住まいのコラム
メゾネットタイプとはどんな物件を指す?
メリット・デメリット、注意点を解説
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- メゾネットタイプとは?
- メゾネットタイプは、集合住宅の部屋が複数階層に分かれている間取りの物件です。上下階の部屋が階段でつながれており、一戸建てのような使い方ができます。上階にある物置と行き来できるロフトや複数の一戸建てが1つの建物になっているテラスハウスとは異なる構造として区別されています。
物件情報の中で「メゾネットタイプ」という表記を見たことがある人もいるでしょう。メゾネットタイプはマンション・アパートに採用される間取りの1つで、集合住宅と一戸建てのよいところを兼ね備えているといわれています。
メゾネットタイプとは具体的にどのような間取りを指すのでしょうか。今回はメゾネットタイプの解説とメリット・デメリット、入居時の注意点をご紹介します。
目次
メゾネットタイプとは?
メゾネットタイプとは、集合住宅の部屋が複数階層に分かれている間取りをいいます。マンションやアパートの上下階の部屋2つをつなぐように階段が設けられており、一戸建てのように上下階を移動できます。
メゾネットタイプは、2階建ての建物だけに採用されるわけではありません。高層マンションのメゾネットタイプは、1・2階で一組、3・4階で一組といったように、2階ワンセットの部屋がいくつも積み重なるように設計されています。
また、各階層の広さが同程度の物件だけでなく、1階と2階の半分で一物件、2階の残り半分と3階で一物件といったような、階によって広さが異なる物件もあります。
ロフトとの違い
集合住宅の部屋が上下に分かれている構造と聞くと、ロフトが思い浮かぶかもしれません。ロフトもメゾネットと同様に上下階を階段やはしごで行き来できる構造ですが、ロフトの2階部分は建築基準法における「居室」の条件を満たしておらず、厳密には部屋として認められていません。
法律上の居室は「住宅等において継続的に使用する室であること(建築基準法第2条4項)」「採光部が床面積の7分の1以上(建築基準法施行令第19条3項)」「天井の高さが2.1m以上あること(建築基準法施行令第21条1項)」と定義されています。ロフトは上階部分の天井が低く広い採光部もないため、居室とは認められずメゾネットタイプにはなりません。
テラスハウスとの違い
複数階層構造の集合住宅の1つにテラスハウスがありますが、こちらもメゾネットタイプとは定義が異なります。
テラスハウスとメゾネットタイプの大きな違いは、建物の構造にあります。テラスハウスはマンションやアパートとは異なり、各住宅に個別の玄関が設けられています。
マンションやアパートのように「集合住宅の内部が一戸建て風になっている」というよりも「同じサイズの一戸建てが密着して1つの建物になっている」と考えるとイメージしやすいでしょう。
メゾネットタイプのメリット
複数のフロアを階段でつなぐメゾネットタイプは、"マンションと一戸建てのいいとこ取り"といえる間取りです。具体的にメゾネットタイプからはどのようなメリットを感じられるのでしょうか。
戸建て感覚で居住できる
メゾネットタイプは、一戸建てのように複数の空間の独立性が高い間取りです。一戸建てのように居住空間が上下に分けられるため、部屋の用途の明確化やプライバシー保護に力を発揮します。
たとえば、1階をリビング、2階を寝室にすることで、日中の生活時間と夜の就寝時間をはっきりと分けることができます。夫婦やルームシェアのように複数人で住むならば、1階と2階それぞれの居室を作れば、プライバシーを守りながら広い空間での生活を楽しめるでしょう。
上記の目的を達成するだけならば一戸建てでも可能ですが、メゾネットタイプは一戸建てに比べて広すぎない点もメリットになります。「5~6部屋がある一戸建ては持て余すけれど、独立した空間を保てる物件に住みたい」という人には、まさにおすすめのタイプといえるでしょう。
採光・通風に優れる
メゾネットタイプは吹き抜けのような間取りが多く、通風性に優れています。上下階の窓を開け放つことで、自然の風が抜ける快適さを楽しめるでしょう。
