住まいのコラム
騒音で警察を呼ばれた!
大きなトラブルに発展させないための対処法
最終更新日:

- 亀梨 奈美
- 不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
- 身に覚えがない騒音で通報されたときはどうする?
- まずは自分が騒音の出所ではないことを警察へ冷静に伝えましょう。また同時に家主や管理会社に報告し、自分が騒音元ではないことを周知しておくのも大切です。それでも通報が繰り返されるようなら、弁護士への相談や別の建物への転居も検討するとよいでしょう。
集合住宅に住む際に心配な点のひとつが周囲の騒音問題。「隣室がうるさくないといいな」と期待しながら部屋を探す人は多いのではないでしょうか。
一方で、自分が出している音が思いのほか大きく、気がつかないうちに騒音問題の加害者になっているケースがあります。いつの間にか警察に通報されてしまうことも決して他人事ではありません。
自分が騒音問題の加害者側になってしまった場合、問題を大きくしないためにはどのような対応が必要なのでしょうか。今回は騒音問題の加害者になったときの対処法についてご紹介します。
目次
騒音で苦情を受けた経験がある人は10%
全国の20代~60代の男女に「騒音で苦情を受けた経験があるか」をアンケートしたところ、「ある」と答えた人は10.3%という結果でした。
※対象者:全国の20代~60代男女1854人 調査時期:2024年1月
およそ10人に1人は騒音で苦情を受けた経験があるということになります。
中には、身に覚えがないのに苦情を受けたという人もおり、決して他人事ではないといえるでしょう。
アンケートで聞いた
騒音を理由に近所から苦情を言われたことはある?
(身に覚えがない場合も含む)
- ある…10.3%
- ない…89.7%
- 回答者の声
- 友達を家に呼んで深夜の時間にゲームして騒いでいたら隣人から苦情がきてしまった。謝罪と今後深夜帯での遊びはしないと約束しました。20代/男性
- 夜中に歩く音やドアを閉める音がうるさいと掲示板に紙で書かれたことがあるので今は注意している。30代/男性
- 子どもが走り回る音が響いていたようで、管理会社に苦情を言われた。菓子折りを持って謝罪したところ、テレワークで日中家にいるため騒音が気になると言われた。30代/女性
- 下の階の住人から大家さんを通して苦情があった。そのときには大家さんを通して謝ったが、古いアパートで騒音には気をつけていたので、なぜ苦情を寄せられたのかがわからない。30代/女性
- 掃除機の音が気になると言われた。長時間使用してるわけでもなく時間帯も問題ないはずだが、それ以降は気をつけている。40代/女性
騒音によって問われる可能性のあるのはどんな罪?

コロナ禍以降、生活騒音を原因とした騒音トラブルに関する相談が増加しています。中には警察への通報から起訴につながったというケースがあるほど、騒音は不法行為と隣り合わせであるといえます。騒音はどのような犯罪に繋がってしまうのでしょうか。
軽犯罪法違反
住居から騒音を出し近隣に迷惑をかける行為は軽犯罪法違反に該当します。軽犯罪法第1条14項では「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」が拘留または科料の対象と定めているため、警察官の制止を無視した場合には罰則を受けることになります。
拘留は1日以上30日未満の身柄拘束、科料は1000円以上1万円未満の金銭徴収を意味しており、刑罰の中では軽い部類です。ただし拘留・科料は履歴書に記載する賞罰の対象になりますので、実際に受ける罰以上に影響は大きいと考えられます。
傷害罪
被害者側が騒音により受けた損害の度合いによっては、傷害罪が問われるおそれがあります。過去には騒音の大きさや期間が被害者側の受忍限度を超え、睡眠障害などの健康被害が発生したと証明されたことで、傷害罪が適用された判例があります。
家主や管理会社、警察から注意を受けながらも騒音を解決しなかった場合には、意図的に騒音を発生させていたと判断され、重い罰則が下される可能性があるでしょう。
暴行罪
騒音による被害が健康被害という形で現れなくても、被害者側が騒音による被害を受けていると認識している場合、暴行罪に問われることも考えられます。
暴行罪は殴る・蹴るといった直接的な接触を伴わなくても、相手の耳元で大声を上げるといった行為で相手に危害を与えた際にも成立します。また、行為の結果相手が負傷しなくても暴行罪が適用される点には注意が必要です。
罪に問われるとは限らない
前述のように、騒音の影響が不法行為と認められた場合には、法的な罰則を受ける可能性があります。しかし、生活音がうるさいと感じる感覚には個人差があるため、何らかの訴えを起こされても不法行為として認められるとは限りません。
また軽犯罪法においては、騒音を出していることではなく警察官の指導に従わないことが違法と判断されるため、仮に1度注意を受けたとしても、その後に同じ注意を受けなければ不法行為にはなりません。
法に触れなければ騒音を出してもいいという話ではありませんが、通報=犯罪となるわけではない点は覚えておくとよいでしょう。
警察を呼ばれたときの対処方法

