住まいのコラム
引越しの挨拶は必要?
適切な時間や粗品・手土産の選び方
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 引越し時に挨拶は必要?
- 近隣住民とよい人間関係を作りたい場合は、挨拶をしておくのがおすすめです。集合住宅なら上下左右の部屋、戸建なら周辺の住宅に粗品を持って挨拶をしておきましょう。ただし、防犯上の観点から挨拶をせず、周囲と人間関係を作らないという選択肢もあります。
引越し時には近隣への挨拶がマナーだといわれています。新たな隣人の良好な関係を作るために必要と考えられていますが、最近では個人情報保護などの観点から、引越し時の挨拶をしない人も増えています。
今回は引越し時の挨拶の必要性、挨拶するときの時間帯や手土産など、引越し時の挨拶で押さえておきたいポイントについてご紹介します。
引越しの挨拶は必要?
引越しの挨拶に関する話題がでるときには「引越ししたら近所に挨拶をするべき」「挨拶の際には粗品を持っていくとよい」というマナー論を耳にします。では実際に引越し時に挨拶を行う人はどの程度いるのでしょうか。
株式会社AlbaLinkが2023年に調査した結果によると、引越し時の挨拶を「必ずする」人は44.0%、「することもある」人は26.0%と、7割の方が挨拶をする傾向があることがわかりました。
「することもある」とした人は、単身の場合や学生向けマンションといった環境ではしないという選択をする傾向があるようです。
最近では挨拶をしない人も少なくない
一方で、引越し時の挨拶をしないと判断している世帯も少なくありません。
前述の調査で引越しの挨拶を「しない」と回答した方のうち、最も多い理由として挙げられたのが「防犯のため」が24.6%、「近所付き合いしたくない」が20.7%、「隣人と関わる機会がない」が20%という結果になりました。
近隣住民との良好な関係はご近所トラブル回避に繋がる一方、一人暮らしであることを知られたくないという気持ちから慎重な姿勢を取る人も多くいます。
また、引越し先での近所付き合いを面倒と感じる人がいるのと同時に、以前から住んでいる住民の中にも、わざわざ近所付き合いを増やしたくないという人もいます。お互いに交流を求めないため、近所付き合いをしない関係が作り上げられることもあるようです。
挨拶には粗品を持っていく人が多い
引越し時の挨拶をする場合、何かしらの手土産は持っていくべきなのでしょうか。
前述の調査で「必ずする」「することもある」を選んだ7割の方のうち、粗品を「必ずもっていく」のは72.5%、「もっていくこともある」のが22.6%と、95%以上の方が何らかの粗品を持っていく傾向があることがわかりました。この結果からは、引越しの挨拶には粗品がセットであることが共通認識として広まっているとうかがえます。
実際に挨拶のときに粗品があると、会話をつなぐきっかけになり話がスムーズになります。また近所と仲良くしたいという意思を受け取ってもらいやすくなるため、今後良好な関係を築きやすくなるでしょう。
反対に何も持たず挨拶をすると、訪問を受けた側は粗品を持たない挨拶に違和感を覚えてしまうかもしれません。
引越し時の挨拶そのものはしない場合もありますが、挨拶をするなら粗品の準備は必須のつもりでいたほうがよいでしょう。
女性の一人暮らしの場合、近隣に挨拶したことで危険性が増す可能性があります。入居後の生活をスムーズにするための慣習ではありますが、必須というわけではないので状況に応じて判断しましょう。
引越しの挨拶が必要な範囲は?
引越し先での挨拶は、まずは普段の生活で関わりが多くなりそうなところから行うとよいでしょう。住まいの形によって挨拶の先が変わりますので、適切な相手に挨拶できるように注意しましょう。
アパート・マンション
アパートやマンションといった集合住宅に引越した場合、自室と隣接した部屋の住民に挨拶をしておくのがおすすめです。
基本的には「両隣」と「上下」へ挨拶をしておくとよいでしょう。特に両隣の住民とは廊下ですれ違う機会もあるため、早めに挨拶をしておくと安心です。
上下階の住民とは、両隣に比べると直接の交流は少なめですが、生活音による騒音トラブルが発生しやすい関係です。知っている人が上下階に住んでいるということで、お互いに意識して騒音を出さないように配慮し合える可能性が高まるでしょう。
戸建
戸建へは家族世帯で引っ越すケースが多いため、特に近隣への挨拶が重要になります。いいご近所関係を築けるよう、漏れがないように挨拶を済ませておきましょう。
優先的に挨拶しておきたいご近所は、両隣・向かい3軒・真後ろの計6軒です。ただし、今後町内会や自治会でお世話になる相手であることを考えると、挨拶の範囲をもう少し広げてもよいかもしれません。
また、引越し当日はトラックが数時間道を塞いだり、引越し作業に伴う騒音が発生したりするおそれがありますので、事前に一言挨拶をしておくのも重要です。
家主への挨拶は必要?
