住まいのコラム
住民票の移し方は?
転出届・転入届・転居届の出し方を解説
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 住民票の移し方は?
- 同一市区町村内で引越す場合は、役所の窓口に転居届を提出するだけです。異なる市区町村への引越しは、転出元の役場に転出届を提出し、発行された転出証明書を添えて転入先の役場へ転入届を提出してください。国民健康保険や印鑑登録、マイナンバーカードの住所変更などの手続きも同時に行えます。
引越しの際には、公的機関でのさまざまな手続きが必要になります。住民票の移動もその手続きのひとつ。国民の居住地を公的に証明するための制度である住民票の移動は義務であり、引越し先で公共サービスを受けるためにも手続きを済ませる必要があります。
今回は住民票を移すために必要な手続きについてご紹介します。
目次
引越し先で異なる!住民票の移し方
住民票の移動の手続きは、引越し先が同じ市区町村内か、異なる市区町村かによって異なります。
同じ市区町村内で引越す場合
転出元と転入先が同じ市区町村内にある場合、役所に「転居届」を出す必要があります。厳密には転居届という書類はなく、役所の窓口にある「住民異動届」の中にある「転居届」の欄にチェックを入れた書類の提出が必要です。
異なる市区町村に引越す場合
現在の住所から異なる市区町村へ引越す際には、転出元と転入先でそれぞれ手続きを行います。
転出元では、元の市区町村から住民票を抜くために「転出届」の提出が必要です。住民異動届の「転出届」欄にチェックを入れて役所の窓口に提出します。転出届が受理されると、窓口から「転出証明書」が発行されますので、忘れずに受け取ってください。
手続きを行うタイミング
住民票の移動は国民基本台帳法によって義務づけられており、転居から14日以内に届出を出さない場合、最大5万円の過料を科せられるおそれがあります。
適切なタイミングで住民票を移動させるためにも、引越し先別の手続き方法を理解しておくことが大切です。
住民票を移動していないことに、短期の住み込みや単身赴任、一時的な転居などで生活拠点が変わらないといった正当な事由がない場合は過料の対象となるので注意してください。
住民票の移動に必要な届出3種類
前述したとおり、住民票の移動で必要な届け出書類には、「転居届」「転出届」「転入届」の3種類があります。
同じ市区町村内で引越しする場合には「転居届」の提出が必要です。住民票は市区町村単位で管理されているため、市区町村をまたいだ移動がなければ、同じ役場内で手続きが完了します。
異なる市区町村へ引越しする場合には「転出届」および「転入届」の提出が必要です。転出届は現在の市区町村から住民票を抜くため、転入届は引越し先の市区町村へ住民票を作るために必要な書類です。
引越し先によって使用する書類が異なるため、作成する書類を間違えないように注意しましょう。
以下で、それぞれのより詳しい手続き方法を解説します。
「転居届」を出すときに必要なものと手続き方法
同一市区町村内での転居に必要な手続きが転居届の提出です。手続きの方法と手続きに必要なものは以下の通りです。
手続き方法
転居届は、現在居住している市区町村役所の窓口に提出します。住民異動届に必要事項を記入し「転居」にチェックを入れて窓口へ提出します。
手続きの期間は、引越しの当日から14日後までの間です。
必要なもの
転居届の手続きを行う際には、以下の書類等を役所の窓口まで持参しましょう。
本人確認書類 | 運転免許証、保険証、パスポート、マイナンバーカードなど |
---|---|
印鑑 | |
国民健康保険証など | 該当者のみ |
マイナンバーカード | 所有者のみ |
転居届は同一市区町村内で手続きが完結するため、書類提出は一度だけで終わります。提出する書類も本人確認書類だけなので、手続きにかかる時間は短めです。
国民健康保険は同一市区町村内の移動であっても、保険証に記載された住所を書き換えなければならないため、再発行の必要があります。手続き自体は古い保険証を提出して新しい保険証の発行を受けるだけですので、手間はかかりません。
印鑑登録にひも付いた住所も転居届を提出するだけで更新されます。他市区町村への転出・転入時のような登録抹消や再登録の必要はありません。
なお、転居届の手続き自体は非常に簡単ですが、金融機関などの登録住所の変更は別途行わなければなりません。機関によっては新住所が記載された証明書の提出が求められるため、転居の手続きが完了した後は、住民票を一通取っておくとよいでしょう。
「転出届」を出すときに必要なものと手続き方法
転出届の提出は、異なる市区町村へ転居する際に行う最初の行政手続きです。手続きの方法と手続きに必要なものは以下の通りです。
手続き方法
転出届は、転出元の市区町村役所に提出します。役所で配布される住民異動届に必要事項を記入し「転出」にチェックを入れて窓口へ提出します。
手続きの期間は、引越しをする14日前から当日までの間です。
必要なもの
転出届の手続きを行う際には、以下の書類等を役所の窓口まで持参しましょう。