メゾネットタイプの中には、窓が広く採光に優れた物件が多くあります。壁一面から入り込む自然光は、明るく満たされた空間を演出してくれるでしょう。また、バルコニーがある2階は明るいインテリアで、1階は暗めのインテリアでまとめるなど、上下階で異なるスタイルの部屋を楽しむこともできます。
収納が多い
1つの物件に2フロア分の面積があるメゾネットタイプは、その広さに比例して収納も豊富です。各部屋に設けられた収納だけでなく、上下階を結ぶ階段下の空間も収納エリアとして活用できます。
置き場所に困る季節家電や旅行用のかばんなど、使用時期が限られるアイテムを収納できる場所があるのは大きなメリットです。
マンションタイプの場合、駐車場から各部屋までの移動距離が長くなりがちです。メゾネットタイプは各戸の玄関前、近くに駐車場が設けられているケースが多く、各部屋まですぐにアクセスできる点も魅力です。
メゾネットタイプのデメリット
便利に思えるメゾネットタイプですが、住まいに求める条件によっては住みにくさを感じるおそれもあります。デメリットも把握したうえで入居を検討するとよいでしょう。
バリアフリーではない
メゾネットタイプのフロア間移動は階段で行うことから、バリアフリー性能は決して高いとはいえません。メゾネットタイプの賃貸物件に後からホームエレベーターを設置するのは難しく、物件のバリアフリー化はできないと考えてよいでしょう。
また、上下階の移動にともない生活動線が長くなりがちなのもメゾネットタイプの特徴です。スムーズな歩行が困難な人の場合、生活に必要な空間・設備をワンフロアにまとめるなどの工夫をしなければ、不便に感じることもあるでしょう。
冷暖房効率が落ちることも
メゾネットタイプは空間が縦に伸びているため、上下階で冷暖房の効果に差が出やすくなります。これは、冷たい空気は下降し、暖かい空気は上昇する性質によるもの。夏場は上階が暑く、冬場は下階が寒くなりがちです。
冷暖房の効果を得るためにエアコンをかけ続けた結果、電気代が上がってしまうことも考えられます。内装に断熱性の高い素材が使われているなど、断熱性能への配慮は入居前に確認しておきましょう。
居住スペースが狭くなる
メゾネットタイプの上下階は階段でつながっています。階段は1階・2階の両方にまたがる設備であるため、どちらの階にも階段のためのスペースを確保しなければならず、その分居住空間が狭くなります。
階段の設置位置によっては階段周辺に使い道のない空きスペースが増えてしまうかもしれません。入居後に「思ったよりも狭い」と後悔しないよう、内見の段階で階段周辺の空間を確認し、使い道を考えておくのがおすすめです。
メゾネットタイプでは、限られたスペースに階段を設けるため、角度が急、段差が大きくなりがちです。転んだ、落ちたなどのケガが発生する可能性があるため、階段の形状や段差などを内見時にしっかり確認しましょう。
メゾネットタイプの賃貸住宅がおすすめの人
マンション・アパートや一戸建てにはない個性を持つメゾネットタイプは、どのような人にぴったりの物件なのでしょうか。メゾネットタイプに迷ったときの参考にしてください。
空間にメリハリをつけたい人
メゾネットタイプは上下階で空間の区切りをつけやすいため、各部屋に役割を持たせたメリハリのある使い方ができます。1階はリビング・ダイニングなどの生活スペース、2階は寝室や趣味部屋などのプライベートスペースといった区分けが可能です。
在宅ワークが多いなら、生活空間と仕事空間という分け方もよいでしょう。役割に合わせてインテリアを分け、上下階の行き来で気分を切り替えやすくするのもおすすめです。
プライベート空間を分けたい恋人・友人との同居
恋人や友人と同居するなら、居住空間を分ける使い方がおすすめです。上下階でプライベートエリアを分割できれば、一人になりたい時間も心地よく過ごせるでしょう。特に同居人と生活時間帯が違う場合には、お互いの生活に干渉しにくくなるメゾネットタイプが便利です。
なお、メゾネットタイプは浴室やトイレ、キッチンなどの設備は1つしかないことが多いため、共用部分の使い方のルールは話し合って決める必要があります。
