住まいのコラム
賃貸住宅の初期費用の相場は?
交渉や分割払いはできる?
最終更新日:

- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 賃貸住宅の初期費用の相場はどれくらい?
- 月額賃料の5〜6ヵ月分が相場です。たとえば、賃料6万円の賃貸住宅であれば、30〜36万円が相場と考えられます。ただし、家主や仲介会社によって初期費用の金額は異なり、敷金や礼金の有無も分かれるため、検討段階で必ず確認するようにしましょう。
賃貸住宅を借りる際には、必ずといっていいほど、初期費用が発生します。
初期費用には具体的にどのような費用があり、それぞれいくらかかるのでしょうか。場合によってはかなり大きな額になるため、しっかり準備して、新生活に備えましょう。
本記事では、賃貸住宅の初期費用の内訳や相場とともに、値引き交渉や分割払いの可否について解説します。
賃貸住宅の初期費用の内訳

まずは、賃貸住宅の初期費用としてどのような費用を支払う必要があるか見ていきましょう。賃貸住宅の初期費用は、地域や物件のタイプ、契約内容などによって異なる場合がありますが、一般的には次のような項目が挙げられます。
敷金
「敷金」とは、賃貸物件を借りる際に預ける保証金の一種です。保証金のため、退去時に借主に返還される可能性があります。敷金の使い道は、主に次の2つです。
・賃料の未払い・不払いの補填
・退去時の原状回復費
敷金とは?礼金との違いや返金の有無、なしの場合のデメリットを解説
礼金
「礼金」は、家主へのお礼を目的に支払う費用です。一般的に、敷金のように返還されることはありません。
前払い賃料
「前払い賃料」は、契約月の家賃を日割り計算し、翌月分の家賃を加えて支払らわれる費用です。家賃発生のタイミングは契約日または入居日のいずれかです。
仲介手数料
賃貸住宅は、不動産会社の仲介によって探し、家主と契約するのが一般的です。賃貸契約を仲介してくれた不動産会社に対して支払う報酬を「仲介手数料」といいます。
火災保険料
賃貸物件の多くは、火災保険への加入を入居要件の1つとしています。
火災保険とは、主に火災や盗難、水災、風水害など、さまざまな災害からの損失をカバーする保険のこと。この保険加入で発生する火災保険料は、入居者の負担となります。
保証料
「保証料」とは、賃貸住宅の入居に際し、保証会社を利用するとき必要となる費用です。保証会社は、入居者が家賃を滞納した場合に支払いを代行します。

敷金から引かれる原状回復費は、通常損耗や経年劣化によるものは除き、借主の故意や過失によるものが対象です。タバコのヤニや臭い、ペットがつけた傷などは原状回復費の対象となるので注意してください。
賃貸住宅の初期費用の相場は?

初期費用の多くは「賃料○ヵ月分」と設定されているケースが多いものです。以下に、賃貸住宅の初期費用の相場を示します。
賃貸住宅の初期費用 | 費用相場 |
---|---|
敷金 | 賃料の1ヵ月分 |
礼金 | 賃料の1ヵ月分 |
前払い賃料 | 賃料の1〜2ヵ月分 |
仲介手数料 | 賃料の1ヵ月分 |
火災保険料 | 5,000円〜1万円程度 |
保証金 | 賃料の1ヵ月分 |
出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査報告書」をもとに作成
賃貸住宅の初期費用は、賃料の5〜6ヵ月分であることがわかります。国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査報告書」よれば、令和4年度の月額賃料の平均「7万8069円」です。これを当てはめてみると、初期費用は「40〜47万円程度」となります。
賃貸住宅の初期費用はいつ払うのか

賃貸契約は、次の流れで進みます。
(1)内覧
(2)入居申込
(3)入居審査
(4)賃貸借契約
(5)入居
初期費用は、審査が通ってから賃貸借契約を締結するまでの間に支払いを求められるのが一般的です。
支払い方法は、クレジットカードや現金払い、銀行振込などが想定されます。まだ関係性が構築できていない家主から信頼を得るためにも、遅滞なく支払うことが大切です。決められた期日までに支払わなければ、契約ができなくなってしまう可能性もあります。
賃貸住宅の初期費用を抑える方法!交渉や分割払いは可能?

賃貸住宅の初期費用は、新しい生活をスタートさせるうえで大きな負担にもなり得ます。しかし、初期費用は法律で金額が定められているわけではないため、方法によっては金額を抑えることも可能です。
すべての賃貸住宅に当てはまるわけではありませんが、知っていると役立つ初期費用を抑えるための方法を紹介します。
敷金・礼金なしの物件を選ぶ
今回挙げた賃貸住宅の初期費用は、必ずかかるものばかりではありません。とくに最近では「敷金」や「礼金」をなしとする物件が増えてきています。
敷金・礼金は、いずれも賃料の1ヵ月分が相場です。敷金・礼金なし、あるいはいずれかがない物件を選べば、初期費用は大きく下がります。
敷金・礼金を簡単にわかりやすく解説!いつ払う?返ってくるの?
フリーレント物件を選ぶ
「フリーレント物件」とは、家賃が無料になる期間が設けられている物件を指します。期間は1ヵ月から数ヵ月までさまざまですが、初期費用の1つである前払い賃料が不要になることから、初期費用の負担が軽減します。
フリーレント賃貸物件とは?メリット・デメリットや注意点、探し方を解説
交渉する
敷金・礼金の金額やフリーレントなどの条件は、家主と交渉することも可能です。
ただもちろん、交渉すれば必ず初期費用が下がるわけではありません。交渉をうまくいかせるコツは、自分の利益だけでなく家主の利益も考えることです。
初期費用の減額は家主にとってデメリットとなりますが、空室が続いていたとすれば「入居してもらえる」こと自体が家主のメリットとなるため、ある程度の交渉に応じてもらえる余地はあると考えられます。
また、家賃そのものを減額してもらうことでも、初期費用を下げる効果があります。とはいえ、家賃の減額は初期費用の減額以上に交渉が難しくなると予想されます。6月〜8月や11月、12月は賃貸住宅市場の閑散期となるため、この時期を狙って交渉してみるのも選択肢のひとつです。
分割払いをする
初期費用のクレジットカード払いにも対応している賃貸仲介会社もあります。クレジットカード払いなら、分割の支払いも可能です。実質的に初期費用の負担が下がるというわけではありませんが、何かと物入りの入居時期の支払い額が下がることで負担は軽減するものと考えられます。

フリーレント物件は初期費用の一部だけでなく、条件によっては数ヵ月分の家賃負担を軽減できます。ただし、短期間で解約した場合の違約金を定めている場合が多いです。転勤といった理由で短期間の契約になる可能性がある方は注意してください。
まとめ
賃貸住宅の初期費用の相場は、賃料の5〜6ヵ月分の相場です。決して少なくない金額ですが、初期費用のうち敷金や礼金がない物件や入居費からの減額交渉に応じてくれる家主も一定数います。また、クレジットカードで初期費用を支払える物件であれば、入居時期の負担を軽減できるでしょう。
物件や入居時期によって、初期費用の設定や交渉のしやすさは異なります。賃貸住宅の賃料や立地、広さ、間取りだけでなく、初期費用の金額や内訳にも着目してみてください。
監修者プロフィール

- 矢野 翔一
- 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。