集合住宅は多くの人が同じ建物に住んでいる以上、誰もが騒音の被害者にも加害者にもなりえます。もし心当たりがないのに警察官の訪問を受けてしまった場合は、以下を参考に冷静に対処しましょう。
通報された原因を聞く
最初に行うのは、通報された理由を明確にするための質問です。心当たりがない場合は特に、通報に至った原因を冷静に確認しましょう。
集合住宅は構造が複雑であるため、音が思いも寄らない方向に反響することがあります。隣の部屋からの騒音かと思ったら斜め下の部屋からの音だったというケースは珍しくなく、濡れ衣を着せられる形で通報されていることも考えられます。
通報されたという事実に慌てず、まずはなぜ自分が通報されてしまったのか、冷静に原因を突き止めましょう。
事実を伝える
警察は通報内容に従って騒音の発信源と思われる家を訪問しますが、目的は逮捕ではなく事実確認と問題解決です。警察からの質問に適切に回答できなければそれだけ問題解決から遠ざかりますので、まずは事実を明確に伝えるように努めましょう。
警察官から伝えられた騒音に心当たりがない場合は、正直にその旨を伝えるのが重要です。同じような音を聞いたことがあるなら、聞こえてきた時間帯や方向を伝えることで、情報提供の形で協力できます。反対に自分は問題ないと思っていた音が迷惑になっているようなら、音の発生源であることを認めたうえで改善する意思を伝えましょう。
責任から逃れようとウソをついたり、警察を挑発するような態度や発言をしたりするのは、非協力的であると認識されるだけです。この時点では責任を問われているわけではありませんので、まずは問題解決や環境改善に向けて素直に協力しましょう。
自分に非があれば素直に謝る
警察との会話の中で、自分の行動が騒音の原因であることを知った場合は、素直に非を認めて謝りましょう。道理の通らない言い訳をしても心証を悪くするだけですので、真摯な気持ちで謝罪しましょう。改善に向けた具体的な行動方針も添えられると、被害者側も安心です。
警察官から質問されると、どこか必要以上に責められているような気持ちになってしまうかもしれません。しかし警察官はあくまで受けた通報に対する対応という職務を全うしているだけですので、決して敵になっているわけではないのです。
いつか別の形で助けてもらう機会もあるかもしれませんので、警察とはいい関係を保てるよう、素直で協力的な対応を心がけるとよいでしょう。
できる限り騒音を抑える努力をする
適切に対処した後は、騒音を抑えるためになんらかの対策を講じましょう。
たとえば小さな子どもがいる場合は、リビングや子ども部屋などに防音効果のあるカーペットやマットを敷くのが効果的です。また、夜勤中心など、一般の方とは異なるライフスタイルを送っている方は、洗濯や掃除の時間帯に配慮しましょう。
どんな人であっても、一定の騒音を出しながら生活しているものです。「お互い様」の精神が求められることから、騒音を抑えるための具体的な対策や努力を示すことで、通報した人の気を沈めることができるかもしれません。
逆恨みや仕返しは絶対にしない
仮に自分側に騒音問題の責任があるとしても、何度も通報されると通報者に対する敵意が芽生えることがあります。相手の通報そのものが嫌がらせであるように感じるようになってしまうと、やがて住民同士の直接対決や、より明確な不法行為を引き起こしてしまうかもしれません。
人間である以上、感情的になってしまうことはあります。しかし怒りや憎しみの感情に任せて逆恨みや仕返しをしてしまうことで、その後の人生に悪影響を及ぼすことも考えられます。もし納得できない通報が繰り返されるようなら、感情的に反応せず、できるだけ第三者を交えた話し合いをするように努めましょう。

通報にまで発展してしまうと、解決までに時間がかかってしまうこともあります。その場合は、通報した相手と直接、やり取りをするのではなく、管理会社や家主を挟んで対処することをおすすめします。直接、対峙してしまうと、言い争いやさらなるトラブルにも発展しかねません。
身に覚えのない騒音トラブルで警察を呼ばれてしまったらどうすればいい?

