住まいのコラム
ハイツの意味とは?
アパート・コーポとの違いや物件選びのコツを解説
最終更新日:
- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士/宅地建物取引士/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)/相続診断士/J-REC公認不動産コンサルタント
- ハイツとは?アパートやコーポとの違いはなに?
- ハイツとは、集合住宅の名称に使われる言葉のひとつです。アパートやコーポとの明確な違いはなく、オーナーの好みに応じて「◯◯ハイツ」「◯◯アパート」といった名称がつけられます。なお、「ハイツ」や「アパート」などをつけない物件名にするのも自由です。
賃貸物件情報で目にすることの多い「ハイツ」という言葉は、集合住宅を示す呼び方のひとつです。ハイツ、コーポ、アパートなど、物件名の後につけることで集合住宅であることを示す言葉はたくさんありますが、明確な定義はありません。
この記事では、集合住宅のさまざまな呼び方や、ハイツと呼ばれる物件のメリット・デメリットのほか、物件探しのコツを紹介します。
目次
ハイツとは集合住宅の名称のひとつ
ハイツという言葉は、英語のheights(高台)が由来といわれています。
ハイツはそもそも「高台にある集合住宅」という意味ですが、実際に「◯◯ハイツ」と名付けられた物件がすべて高台にあるわけではありません。どのような場所に立っていても「◯◯ハイツ」と名付けられますし、高台にはない「◯◯ハイツ」という名称の物件も多くあります。
ハイツという名称からは、比較的こぢんまりとしたおしゃれな集合住宅をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、ハイツという名前がついていたからといって、必ずしもイメージどおりの物件とは限りません。名称からのイメージにとらわれず、実際に物件を見に行って確かめることが大切です。
ハイツとコーポ・アパートの違い
ハイツとコーポやアパートとの違いについて、明確な定義はありません。物件につける際も、オーナーの任意で好きな言葉を使えます。
ハイツ、コーポ、アパートは、どれも比較的小規模な集合住宅につけられることが多い名称ですが、高層マンションにハイツとつけてはいけないという決まりはありません。また、ハイツやコーポ、アパートといったわかりやすい言葉を使わない物件名にするのもオーナーの自由です。
とはいえ、「スズキハイツ」なら物件名であることがわかりやすいのに対し「スズキ」だけでは、物件名か個人名かわかりません。ハイツやコーポ、アパートといった言葉をつけることで、物件名であることを示しやすくなる効果があります。
「○○ハイツ」「○○コーポ」「○○アパート」など外国由来の名称が使用されるのはなぜでしょう。かつて、日本の集合住宅には「○○荘」など和風の名称が付けられることが多かったのですが、おしゃれ・上品・華やかなイメージを持たせるために外国由来の名称が使用されるようになりました。
ハイツ以外にアパートやマンションでよくある名称
アパートやマンションなどの集合住宅には、さまざまな名称がつけられます。ここでは、物件情報で見かけることの多い、集合住宅の名称をについて見ていきましょう。
なお、アパートとマンションにも、明確な定義の違いはありません。しかし、多くの場合、アパートは木造や軽量鉄骨造で低層の集合住宅、マンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨造などで3階建て以上の集合住宅を指す場合が多くなっています。不動産会社の中には、アパートかマンションかの区別において、独自の区分を定めて物件紹介をしているところもあります。
コーポ(Cooperative house)
コーポの語源であるcooperative houseは、英語で共同住宅を意味します。共同住宅は、複数の住宅が1つの建物の中で独立している物件のことです。集合住宅とほぼ同じ意味ですが、集合住宅にはテラスハウス(隣家と共用の壁で連続する戸建て住宅)なども含まれます。
ただし、コーポ=共同住宅はあくまでも語源です。オーナーの判断によって、テラスハウスに「◯◯コーポ」とつけている例もあります。
メゾン(maison)
メゾンは、フランス語で家や住宅を表す言葉です。集合住宅に限らず家全般を示す言葉ですが、日本では集合住宅の名称に使われることが多くあります。
ヴィラ(villa)
ヴィラは英語で、邸宅や都市から離れた場所の別荘、郊外の広い住宅といった意味です。また、イタリア語やフランス語でも別荘を表す言葉として使われています。
ハイム(heim)
ハイムは、ドイツ語で家という意味です。物理的な建物としての住宅だけでなく「家庭」といった意味を含みます。
シャトー(château)
シャトーはフランス語で、大邸宅や城、館といった意味を持つ言葉です。かなり立派な邸宅というイメージですが、ハイツと同様、どのような物件にもつけられます。
カーサ(casa)
カーサは、イタリア語やフランス語、スペイン語などで家を表す言葉です。
レジデンス(residence)
レジデンスは、英語で邸宅や住宅を意味する言葉です。豪華な住宅に対してレジデンスを使う傾向があります。日本でも高級マンションに対して使われることが多くありますが、低層住宅にレジデンスという名前つけるケースもあります。
コート(court)
コートは、建物に四方を囲まれた中庭を指す英語です。そこから、中庭を有する宮殿、邸宅といった意味も持つようになりました。ただし、日本で物件名に「◯◯コート」とついているからといって、中庭があるとは限りません。
パレス(palace)
パレスは、英語で宮殿や城という意味で、マンションにつけられることが多い傾向です。
荘・庵
日本の集合住宅では、荘や庵といった名称を使うこともあります。しかし、日本風の名称は借り手がつきにくくなったことから、カタカナのハイツやコーポなどが使われることが多くなりました。
