住まいのコラム
アパートとマンションの違いは?
建物の構造や物件選びのコツを解説
最終更新日:

- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士/宅地建物取引士/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)/相続診断士/J-REC公認不動産コンサルタント
- アパートとマンションは何が違う?
- アパートとマンションは、建築基準法や宅地建物取引業法では、どちらも「共同住宅」として扱われます。アパートとマンションを分ける定義が法的に決まっているわけではないため、実は明確な違いはありません。一般的には、不動産会社が建物の構造や階層などの情報をもとに、アパートかマンションかを区分しています。
物件情報にはアパートとマンションの区分があり、「アパートのほうがマンションより家賃が安い」といったイメージがあるかもしれませんが、具体的は何が違うのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
この記事ではアパートとマンションの違いや、それぞれのメリット・デメリットのほか、物件選びのポイントを解説します。
目次
アパートとマンションに明確な違いはない

アパートとマンションを区分する定義が法的に決まっているわけではないため、実はアパートとマンションには明確な違いがありません。建築基準法や宅地建物取引業法では、どちらも「共同住宅」として扱われます。
物件情報にあるアパートかマンションかの区分は、一般的に不動産会社やハウスメーカー、不動産情報サイトなどが社内規定に沿って決めています。アパートとマンションを区分する要素は、建物の構造や階層、建築材料などです。
アパートやマンション以外にも、集合住宅の建物名には「コーポ」「ハイツ」「メゾン」「ヴィラ」「レジデンス」などの呼称がつけられているケースがあります。こうした建物名にある呼称にも定義はなく、建物のオーナーが自由に名付けています。
アパートとマンションを分ける要素のひとつは構造
不動産会社や不動産情報サイトなどがアパートとマンションを区分する要素として、建物の構造があります。アパートとマンションを区分する構造の違いは下記のとおりです。
<アパートとマンションの構造>
・アパート:木造、軽量鉄骨造
・マンション:鉄筋コンクリート造、鉄骨造、重量鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造など堅固な造りの建物
建物の構造のほかにも、2階建てをアパート、3階建て以上をマンションとする基準を設けている場合もあります。たとえば、不動産会社によっては、木造の集合住宅でも、3階建て以上で一定の建築性能の条件を満たせば、マンションに区分することもあります。
このように、アパートかマンションかの違いは、不動産会社や不動産情報サイトが独自の条件で区分しているのです。アパートかマンションかの区分にとらわれず、建物の構造に注目してみると、実際はどのような物件なのかわかりやすいでしょう。
アパート(木造・軽量鉄骨造)のメリット

