住まいのコラム
一人暮らしのガス代の平均はどれくらい?
プロパンガスと都市ガスでどれだけ違う?
最終更新日:

- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 一人暮らしのガス代はどれくらい?
- 東京都内で都市ガスを利用する場合、月に2000円程度のガス料金がかかります。プロパンガスは都市ガスよりも料金が高く、同じ熱量を得るためには3倍近いガス料金が必要です。もし引越し先のエリアが都市ガスに対応しているなら、ガス代節約ためにも優先して都市ガスを使える物件を選ぶとよいでしょう。
インフラのひとつであるガスは、料理や入浴など生活のあらゆるシーンに必要なエネルギーです。ガスは毎日使用するものであり、ガス代は毎月発生する支払いのひとつとなります。 となれば、気になるのがその費用。
ここでは、一人暮らしのガス代の平均的な額や、ガス代を抑えるための方法について解説します。
一人暮らしの平均的なガス代

総務省統計局がまとめた「家計調査 家計収支編 2023年」によれば、単身者世帯が年間に支払うガス代の平均は40310円、月間平均では3359円となっています。ただ、これはあくまで全体的な平均で、季節や地域、ガス会社やガスの提供様式によってガス代は世帯ごとに変わります。より厳密に費用を把握するには、地域差や提供様式による差も知っておきましょう。
<季節別・エリア別>一人暮らしの平均的なガス代
以下は、総務省統計局「家計調査 家計収支編 2023年」に掲載された、地域別の年間を通じたガス代の平均推移です。
北海道・東北地方 | 関東地方 | 北陸・東海地方 | 近畿地方 | 中国・四国地方 | 九州・沖縄地方 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年1~3月 | 3745 | 4423 | 4462 | 5110 | 4335 | 4630 |
2023年4~6月 | 2920 | 3259 | 3534 | 3417 | 3533 | 3256 |
2023年7~9月 | 1871 | 2090 | 2282 | 2169 | 2348 | 2158 |
2023年10~12月 | 1805 | 2373 | 2705 | 2520 | 2325 | 2439 |
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編 2023年」をもとに作成
気温が下がり暖房の需要が上がる1~3月は、全国すべての地域を通してガス代が大きく上がる傾向が見られます。特に近畿地方のガス代が高く、次いで九州・沖縄、北陸・東海地方と続きます。
北海道・東北地方は年間を通じてほかの地域よりもガス代が安い状況です。寒さが厳しい冬場であっても平均4000円を超えませんが、これには北海道は冬場の暖房に石油ストーブを使用する世帯が多いため、ガスの需要は他の地域ほど上がらないという背景があるようです。
プロパンガスと都市ガスでガス代は違う?

ガスの供給方法は、大きく「プロパンガス」と「都市ガス」の2種類に分類されます。
プロパンガスは各家庭に設置されたボンベから供給されるガスです。ガスボンベを運び入れるだけですぐに利用が開始できるため、ガス管が通っていない地域にもガスを供給できるというメリットがあります。
都市ガスは各世帯に接続されたガス管を通じて供給されるガスです。ガス管は地域ごとの都市ガス供給会社が管理しており、供給可能エリアは都市部を中心としたエリアに広がっています。
実は、住居のガスがプロパンガスか都市ガスかによって、同じ量のガスを使ってもガス代が変わってくるのです。
都市ガスとプロパンガスの違いについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
プロパンガスは都市ガスより高額になりやすい
プロパンガスの提供には、ボンベの運搬や検針を行う人手が必要となります。その分の人件費はガス料金に上乗せされるため、高額な設定になる傾向です。 また、プロパンガスは地域によっては競合が存在せず、一社独占状態が生まれやすくなっています。そうしたエリアでは競争が発生しないため、独占企業が自由にガス料金を引き上げられる状態にあります。
都市ガスは都市部に設置されていてるガス導管を通じてガスを供給できるため、プロパンガスに比べて安い価格での供給が可能です。また2017年の都市ガス小売全面自由化にともない新たなガス事業者が参入し、現在も価格競争が活発に行われています。
都市ガスはプロパンガスに比べて熱量が低いため、同じ熱量を得るには2倍のガス量が必要ですが、2倍のガスを利用しても価格はプロパンガスの半分以下に収まります。
都市ガス・プロパンガスの一人暮らしのガス代の目安
一人暮らし世帯で都市ガスとプロパンガスをそれぞれ利用した場合、料金にどのような差が生まれるのでしょうか。
東京都内における都市ガスとプロパンガスの料金を同熱量で比較した場合、それぞれ以下のような料金が請求されます。
料金 | 都市ガス | プロパンガス |
---|---|---|
基本料金 | 759 | 1861 |
都市ガス10m³・プロパンガス5m³ | 1453 | 5021 |
都市ガス20m3・プロパンガス10m³ | 2906 | 8184 |
都市ガス30m³・プロパンガス15m³ | 4359 | 14360 |
※都市ガスの料金は「東京ガス|ガス料金(家庭用/業務用・工業用 共通)」より一般契約料金の基本料金・基本単価料金を参照
参考:「東京ガス|ガス料金(家庭用/業務用・工業用 共通)」
※プロパンガスの料金は「一般社団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター 一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報」より2023年12月の価格を参照
参考:「一般社団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター 一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報」
一般的に、一人暮らし世帯における都市ガスの標準的な使用量は5m³程度であるといわれています。
仮に都市ガスを10m³使用した月を比較した場合、都市ガスの料金は、基本料金(759円)+都市ガス10m³の費用(1453円)=2212円。 対するプロパンガスは6882円と、3倍以上の価格差が生まれました。
都市ガスは供給エリアこそ限定的ですが、供給エリア内であればプロパンガスとは競争にならないほど安くガスを供給できます。

