住まいのコラム
都市ガスとプロバンガスどっちがいい?
違いや料金を紹介
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 都市ガスとプロパンガスの違いは?
- 都市ガスは都市部を中心に利用できるガスで、プロパンガスの半分程度の価格で利用できます。都市ガスの供給可能エリアは都市部限定である一方、プロパンガスは事前に導線を引く必要がなく、簡単な設備とガスボンベがあれば供給できるため、全国エリアを問わずガスを利用できます。
賃貸物件で使用できるガスには「都市ガス」と「プロパンガス」の2種類があり、物件によって使用できる種類が決められています。この都市ガスとプロパンガスにはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は都市ガスとプロパンガスの違いとそれぞれのメリット・デメリット、料金の違いについてご紹介します。
都市ガスとプロパンガスの違い
不動産広告には、該当の物件で使用できるガスの種類が「都市ガス」もしくは「プロパンガス」で記載されています。
「都市ガス」「プロパンガス」の違いは以下の通りです。
都市ガス | プロパンガス | |
---|---|---|
供給方法 | ガス導管 | ガスボンベ |
主な原料 | 天然ガス | 液化石油ガス |
発熱量 | 11,000Kcal/m³ | 24,000Kcal/m³ |
供給エリア | 都市部を中心とした限定地域 | 全国どこでも |
重量 | 空気より軽い | 空気より重い |
料金 | プロパンガスより安め 2017年4月にガス自由化が開始 |
都市ガスより高め ガス会社により価格差が激しい |
ここからは、都市ガスとプロパンガスの特徴についてそれぞれ解説します。
都市ガスとは
都市ガスは、その名の通り都市部を中心としたエリアに供給されているガスです。各世帯へ繋がっているガス導管を通じた供給が行われ、電気や水道と同じような感覚でガスを利用できます。
発熱量はプロパンガスの半分程度しかなく、同じエネルギーを発生させるためにはプロパンガスの倍以上のガス量が必要です。しかしガス料金は一般的にはプロパンガスよりも安くすむため、一般家庭ではあまり発熱量を意識することはないでしょう。
2017年4月からガス自由化の制度が導入され、新たに参入した都市ガス会社と契約することで、さらに安価にガスを利用できる場合があります。
プロパンガスとは
プロパンガスは、ガス導線ではなく各家庭に設置されたガスボンベから供給を受けるガスです。事前に導線を引く必要がなく、ガスボンベと簡単な設備があればすぐにガスを利用できるため、全国どのエリアでもガスの供給を受けられるのが強みです。
少ないガス量で大きなエネルギーを発生させられるため、ガスボンベの交換を頻繁に行う必要はありません。ただし、ガス料金は都市ガスに比べて割高です。また料金に対する規制がないため、販売店間の価格差が大きい点には注意が必要です。
都市ガスとプロパンガスのメリット・デメリット
都市ガスとプロパンガスは、建物にガスを供給するという共通点以外にはさまざまな違いがあります。それぞれの個性ともいえる違いは、どのようなメリット・デメリットと捉えられるのでしょうか。
都市ガスのメリット・デメリット
都市ガスの大きなメリットは、なんといっても料金の安さです。都市ガスはプロパンガスに比べて半分程度しかエネルギーを作れませんが、プロパンガスの倍の量を使ったとしても半分程度の価格で済むケースがあります。
ただし、都市ガスは供給に必要なガス導管が整備されているエリアが限定されており、すべての地域で利用できるわけではありません。プロパンガスしか選択肢がない地域の方が広いため、都市ガスのメリットを感じられない人も多いでしょう。
プロパンガスのメリット・デメリット
プロパンガスは都市ガスに比べて料金が高いデメリットがある一方、利用できる地域を選ばないという強みがあります。導入に大がかりな工事は必要なく、ガスボンベを運ぶことさえできればどこでもガスを供給できます。また、何かあってもガスボンベの交換だけで復旧できる仕組みは、災害が多い日本にとって安心できる要素のひとつといえるでしょう。
その一方、プロパンガスは燃焼時の二酸化炭素量が多い液化石油ガスが使われており、環境に与える影響が大きいとされています。日本は2050年までに実質的な炭素排出量ゼロを目標にしていることから、プロパンガスの使用は今後なんらかの対策が求められる可能性があります。
都市ガスとプロパンガスの料金を比較
都市ガスとプロパンガスには大きな価格差があるといわれていますが、実際にそれぞれのガスを使用した場合の料金差はどの程度あるのでしょうか。東京都の価格を例に比較をしてみましょう。
都市ガス
東京ガスの「一般契約料金」における2023年7月検針分は、以下の料金設定となっています。
1ヶ月のガス使用量 | 基本料金 | 単位料金(m³) ※2023年7月検針分 |