木造・軽量鉄骨造のアパートに住むメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。物件選びの参考に確認しておきましょう。
家賃が安い
アパートに採用される構造の木造や軽量鉄骨造は、鉄筋コンクリート造などと比べて建築費が安いこともあり、マンションよりも家賃が安くなる傾向があります。家賃が安ければ、賃貸借契約時に負担する初期費用や、更新時の費用も抑えられます。
また、家賃と併せて支払う共益費や駐車場代などの費用も、アパートのほうがマンションよりも比較的安い傾向です。
通気性が良くカビや結露に強い
特に木造建築のアパートは、通気性に優れていて湿気がこもりにくいというメリットがあります。そのため、カビや結露が発生しにくくなります。
木材には、部屋の湿度が高ければ余分な水分を吸い、乾燥していれば水分を吐き出す調湿機能があるため、部屋を湿気や乾燥から守ってくれるのです。
ご近所付き合いが生まれやすい
低層で建物内の戸数が少ないアパートの場合、マンションよりもご近所付き合いが生まれやすい傾向があります。顔の見えるご近所付き合いをしたい場合には、アパートは向いているといえるでしょう。
同じアパート内の住人と日頃からコミュニケーションをとっておけば、災害などの緊急時なども心強いです。
アパート住まい経験者へのアンケートでは、アパートのメリットとして以下のような回答が見られました。
※対象者:全国のアパート住まい経験のある20代~60代男女335人 調査時期:2024年1月
アンケートで聞いた アパート住まいで良かったことは?
- 回答者の声
- マンションと比べると家賃・管理費が安く、生活費の防衛に非常に助かっている。30代/男性
- 一軒家や高級なマンションよりもアパートのほうが賃料や共益費や管理費が安いのでその分生活に余裕ができる50代/男性
- 駐車場込みでも高くない。定期的に色々な傷んだ所を補修してくれている40代/男性
- 隣人が趣味の合う人だったため、よく部屋を行き来して趣味を楽しんでいる。20代/男性
- 大家さんが同じ敷地に住んでいるので日中も必ず在宅で、不審者対策が自然とできている。50代/女性
アパート(木造・軽量鉄骨造)のデメリット
木造・軽量鉄骨造のアパートには、メリットだけでなくデメリットもあります。構造上の特徴を把握しておきましょう。
気密性が低く冷暖房がききにくい
木造または軽量鉄骨造のアパートは、構造上どうしても隙間が生まれてしまうため、コンクリート造のマンションと比べて気密性が低いというデメリットがあります。壁や床がコンクリート造より薄いケースも多く、断熱性や冷暖房の効率が低くなってしまう傾向があるのです。
耐震性が低い
特に木造のアパートは、ほかの造りと比べて耐震性が低い傾向があり、地震の揺れも伝わりやすいので、地震の際に揺れが大きくなりがちです。家の中の物が落下したり、家具が倒れたりしないように固定するなど、地震対策が必要となります。
遮音性が低く騒音トラブルに注意
木造や軽量鉄骨造は、コンクリート造と比較すると遮音性が低いため、隣や上下階の部屋の音を完全に防ぐことは難しく、自身の生活音が近くの部屋に聞こえてしまう可能性も高くなります。騒音トラブルにならないためにも、生活音や来客時の話し声、音楽の音量などには注意しなければなりません。
防犯の面で不安がある
築年数が古いアパートは、防犯カメラやオートロック設備のない物件も多いため、防犯面の不安があります。特に、女性の一人暮らしは注意が必要です。

アパートのメリット・デメリットを捉えた上で、自分の譲れない条件と照らし合わせて、物件を検討してみることが大切です。とはいえ、物件によってはデメリットをカバーしたアパートもあります。気に入った物件があれば、デメリットが許容できるか内見でチェックしてみるのもよいでしょう。
マンション(鉄筋コンクリート造など)のメリット

鉄筋コンクリート造などのマンションに住むメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。物件選びの参考に確認しておきましょう。
耐震性・耐火性に優れている
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは、耐震性に優れています。基礎と建物のあいだに免震装置を設置しているマンションもあり、揺れが伝わりにくい構造です。
また、壁や床がコンクリートでできているため、木造と比べて耐火性にも優れています。
遮音性が高く騒音リスクが少ない
マンションは構造上、木造や軽量鉄骨造よりも遮音性が高い点もメリットです。隣や上下階の部屋同士で生活音が漏れにくいため、マンション内の騒音トラブルのリスクも大きく抑えられます。
セキュリティ面の安心感がある
マンションは防犯カメラやオートロックなど、セキュリティ設備が充実している物件が比較的多く、安心感があります。管理人が常駐しているマンションなら、より防犯性が高くなります。
専用のゴミ置き場や宅配ボックスなどの設備がある
マンションは住人専用のゴミ置き場や宅配ボックスなど、共用部分の設備がアパートと比べて充実している傾向があります。戸数の多いマンションは、アパートよりも管理費の総額も大きくなるため、設備のグレードも高くなりやすいのです。
マンション住まい経験者へのアンケートでは、以下のような声があがっています。
※対象者:全国のマンション住まい経験のある20代~60代男女380人 調査時期:2024年1月
アンケートで聞いた マンション住まいで良かったことは?
- 回答者の声
- 遮音性が高いお陰で周りの生活音が気にならなくなり、周りに気を使うこともない30代/男性
- ロビーやエレベーターホール前といった共用部の清掃が行われてきれいな状態に保たれている20代/男性
- 夜にゴミを出したい時など、専用のゴミ置き場があると気兼ねせずに出すことができる30代/男性
- 小さい子どもと2人になることが多いが、オートロックもあるマンションなので、あまり不安にならない。30代/女性
- マンションの管理会社が定期的に各部屋の消防設備の点検や排水溝の清掃などしてくれる。40代/女性
マンション(鉄筋コンクリート造など)のデメリット
鉄筋コンクリート造などのマンションには、メリットだけでなくデメリットもあります。構造上の特徴を把握しておきましょう。
家賃が高い
鉄筋コンクリート造などのマンションの構造は、アパートと比べて建築コストが高くなることもあり、家賃も高めの設定になりがちです。物件探しの条件として家賃の安さを重視したい場合は、マンションであることにこだわらないほうがよいかもしれません。
気密性が高くカビや結露が発生しやすい
コンクリート造の壁や床は気密性が高く、冷暖房の効率が良い一方で、湿気がこもりやすい性質があります。特に1階は湿気が溜まりやすいので、カビや結露に注意が必要です。
設備維持などの管理コストがかさむため管理費が高い
管理人が常駐している、エレベーターが設置されている、オートロックや宅配ボックスがあるなど、共用部分の設備が充実しているマンションの場合は、家賃のほかに月々支払いが発生する管理費も高くなる傾向があります。
退去時の原状回復の費用が高くなる
設備や内装のグレードが高いマンションの場合は、退去時に支払う原状回復の費用も高くなる傾向があります。
たとえば、物を落とすなどしてフローリングに傷をつけてしまった場合、無垢材などの単価の高い床材と交換するとなると、高額な修繕費用を請求される可能性があります。