都市ガスとプロパンガスの料金を同熱量で比較した場合、本文にもあるように都市ガスのほうが費用負担を抑えられる傾向にあります。ただし、災害が発生してガス導管に不具合が発生した場合、都市ガスは復旧に時間がかかる可能性があるという点に注意が必要です。
一人暮らしのガス代を抑えるコツ

都市ガスとプロパンガスの比較を踏まえ、一人暮らし物件でガス代を抑えるためにはどのような対策をすればよいのでしょうか。
都市ガスの賃貸物件に住む
都市ガスとプロパンガスを選択できるエリアに住む場合、都市ガスを採用している賃貸物件を選ぶのがおすすめです。仮に都市ガスの供給エリア内にある賃貸物件でも、物件がプロパンガスを採用している場合には都市ガスは使えません。プロパンガスの料金は常に都市ガスよりも高いため、都市ガス供給エリア内にあるプロパンガスしか使えない物件に入居してしまうと、ガス料金の差額分だけ損をし続ける状態になるといえるでしょう。
都市ガスの供給エリア内で賃貸物件を探すなら、都市ガスの供給を受けられる物件の中から入居先を選びましょう。
調理時に電気ケトル・電子レンジを利用する
調理時にガスを多用しているようなら、電気ケトルや電子レンジを使い、ガスの使用量を減らすとよいでしょう。最近の調理器具は電気効率性能が向上し、わずかな電力でも調理が可能になっています。ガスを使い続けるよりもトータルの光熱費を下げられる可能性があるので、ガスを使いすぎる前に電気調理器具への切り替えを検討しましょう。
ただし、使いすぎると今度は電気代の上昇につながります。調理器具の使いすぎにも注意が必要です。
少量の水を使うときは温水を出さないようにする
少量の水を使うときには、水栓のレバーをお湯側に回さないようにしましょう。水栓のレバーをお湯側に倒しても、すぐにお湯が出るわけではありません。水栓からお湯が出るまでにはある程度時間がかかりますが、その間ガス温水器はガスを燃やしながらお湯を沸かしています。
少量の水を使うために水栓のレバーをお湯側に倒してしまうと、お湯が出る前に水を使う用事が終わってしまい、燃やしていたガスがすべて無駄になってしまうでしょう。
特にプロパンガスを使っている家では、小さな無駄遣いを無くすことが大きなガス代の節約につながります。

設定温度を下げることもガス代を抑えられます。また、食洗器が設置されている場合は食洗器を使用したほうが水道の使用量を抑えられる場合があり、ガス代だけでなく水道代を抑える効果も期待できるでしょう。
まとめ
都市ガスを利用できる賃貸物件で一人暮らしをする場合、毎月のガス代はおよそ2000円必要です。都市ガスはプロパンガスよりも料金が安く、同じ熱量を得るために必要なガス代を3分の1程度に抑えられます。
ただし、都市ガスのガス導管は都市部にしか設置されておらず、多くの地域ではプロパンガスしか選択肢がありません。もし転居先のエリアでプロパンガスしか使えないようなら、ガス代の節約につながる電化製品の導入を検討しましょう。
監修者プロフィール

- 矢野 翔一
- 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。