住まいのコラム

UR賃貸住宅とは?ふつうの賃貸と家賃は違う?
メリット・デメリットを解説

最終更新日:

監修者
矢野 翔一
2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
UR賃貸住宅とはどのような物件?
UR賃貸住宅は、UR都市機構が管理する賃貸住宅のことです。礼金や仲介手数料、更新料などがかからず、住宅コストを抑えることができます。築年数が古い物件が多いものの、タワーマンションやリノベーション物件などもあります。

テレビCMが活発に放映され、近年知名度が上昇している、UR賃貸住宅。
家賃や初期費用を抑えられると聞き、引越し先として検討している人もいるのではないでしょうか。

本記事では、UR賃貸住宅のメリットやデメリット、家賃や初期費用などについて詳しく解説します。

UR賃貸住宅とは?

UR賃貸住宅とは、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理する賃貸住宅のことで、令和4年時点で全国に約1400団地・約70万戸あります。民間企業や個人が提供している賃貸物件と比べて、家賃や初期費用、更新料などが安い、または無料であるのが特徴です。

UR都市機構は1955年に設立された日本住宅公団が前身で、住環境の向上を目的に戦後の住宅供給や郊外のニュータウン開発などを行ってきた団体です。

UR賃貸の申し込み条件

UR賃貸住宅は一般の賃貸住宅とは異なり、以下すべての条件を満たしている場合に限り申し込むことができます。

(1)申込者の平均月収額が基準月収額以上である
(2)日本国籍、またはURが定める資格を持つ外国籍を持ち、継続的に自身が居住することを目的としている
(3)単身者、または同居している・しようとしている親族がいる
(4)同居世帯全員が入居開始可能日から1ヵ月以内に入居できて、円満な共同生活を営むことができる
(5)同居世帯全員が暴力団員などではない

出典:UR都市機構「賃貸住宅~多様な世代が安心して暮らし続けられる住まいづくり~」

出典:UR都市機構「お申込み資格」

UR賃貸住宅のメリット

UR賃貸住宅は、家賃や初期費用を抑えられるうえに、更新料もなく、保証人が不要な点がメリットです。

仲介手数料なし

UR賃貸住宅に住みたい場合はUR都市機構に申し込み、内覧と審査を経て賃貸借契約を締結します。
一般的な賃貸住宅では不動産会社が仲介し、貸主と契約します。そのため、不動産会社に仲介手数料を支払うのが通常です。

UR賃貸住宅は仲介会社が関与しないため、仲介手数料はかかりません。なお、UR賃貸住宅取扱店の不動産会社からUR賃貸住宅の紹介を受けた場合も、仲介手数料は不要です。

一般的な賃貸物件の仲介手数料について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

仲介手数料の相場は?計算方法や賃貸の初期費用を抑えるコツを解説

礼金なし

礼金は、賃貸住宅に入居する際にかかることが多い初期費用のひとつです。賃貸住宅の築年数や周辺の賃貸住宅の状況によっては無料の場合もありますが、通常は家賃1~2ヵ月分の礼金がかかります。

UR賃貸住宅は、礼金がかからないため、初期費用を抑えることができます。

一般的な賃貸物件の礼金について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

礼金とは?敷金との違いや金額相場、交渉のポイントを簡単に解説

更新料なし

更新料は、賃貸借契約の更新時に入居者が支払う料金です。更新料の有無や金額は賃貸住宅によって異なります。

国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、更新料がある賃貸住宅は45.8%で、金額は家賃1ヵ月分が77.2%と最も多い結果となりました。賃貸借契約は通常2年契約のため、2年に1回は家賃を2ヵ月支払う月がある計算です。

UR賃貸住宅は更新料が不要なため、更新料の支払いを避けるために引越しを検討する必要がありません。

出典:国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」

保証人不要

UR賃貸住宅は、保証人が不要です。賃貸借契約の際は、家賃の未払いによるリスクを抑えるために、保証人を求められる場合があります。保証人がいない場合は、家賃保証会社を利用することが一般的です。

UR賃貸住宅は保証人が不要なため、保証人をお願いする精神的負担や信用リスク、家賃保証会社に支払う費用負担などを負う必要がありません。

賃貸物件を契約する際は、敷金や礼金、家賃保証会社に支払う費用などの初期費用として家賃の5~6ヵ月分を支払います。UR賃貸住宅であれば一部の支払いが不要なので、初期費用を抑えられる点は大きなメリットでしょう。