集合住宅の中には、音が響きやすいという構造上の問題がある建物があります。そのため他の部屋から出ている騒音の犯人と勘違いされることもありえますが、そのまま黙っていると騒音主と認識されてしまい、大きなトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。
もし身に覚えのない騒音を理由に警察を呼ばれてしまうようなら、次の紹介するような対策を試してみましょう。
警察にその旨を伝える
心当たりのない騒音を理由に警察官の訪問を受けた場合には、まずは自分が騒音の出所ではないことを伝えましょう。普段から騒音対策として行っている取り組みも説明できると、より騒音元ではないことをアピールできます。
なお、疑われたこと自体に反発するような態度で臨んでしまうと、警察官の心証を悪くするおそれがあります。自分が騒音元でなければ怖がる必要はありませんので、あくまで冷静に事実を伝えるのが望ましいです。
家主や管理会社に相談する
身に覚えがない騒音を理由に警察官の訪問を受けたなら、訪問の事実を家主や管理会社に共有しておきましょう。騒音被害者が警察への通報の前に家主や管理会社に相談していたなら、家主や管理会社も騒音の出所があなたであると認識している可能性があります。
また、身に覚えのない騒音の疑いが掛けられていることを家主や管理会社に共有することで、騒音の実態が明らかになることもあります。問題解決の手助けをしつつ誤解を解いておくためにも、情報共有はなるべく早く行っておきましょう。
必要に応じて弁護士へ相談も
騒音被害は賃貸住宅で起きる問題の中でも、非常に根深く解決しづらい問題です。いくら騒音元ではないと家主や管理会社に説明しても、何度も通報を繰り返されてしまうこともあります。
無実の罪に対して繰り返される通報は、騒音の被害者が新たな加害者となる不法行為になりえます。嫌がらせとも感じられるような通報を受けるようなら、必要に応じて弁護士に相談し、解決に向けた介入を依頼してもよいでしょう。
引越しも選択肢のひとつ
たとえ警察の訪問を受ける理由となった騒音に身に覚えがないとしても、自分が騒音主でないことを証明するのは簡単ではありません。時には専門の業者による騒音測定や別の住民への聞き取り調査など、第三者の協力を仰ぐ必要もあるでしょう。
それだけの対応をしても、家主や管理会社が信用してくれるとは限らず、疑いの目を向けられ続ける場合もあります。その後、長い時間や多額の費用をかけて調査を行ったとしても、残るのは無実の証明しかないでしょう。
もし騒音トラブルが長引く可能性を感じたなら、早々に別のマンション・アパートへの転居を検討してもよいでしょう。無実を証明しないまま退去する形になるかもしれませんが、不毛ともいえる争いでの疲弊を避けるほうが、長い目で見た時のメリットは大きいでしょう。

普通に生活しているだけであっても、相手にとってはその生活音が「騒音」と捉えられてしまいかねません。騒音と認識されるかどうかは隣人次第ということもあります。この場合は、価値観や生活リズムが合わなかったものと判断し、必要以上に自分を責めないようにしましょう。
まとめ
集合住宅における騒音トラブルは、どの建物であっても完全に避けることは難しい問題です。自分が被害者になる場合ばかりではなく、気がつかないうちに加害者側になることも。常に騒音トラブルは身近にあることは意識し、加害にならないような対策を行いましょう。
もし身に覚えがない騒音の疑いにより通報されてしまったなら、警察には協力する姿勢で臨むのがおすすめです。警察もあくまで問題解決のために訪問しているだけですので、敵対する必要はありません。その後トラブルが長引いたときにも味方になってもらいやすくなりますので、警察の質問には冷静に事実を伝えるように心がけましょう。
監修者プロフィール

- 亀梨 奈美
- 株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。