本人確認書類 | 運転免許証、保険証、パスポート、マイナンバーカードなど |
---|---|
印鑑 | |
国民健康保険証など | 該当者のみ |
印鑑登録証 | 登録者のみ |
マイナンバーカード | 所有者のみ |
転居する本人が手続きを行う場合、自治体によっては本人確認書類だけで転出届の手続きが終わる場合があります。しかし、同日に行う他の手続きで使用する可能性があるため、印鑑も持参しておいたほうが無難です。
国民健康保険証および印鑑登録証は、転出届の受理と同時にその自治体における登録が抹消されます。保険証と印鑑登録証は窓口に返還する必要があるので、忘れずに持参しましょう。
また、マイナンバーカードを所有している方は、転入先でも継続してマイナンバーカードを使用できるよう、転出届の提出と同時に転出の申請を済ませておくことをおすすめします。
転出届が受理されると、転入先での手続きに必要な「転出証明書」が発行されます。大切に保管しておきましょう。
オンラインによる手続き方法
住民票を移動させるための手続きのうち、転出届のみオンラインでの手続きが可能です。申請は「マイナポータル」上から行うことができますが、手続きには以下の書類・機材の用意が必要です。
マイナンバーカード | 署名用電子証明書が有効なものに限る |
---|---|
マイナンバーカード読み取りに対応したスマートフォン または PCおよびICカードリーダー |
|
連絡先電話番号 | 日中に連絡が取れる必要あり |
なお、国民健康保険証や印鑑登録証の抹消は転出証明書の発行と同時に行われますが、返還の手続きは役所の窓口で行う必要があります。また、一部の自治体はオンラインでの転出届の手続きに対応していないので、利用前には転出元の対応可否を確認しておきましょう。
転入届を出すときに必要なものと手続き方法
転入届の提出は、新たな居住地に住民票を移すために必要な手続きです。手続きの方法と手続きに必要なものは以下の通りです。
手続き方法
転入届は、転入先の市区町村役所の窓口に提出します。住民異動届に必要事項を記入し「転入」にチェックを入れて窓口へ提出します。
手続きの期間は、引越しの当日から14日後までの間です。
必要なもの
転出届の手続きを行う際には、以下の書類等を役所の窓口まで持参しましょう。
本人確認書類 | 運転免許証、保険証、パスポート、マイナンバーカードなど |
---|---|
印鑑 | |
転出証明書 | |
マイナンバーカード | 所有者のみ |
転入届の届出は、転入先の自治体に住民票を作るための手続きです。転出元から住民票を移動する証明である転出証明書を提出する必要があります。
転入届の提出と同時に、マイナンバーカードと国民健康保険の移動手続きも済ませておきましょう。国民健康保険は特に追加の手続きは必要ありませんが、マイナンバーカードの継続利用には印鑑と4ケタの暗証番号が必要です。
印鑑登録には移動の手続きがなく、転出先で抹消された状態です。再登録の必要があれば、役所の窓口であらためて登録手続きを行いましょう。
転入届が受理された後は、転入先の住民票を一通取っておくと、今後行う金融機関などの住所変更の手続きに使用できて便利です。
代理人でも住民票を移すことはできる?
何らかの理由で転居する本人または世帯主が転出・転入の手続きができない場合は、代理人による手続きも認められています。
手続きを代行する人が同一世帯員である場合は、代行者の本人確認書類と印鑑以外に追加する書類はありません。ここでいう同一世帯員は家族である必要はなく、15歳以上であれば同棲中の未婚パートナーであっても問題ありません。また家族であっても同一世帯でない場合は、自治体によって扱いが異なります。
同一世帯員ではない人が手続きを行う場合は、転居する本人による代理人を指名する委任状が必要になります。委任状の書式は自治体ごとに異なりますが、一般的に以下の内容が記載されていることが求められます。
・代理人の住所・氏名・生年月日
・依頼者が委任する旨の宣言
・依頼者が委任する事項
・依頼者本人の住所・氏名
・依頼者本人の捺印
なお、転出と転入どちらの手続きも委任する場合は、それぞれの手続きごとに委任状が必要です。委任状の書式は提出先の自治体のルールに合わせる必要があるため、あらかじめ必要な情報を確認した上で委任状を作成しましょう。
住民票の移動手続きをしないことで発生するトラブルは過料の対象になるという点だけではありません。手続きをしないことで行政サービスを受けられないといったデメリットも生じるので、速やかに移動手続きを済ませましょう。
まとめ
住民票の移動は、転入先の住所によって手続きが異なります。転入先が同一市区町村なら転居届の提出で完結しますが、異なる市区町村への転出・転入は、それぞれの自治体の役所で個別の手続きが必要です。
それぞれの移動手続きに共通して必要となるのが、本人確認書類と印鑑です。ほかにも人によって必要な書類や提出物があるので、漏れがないようにしっかり確認しておきましょう。
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。