引越し先が賃貸住宅の場合、家主(大家さん)に挨拶すべきか気になるところです。家主が賃貸住宅にいる場合はかかわる機会が多いため、挨拶しておいたほうがよいでしょう。家主がおらず、不動産会社が管理しているケースでは基本的に挨拶は必要ありません。また、集合住宅の中には、管理人が常駐しているケースもあります。家主と同様、管理人とはかかわる機会が多いため、挨拶しておくとよいでしょう。
引越しの挨拶に適した時期・時間帯は?
挨拶は相手の家に訪問して話をさせてもらう必要があるため、相手が在宅中に行う必要があります。挨拶は相手の生活を邪魔しない時間帯を選び、好印象を与えられるように気をつけましょう。
引越しから1週間以内がベター
挨拶は引越しから1週間以内にするのがベターです。できれば引越し前や当日に行えるのが望ましいですが、仕事の都合や相手の不在などの事情が重なることもあるので、引越し後1週間以内を目安に考えておくとよいでしょう。
深夜・早朝は避ける
挨拶をする際に避けたい時間帯が深夜・早朝です。平日に仕事をしていると、日中に訪問するのが難しくなりますが、かといって相手が忙しい早朝や就寝直前の深夜の時間帯を選ぶのは避けるべきでしょう。
挨拶に適したタイミングは日が明るい日中がベスト。土日の朝は遅くまで寝ていたい人もいるので、あまり早い時間の訪問は避けた方が無難です。
食事時は避ける
明るい日中であっても、食事の時間帯は避けるのがベターです。仲のいい間柄でも食事の時間は訪問を避けるのがマナー。引越しの挨拶も避けるべきでしょう。
ただ、食事の時間は各家庭の習慣によって異なるもの。昼食が15時ごろになる家庭もあるので、配慮した結果が食事のタイミングに当たることもあるでしょう。とはいえ挨拶の時点ですべての家の事情を把握することはできません。一般的な食事時間を避けた時間を選べば、訪問先にも理解してもらえるでしょう。
引越しの挨拶に渡す粗品・手土産は何がいい?
引越しの挨拶で渡す粗品は、先方の邪魔にならず使い切れるもの、そして好みが大きく分かれないものを選ぶのが好ましいとされています。価格は受け取った側の心理的な負担にならないよう、500~1000円程度の品物を選ぶのがベターです。
また、粗品にかけるのし紙は紅白蝶結びのものを選び、表書きには「御挨拶」の文字を入れましょう。
以下で、引越しの挨拶におすすめの品物をご紹介します。
日持ちのするお菓子
お菓子類は引越しの挨拶で喜ばれる粗品のひとつです。特にクッキーや焼き菓子など、日持ちがするお菓子は先方の負担になりにくいのでおすすめ。相手の家族の人数がわからない場合でも、小分けのお菓子が複数種類入っている品物を選べば安心です。
洗剤やタオルなどの日用品
洗剤やタオルなどの日用品は、挨拶で渡す粗品の中でも人気です。消耗品はいくらあっても助かるもの。渡す相手がご家族の場合には特に喜んでもらえるでしょう。
近年は、オーガニックの石けんや洗剤を選ぶ人も増えています。一般的な家庭で使われる品が合わない場合もあるため、心配な人は別の粗品を選んだほうが無難です。
好みが分かれないお茶やコーヒー
飲み食いしてなくなるものという観点では、お茶やコーヒーも挨拶時の粗品としておすすめです。多くの家庭で毎日飲まれるお茶やコーヒーも、いくらあっても足りなくなる品のひとつです。好みも分かれにくいため、どの世帯に対しても安心して贈れる粗品として高い人気があります。
なお世帯によっては、茶葉からお茶を入れる習慣や、コーヒーをドリップする用具を持たない場合があります。どの家庭でも利用してもらえるよう、ティーバッグのお茶やドリップバッグのコーヒーを選んでおくと安心です。
引越しの挨拶をしたいのに不在の場合はどうする?
引越しの挨拶をしておきたいのに、何度も訪ねても会えないというケースも考えられます。特に単身者世帯では不在であるケースだけでなく、訪問販売員を警戒して居留守を使うことも珍しくありません。
曜日や時間を変えて2~3度訪問しても会えない場合は、挨拶の手紙をポストに投函し、挨拶の意思を伝えておくとよいでしょう。用意した品物があるようなら、一緒に投函するのがおすすめです。その際は、先方がいつ戻るかわからないため、食べ物類は避けておくのが無難です。
挨拶の手紙には「名前」「いつどこに引越したか」「不在で手紙での挨拶になることへのお詫び」「今後ともよろしくお願いしますといった挨拶文」などを盛り込みましょう。
まとめ
引越し後に近隣住民と仲良く過ごすためには、引越し時の挨拶が大切です。特に町内会や自治会の活動が活発なエリアほど、地域住民との関係を作るためにも、好感を持ってもらえるような挨拶をするように心がけましょう。粗品を渡す際には、受け取った側が負担に感じないよう、使えばなくなる消耗品がおすすめです。
近所との良好な人間関係は生活しやすい環境につながりますが、一方で、防犯上の理由から挨拶をせずに人間関係を作らないという選択肢もあります。自分が求める生活に合わせて、挨拶すべきかどうか判断しましょう。
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。