受けてもらえないというケースは多く、部屋を借りたくても借りられないという人を多く生み出していました。
保証人が不要になると、賃貸物件選びにおける最大のハードルがなくなるため、保証人を用意できない入居希望者の選択肢が大きく広がります。大家さん側も保証人の用意以外に問題がない入居希望者が入居できるようになるため、保証人不要化は双方にメリットを生む施策であるといえるでしょう。
契約までの手続きがスムーズ
賃貸借契約の保証人になってもらうためには、保証人の収入証明書や印鑑証明を用意する必要があります。手続きのために職場や市区町村役場で書類を発行しなければならず、入居希望者だけでなく保証人も煩雑な手続きを行わなければなりません。
保証人が不要になれば、賃貸借契約の手続きが入居希望者だけで完結できるようになるので、契約開始から完了までの流れが非常にスムーズになります。保証人の準備を理由とした契約見送りの減少にも繋がり、大家さんや管理会社側の二度手間を減らす効果も期待できるでしょう。
保証人不要の物件のデメリット

保証人不要の賃貸物件には多くのメリットがある一方、保証人の不在に起因したデメリットも多く存在します。
保証料がかかる
保証人不要の賃貸物件では、保証会社との契約を義務づけられるのが一般的です。保証会社を利用するには保証料の支払いが必要であるため、初期費用や毎月の家賃の負担増は避けられません。
利用料は初期費用で3万円から5万円かかるケースと、毎月の家賃に家賃の数%が上乗せされるケース、またその両方の費用が発生するケースがあります。支払う保証料が割高に感じるとしても、利用できる保証会社は管理会社の提携先に限定されるため、保証料が安い会社に切り替えることは原則としてできません。
家賃の滞納リスクが小さい入居者にとっては、事実上の家賃や初期費用の値上げとなりますが、保証人不要物件を利用する以上は避けられない支出だと考えましょう。
審査が厳しくなる傾向にある
家賃保証会社を利用する際には、大家さんや管理会社に加え保証会社も入居者の審査を行います。保証会社は家賃を滞納した入居者に立替分を請求しますが、入居者が自己破産してしまうと回収できなくなるおそれがあります。
そのため、保証会社は滞納リスクがあり回収が困難と判断される入居希望者の審査を通過させません。問題行為を起こしてこなかった会社員はほぼ影響を受けませんが、借金がある人や過去に金融事故を起こした履歴がある人は、従来よりも部屋を借りにくくなるおそれがあります。
需要の低さから「保証人不要」としているケースも
入居者集めのための施策として、保証人不要を採用する物件があります。人気物件は常に入居希望者が集まるため、わざわざ保証人の用意という高いハードルを下げる必要がありません。一方、あまり人気がない物件は入居希望者にアピールできる売りを作るために、保証人を不要にする場合があります。
そうした物件は人気の低さに繋がる何らかの問題を抱えている場合があります。入居しやすくても住み心地が悪い物件の可能性があるので、内見時には十分に注意しながら物件の状態を見極めましょう。
まとめ
近年、賃貸物件の契約に必須とされていた保証人を不要とする物件が増加しています。保証人を用意できない人にとってはありがたい傾向であり、入居者が集まりにくい物件の打開策になる可能性があります。
一方、保証人不要の物件では、保証会社の利用や家賃の一括払いのように、大家さんが家賃滞納による損害を受けないための対応が必要です。保証人の用意が難しい人は、指定された保証会社を利用するか、公的機関が運営するUR賃貸物件への入居を検討しましょう。