近年ではレトロブームなどの動きもあり、リノベーション住宅をあえて「◯◯荘」や「◯◯庵」といった名称にするケースも見られます。
ハイツのメリット・デメリット
ハイツという名前の物件に構造上の明確な定義はありませんが、一般的に「◯◯ハイツ」と呼ばれる集合住宅は、低層の物件を指す場合が多い傾向です。
そこで、ここではハイツを「低層のアパート」または「低層マンション」として、メリットとデメリットを解説します。なお、木造や軽量鉄骨造の集合住宅をアパート、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の集合住宅をマンションとします。
低層アパートのメリット・デメリット
木造や軽量鉄骨造のアパートは、比較的家賃が安い傾向があります。家賃を抑えたい場合や、駅からの距離や部屋の広さと家賃のバランスを重視する場合におすすめです。また、木造や軽量鉄骨造は通気性が良いことから、カビや結露が発生しにくいというメリットもあります。
一方で、構造として気密性が低いことによる冷暖房効率の悪さや、騒音トラブルといった問題もあり、耐震性においても鉄筋コンクリート造や鉄骨造には劣ります。
低層マンションのメリット・デメリット
ハイツという名称の物件が、鉄筋コンクリートや鉄骨造の場合は、一般的にマンションに該当します。マンションは、耐震性や耐火性、遮音性に優れていることから、安全性の高さや比較的静かに暮らせることがメリットです。
一方で、気密性が高いために、カビや結露は発生しやすくなります。特に、湿気の溜まる1階は影響を受けやすい傾向です。また、家賃や管理費もアパートよりも高めの傾向となります。
とはいえ、家賃や管理費の金額は、ハイツの物件の構造がアパートかマンションかだけで決まるものではありません。駅からの距離、広さ、間取り、設備、築年数などさまざまな要素が影響します。
たとえば、ある程度築年数が古くてもよければ、「アパートよりも耐震性の高いマンションで、築年数が古めの物件」を選ぶことも可能です。何を重視して物件を選びたいかを軸に考えましょう。
ハイツと呼ばれることの多い低層の集合住宅を、アパート構造とマンション構造でとらえてみると、それぞれのメリット・デメリットが見えてきます。通気性や防音性など、構造上の特徴から決まる物件の機能と、物件に求める条件とを照らし合わせて検討してみましょう。
物件選びではハイツなどの名称より条件をチェック
物件を探すときは「◯◯ハイツ」といった名称を参考にするのではなく、具合的な条件を確認することが大切です。ハイツには低層の集合住宅が多いものの、賃貸住宅の呼び方に決まりはありません。オーナーが自由に名付けているため、同じハイツという名前がついていても、設備や構造はさまざまです。
まずは、住まいに求める条件を書き出して、優先順位をつけましょう。そのうえで、予算とのバランスを考えるのがおすすめです。
ハイツの構造から物件探しをする方法
名称にとらわれず、建物の構造から物件を検討するには、構造の特徴を理解することが大切です。ここではハイツの構造について、それぞれどのような人におすすめなのか見ていきましょう。
アパート構造のハイツがおすすめな人
ハイツという名称の物件がアパート(木造や軽量鉄骨造)の場合は、比較的安価な家賃で借りられる可能性が高くなります。家賃は毎月かかる固定費の中でも、大きな割合を占めるもの。できるだけ固定費を抑えて趣味やファッションなどにお金を使いたい人や、駅からの距離はある程度近くても家賃はなるべく抑えたいという人に適しています。
また、アパートは部屋の間取りがシンプルな造りになっている傾向があります。自分でインテリアを工夫してイメージに合った暮らしを送りたい人や、室内の雰囲気にはそれほどこだわらない人にもおすすめです。
なお、アパートはマンションと比較すると近隣住民の生活音や声が聞こえやすい構造です。お互い様と思える人や、あいさつなどをして一定のコミュニケーションをとりたいという人にも向いているかもしれません。騒音が心配なときは、人が多いと思われる時間に内見にいって、音の聞こえ方を確かめてみることをおすすめします。
マンション構造のハイツがおすすめな人
ハイツと名のついた物件がマンション(鉄筋コンクリートや鉄骨造)の場合は、設備や騒音対策を重視する人におすすめです。防音性に優れているので、左右や上下の音がアパートほど気にならない傾向があります。防犯面でも、オートロックや宅配ボックス、モニター付きインターフォンなどの設備がそろっている物件が多くなります。
ただし、具体的な設備や騒音の状況は、物件や住人によって異なるもの。「鉄筋コンクリート造だから静かなはず」「設備が充実しているはず」などと思い込まずに、現地でしっかりと現状を確認することをおすすめします。
なお、マンションはアパートよりも家賃や管理費が高くなりがちです。家賃や管理費が高いと、その分、賃貸契約の際の初期費用もかさむため、予算と照らし合わせて検討しましょう。
アパート構造の物件にマッチするのは、何といっても安い家賃に魅力を感じる人です。マンション構造の物件にマッチするのは、設備や防音性を重視する人でしょう。防犯面で特に女性に人気の設備である、オートロックやモニター付きのインターフォンなどは、マンション構造の場合に設置率が高い傾向です。
まとめ
ハイツという名前の物件は数多くあります。しかし、物件の構造やデザイン、設備はそれぞれ異なります。ハイツという物件名だけで判断することはできないため、詳しい物件情報と内見をしっかり行いましょう。
住みやすい物件を見つけるためには、名前よりも構造などの情報を確認し、さらに自分の目や耳で確認することが大切です。
監修者プロフィール
三輪 歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント。
約20年間の鑑定・宅地建物取引業の経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として活動を行う。