---|---|---|
0m³~20m³まで | 759.00円 | 158.87円 |
20m3超~80m³まで | 1,056.00円 | 144.02円 |
※料金はすべて税込
出典:東京ガス「一般契約料金」
東京ガスの一般契約料金は、月内のガス使用量に応じて基本料金と単位料金が変動する仕組みとなっています。ガスの使用量に応じた料金の早見表(~40m³まで)は以下の通りです。
ガス使用量 | ガス料金 |
---|---|
5m³ | 1553円 |
10m³ | 2347円 |
15m³ | 3142円 |
20m³ | 3936円 |
30m³ | 5376円 |
40m³ | 6816円 |
※料金はすべて税込 ※小数点以下は切り捨て
参考:東京ガス「一般契約料金」
プロパンガス
プロパンガスは販売店ごとにガス料金を設定しているため、共通した料金の基準はありません。
以下は一般社団法人日本エネルギー経済研究所が行っている定期調査で算出された2023年4月時点の東京都における調査価格です。
ガス使用量 | ガス料金 |
---|---|
5m³ | 4941円 |
10m³ | 8018円 |
20m³ | 14109円 |
30m³ | 31473円 |
※料金は全て税込
出典:一般社団法人日本エネルギー経済研究所「定期調査」
プロパンガスは都市ガスの2倍程度の料金
前述の通り、プロパンガスは都市ガスよりもエネルギー発生効率が高く、同じガス量ならおよそ2倍程度のエネルギーを発生させることができます。この比率に基づき、都市ガス10m³=プロパンガス5m³と概算した場合の料金を比較してみましょう。
都市ガス料金 | プロパンガス料金 | |
---|---|---|
都市ガス10m3、プロパン5m³ | 2347円 | 4941円 |
都市ガス20m³、プロパン10m³ | 3936円 | 8018円 |
都市ガス40m³、プロパン20m³ | 6816円 | 14109円 |
同程度のエネルギー発生量で比較した場合、都市ガスの料金はプロパンガスのおよそ半額程度となっています。この料金差の背景にはガスそのものの料金差に加え、整備されたガス導管を活用できる都市ガスと、人力でガスボンベを運ばなければならないプロパンガスの人件費差があると考えられます。
都市ガスは建築時にガス管を住宅に引き込むのに費用がかかりますが、それ以降は大きなコストが発生しません。一方、プロパンガスは初期費用はほとんどかからないものの、配送費、人件費などのランニングコストがかかるため、都市ガスと比べて割高になります。
一人暮らし・2人暮らし以上のガス料金はいくら?
ガス料金は基本料金+使用量に応じた従量料金で決定されるのが一般的です。国内の各世帯では、実際に毎月どの程度のガス料金を支払っているのでしょうか。
一人暮らしの平均額は3331円
総務省統計局が発表している「家計調査(家計収支編)調査結果」によれば、2022年における単身世帯のガス料金は、平均3331円。この料金は都市ガス・プロパンガスを全て含めたガス代であり、前述のガス料金と比較するとおよそ5~10m³ほどのガスを使用していると予測できます。
また、民営借家(民間のアパートやマンション)に居住している方に対象を限定すると、平均3792円とやや増加しており、借家住まいの方のガス使用頻度が高いことがうかがえます。
一人暮らしのガス代や抑えるコツについてはこちらでも詳しく解説しています。
一人暮らしのガス代の平均はどれくらい?プロパンガスと都市ガスでどれだけ違う?
2人暮らし以上の平均額は5232円
では世帯数が増えるとガス代はどのように変化するのでしょうか。
同じく総務省統計局「家計調査(家計収支編)調査結果」によれば、2022年における2人以上世帯のガス料金は平均5232円と、単身世帯の約1.6倍に留まりました。
一方、民営借家のガス代は平均7036円となり、単身世帯の約2倍となっています。これは2人暮らし以上の世帯では料理を作る機会が増えたことが、料金の大幅増に繋がっていると考えられます。
ガスを使用する主なシーンは調理と入浴です。単身世帯と比べて2人以上世帯は調理はもちろん、入浴で多くのガスを使用します。自動追い炊き機能はガスの消費を増やす要因となります。お湯が冷めないうちに全員の入浴を速やかに済ませれば、少しはガス代を節約できるでしょう。
まとめ
「都市ガス」「プロパンガス」のどちらを使えるかは、一般的には物件ごとに決められています。都市ガスは2017年4月の小売自由化以降、自分の好みのガス供給会社を選べるようになりましたが、賃貸物件におけるプロパンガスの契約先は大家が決めているため、価格が高くても好きな会社に乗り換えるのは難しいでしょう。賃貸物件を探す際は、家賃や敷金・礼金だけでなく、ガスの種類にも注目してみてください。
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。