マンションはアパートに比べて、家賃や管理費など月々の支払いが高くなる傾向があります。その分、耐震性・耐火性・遮音性に優れ、セキュリティや共用設備が充実していることが多いので、それらの条件にどのくらいの費用をかけられるのかという観点で検討してみるとよいでしょう。
アパート・マンションの特徴と物件選びのポイント

アパートとマンションのどちらの物件を選ぶか迷ったときは、それぞれの特徴から、条件やライフスタイルに合うかを考えて検討しましょう。ここでは、アパートとマンションの特徴を整理します。
アパートは家賃を抑えたい人におすすめ
アパートとマンションを比較して、立地や築年数、部屋の広さなどの条件がほぼ同じなら、構造上、アパートのほうが家賃は安くなる傾向があります。引越しの初期費用を抑えたい、在宅時間が短いため最低限の設備でよいといった場合は、アパートが向いているでしょう。
<アパートがおすすめの人の特徴>
・家賃の安さを優先したい
・オートロックなど共用設備の充実度は妥協できる
・家の中のカビや結露を避けたい
・顔の見えるご近所付き合いがしたい
マンションは充実した設備を求める人におすすめ
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションなら防音性が高いため、生活音を気にせずに快適に暮らせます。
また、マンションは共用部分や室内の設備のグレードが高い物件もあり、浴室乾燥機やディスポーザー(シンクの生ゴミ粉砕機)など、人気の設備の条件を追加して物件を探すことも可能です。
<マンションがおすすめの人の特徴>
・耐震性や耐火性、防犯性などの安全性を重視する
・隣や上下階の生活音に悩まされたくない
・設備が充実した物件に住みたい

アパートかマンションのどちらを選ぶべきか迷うときは、どの条件を重視にするのか、物件選びの価値観を決めておくことが重要です。充実した設備を重視するならマンション、家賃を抑えて貯金をしたい、趣味にお金をかけたいなら、アパートがおすすめです。
まとめ
アパートとマンションに明確な違いはなく、区分の基準も不動産会社や不動産情報サイトなどによってばらつきがあります。そのため、物件選びではアパートかマンションかの区分にとらわれすぎずに、家賃や立地、設備など、希望条件の優先順位を決めて物件を探してみることが大切です。
一方、「絶対に鉄筋コンクリート造に住みたい」など、建物の構造に明確な希望があるなら、最初からマンションに絞って物件を検索すると効率が良くなります。まずは譲れない条件を洗い出してみましょう。
監修者プロフィール

- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント。
約20年間の鑑定・宅地建物取引業の経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として活動を行う。