子どもが小さなファミリー世帯
メゾネットタイプは、小さな子どもがいるファミリー世帯にもおすすめの間取りです。集合住宅では子どもの足音が心配という家庭が少なくありません。メゾネットタイプなら、子どもが過ごすエリアを上階にすることで、足音の影響を1階に限定できるようになります。
もちろんどれだけ騒音を出してもいいというわけではありませんが、子どもが走り回る音の影響を最小限に抑えられるので、お子さんが元気なご家族にこそメゾネットタイプがおすすめできます。
メゾネットタイプのアパート・マンションを選ぶ時のチェックポイント
メゾネットタイプを検討する際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。一戸建てやマンション・アパートを選ぶ際のポイントと比較しながらご紹介します。
階段の位置や傾斜
上下階を結ぶ階段は、内見時にチェックしておきたいポイントの1つです。同じく建物内に階段がある一戸建てと同様に、階段の横幅や歩幅、傾斜の角度や手すりの有無など、毎日頻繁に上り下りをするという観点でよく見ておきましょう。
急な階段は居住エリアが広く確保できる一方、毎日の上り下りに疲れてしまうおそれがあります。また、同居家族に小さな子どもや年配の方がいる場合は、階段から落ちる事故の原因になりやすいため、上り下りしやすい階段を前提に選ぶのがよいでしょう。
また、階段の位置も入居前にチェックしておくべきポイントです。階段が中途半端な位置にあると、居住空間も半端になってしまい使い勝手が悪いと感じてしまうかもしれません。家具の置き場所やスペースの活用方法をイメージし、階段の位置が生活の邪魔をしないか確認しておきましょう。
間取り
メゾネットタイプは建物ごとの設計が個性豊かです。間取りも物件ごとに異なるので、生活動線の観点から間取りの使いやすさをチェックしておきましょう。
プライバシーを大切にした上下階の使い分けを考えているなら、生活設備のまとまりがあることが重要です。玄関やバスルーム、トイレ、リビングといった設備や空間が1フロアにまとまっていると、プライベート空間にほかの人が入る動線がなくなります。
また、住人の生活時間帯が異なる場合には、水回りの位置も大変重要。水回りと寝室エリアは極力離れているのが理想です。水を使う音は案外響くので、寝室までの距離が遠いほど、睡眠や休息の時間を邪魔せずにすむでしょう。
音漏れ
集合住宅である以上、周囲の世帯に迷惑をかけない配慮は必要です。メゾネットタイプは単階のマンション・アパートに比べると騒音問題が置きにくい構造になっていますが、ほかの物件と同様に音が響きやすい構造の建物はあります。
建物の防音性能は、以下の順番で高くなります。
RC造=SRC造>重量鉄骨造>軽量鉄骨造>木造
防音性は使用されている建材にも左右されますが、一般的に木造は音が響きやすく、RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造は音が響きにくいとされています。防音性を優先するなら、RC造・SRC造の物件を選ぶのがおすすめです。
なお、RC造やSRC造は高い防音性がありますが、どんな音や振動もなくすわけではありません。子どもが走り回る音や大人のドスドスとした足音は下階に響くおそれがあります。音を出さない・響かせない配慮は必要です。
リビングなど子どもが遊ぶスペースがメゾネット部分の上層階にあると、足音は階下で響くだけで、ほかの住民へ迷惑をかけにくくなります。また、クッション性の高いカーペットやスリッパは、足音を軽減する効果に期待できます。
まとめ
メゾネットタイプは、上下階が階段でつながっている構造の物件です。2フロア分の広さがあるため、異なる用途の空間を作るといった間取りを楽しむことができます。
メゾネットタイプには、収納空間が多く騒音トラブルを招きにくいといったメリットがあります。一般的なマンションやアパート、一戸建てとは違う選択肢を考えている方は、メゾネットタイプへの入居も検討してみましょう。
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。