UR賃貸住宅のデメリット

UR賃貸住宅は初期費用や更新料などの負担が少ない一方で、希望どおりの物件に入居できないことも多い点に注意が必要です。UR賃貸物件のデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

空室が少ない

UR賃貸住宅は日本全国に点在しているものの、人気があるために空室が少ない状況が続いています。また、そもそも一般的な賃貸住宅に比べ、戸数が多くありません。新しい物件が登場したタイミングであれば、入居できる可能性が高いでしょう。しかし、希望する立地にUR賃貸住宅が建てられるとは限らないため、空室が出るのを待つことになる人がほとんどです。

収入要件がある

前述したとおり、UR賃貸住宅は、5つの条件をすべて満たした場合にのみ申し込むことができます。そのなかでも注目すべきは収入要件です。

申込者の平均月収額が以下を上回ることが条件です。

・世帯でお申し込みの場合
申込先の家賃額 平均月収額
82500円未満 家賃額の4倍
82500円以上200000円未満 330000円
200000円以上 400000円
・単身者でお申し込みの場合
申込先の家賃額 平均月収額
62500円未満 家賃額の4倍
62500円以上200000円未満 250000円
200000円以上 400000円

出典:UR都市機構「お申込み資格」をもとに作成

平均月収額が基準をクリアできない場合でも、一時払い制度や貯蓄基準制度、収入基準の特例などを受けられる可能性があります。申し込み時に問い合わせましょう。

古い物件が多い

UR賃貸住宅は築年数が30年以上の物件が多いため、物件によっては築年数が古い、設備が古い、駅から遠い可能性があります。ただし、築年数が新しいタワーマンションや、築年数が古くても内装が現代風に刷新されたリノベーション物件などもあります。

特に、温水洗浄便座や洗面化粧台、追い焚き機能付き浴槽など、現代の設備を取り入れた物件は魅力的でしょう。

条件が合わない場合は他の物件を探さなくてはなりません。自身が条件を満たしているのか確認するだけでなく、自身が希望する条件(劣化状況、最新設備の有無、アクセスなど)を満たしているのかを確認してから申し込みましょう。

UR賃貸住宅と一般的な賃貸住宅の家賃・費用を比較

UR賃貸住宅は、一般的な賃貸住宅よりも住宅費用を抑えることができます。

仮に、家賃が同じ80000円の一般賃貸住宅とUR賃貸住宅に5年間住んだ場合、トータルの費用にはどれほど差が出るのかを、下の表で見ていきましょう。

一般的な民間の賃貸住宅 UR賃貸住宅
家賃 8万円×60ヵ月=480万円 8万円×60ヵ月=480万円
敷金 8万円×2ヵ月=16万円 8万円×2ヵ月=16万円
礼金 8万円×2ヵ月=16万円 0円
仲介手数料 8万円×1ヵ月=8万円 0円
更新料 8万円×2回=16万円 0円
5年間合計 536万円 496万円
差額 40万円

このように、5年間で合計40万円も費用を抑えることができます。更新料はかからないため、長く住むほど金額差が開きます。

UR賃貸住宅のよくある疑問

いわゆる公営住宅?

公営住宅とUR賃貸住宅は厳密には異なる住宅です。 公営住宅は国と地方公共団体が運営する住宅で、UR賃貸住宅は都市再生機構が運営する住宅です。運営組織は異なりますが、いずれも公社が提供する「公的賃貸住宅」という点は変わりません。

公営住宅は、住宅確保に困窮している低所得者に対し、地方公共団体が低家賃で貸し出す物件です。一方、UR賃貸住宅は家賃が規模や立地などで異なり、住宅確保に困窮していることは条件に含まれていません。

借りられるのは抽選に当選した人だけ?

UR賃貸住宅は申し込みの先着順に契約できます。ただし、新築物件を含む一部の物件は抽選式です。

駅から遠い物件ばかり?

UR賃貸住宅は立地が悪い場所に建てられるイメージがあるかもしれませんが、駅から近い物件もあります。

UR賃貸住宅の物件検索ページは、沿線や駅、エリア、路線図、通勤・通学時間など、さまざまな条件で希望の物件を検索できます。条件が合う物件がスムーズに見つかるでしょう。

まとめ

UR賃貸住宅は住宅コストを抑えたい方に適しています。ただし、収入要件を含む複数の条件をクリアした人しか申し込めません。今回ご紹介したUR賃貸住宅のメリットやデメリットなどを踏まえ、自分に向いているかどうか考えてみてください。

監修者プロフィール

監修者
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

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