住まいのコラム
SOHO(ソーホー)とは?賃貸オフィスや在宅ワークとの違いをわかりやすく解説
最終更新日:

- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- SOHO(ソーホー)とはどのような物件?
- SOHO(ソーホー)とは、事務所としての利用を認められた賃貸物件です。住宅契約を結ぶ物件であるため、敷地の広さや賃料は一般的な住宅の基準に準じます。
事務所物件よりも安価で借りやすい一方、法人登記や事業所としての利用に制限が掛けられる場合があるため、SOHO物件を活用できる事業は限られます。
近年は副業や独立開業、起業といった働き方が注目されています。個人でビジネスをする方が増える中、注目を集めているのが「SOHO」というワークスタイルです。
SOHOは、ワークスタイル(働き方)を示すSOHOと、そのワークスタイルに適した物件を示すSOHOの2つの意味を持ちます。 今回は、SOHOの意味やSOHO物件の特徴、SOHO物件のメリット・デメリット、家賃相場についてご紹介します。
目次
SOHO(ソーホー)の意味とは?

SOHOとは「Small Office Home Office」の頭文字から生まれた造語です。具体的に、どのような働き方や働く環境を示す言葉なのでしょうか。
働き方におけるSOHO(ソーホー)の意味
働き方のひとつとして使われる「SOHO」は、自宅や小規模のオフィスで仕事をするといった意味合いを持ちます。主に自宅を仕事場にする個人事業主や自営業、一人社長の働き方を指し、Web関連の仕事をしている人の働き方の呼称として使われることもあります。
会社員が自宅など職場以外で働くケースはSOHOに当てはまりません。その場合は、「テレワーク」「リモートワーク」といった言葉が使われます。
物件におけるSOHO(ソーホー)の意味
物件におけるSOHOは、個人事業主や小規模事業者に適した事務所利用可能な賃貸物件を指します。必ずしもSOHO用として設計された物件ではなく、中身は一般的な住居物件と変わらないこともあります。
ただし、ファミリータイプのような間取りではなく、1LDKや2LDKなど、事務所に割り当てられる居室がある間取りの物件がSOHO物件として扱われる傾向にあります。
SOHO(ソーホー)物件とは?賃貸オフィスとの違い

SOHO物件とは、前述の通り個人事業主や小規模事業者向きの事務所として利用できる賃貸物件を指します。
事務所契約を結ぶ賃貸オフィスと同様に、室内における事業活動を認められています。ただし、賃貸オフィスでは顧客や関係者など不特定多数の人物の出入りを可とされているのに対し、SOHO物件は不可とされています。
また、賃貸オフィスでは屋外に社名や屋号の看板を出した宣伝活動が可能ですが、SOHO物件では原則として認められないケースが多いでしょう。
SOHO物件は事務所としての利用を認められている物件ではありますが、あくまで契約内容は住居契約に基づいています。認められる事業活動は住居としての用途から逸脱しない範囲に限定されており、賃貸オフィスと完全に同じような使い方はできない点には理解が必要です。
SOHO物件のメリット

SOHO物件は、事務所契約が必要な物件ほど大きくなく、手頃なコストで利用できるという特徴があります。事業者が展開したいビジネスの形態や規模によっては、事務所を借りる以上のメリットを得られるでしょう。
賃貸オフィスと比べて家賃・初期費用が安め
SOHO物件は住居契約の物件であるため、事務所契約に比べて賃料を安く抑えられる傾向があります。オフィス利用のできる物件は、総じて駅前・駅近・都市部など好立地にあり、共用部や共用サービスが充実していることから、住居契約の物件と比べて賃料が高額です。また、保証料や敷金が賃料の半年〜1年分となっていることも少なくありません。一方、SOHO物件はエリアを問わず賃貸されており、管理コストも抑えられるうえに、保証料や敷金は賃料の1〜2ヵ月分ほどが相場です。
一般的な賃貸物件の初期費用について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
自宅の賃料を経費に計上できる
SOHO物件は部屋の一部を事務所として使用するため、家事按分ルールに基づいた割合で家賃を経費に計上できます。あくまで計上する範囲は事務所として使用している分に限られますが、個人事業主なら所得税や住民税、法人なら法人所得税や法人住民税の節税になります。
利用時間の制約がない
自宅をSOHO事務所にするメリットのひとつに、利用時間の制約がなくなる点があります。
オフィス利用できる物件の多くは、24時間利用することはできません。24時間利用できたとしても、早朝や深夜は裏口しか空いていなかったり、事前の申請が必要だったりすることもあります。一方、SOHO物件は居住用としても利用されているため、24時間出入り自由です。好きな時間に働き始め、働く時間が制限されることはありません。自分が最もパフォーマンスを発揮する働き方を自由に選べるのは、SOHOならではの魅力といえるでしょう。

SOHOは自宅兼事務所のことです。オフィスよりも賃料や初期費用が安め、利用時間の制約がない点も魅力ですが、何よりも大きな魅力は家事案分で家賃を経費に計上できる点です。経費に計上することで節税効果を得られる点は魅力的と言えるでしょう。
SOHO物件のデメリット

SOHO物件には多くのメリットがある一方、契約形態や事業規模に起因するデメリットも存在します。SOHOのために選んだ物件が理想の働き方を阻害する場合もありますので、デメリットを知ったうえで利用する物件を選びましょう。
法人登記できないケースがある
SOHO物件は住居契約を結ぶ物件であるため、法人登記ができない場合があります。
法人を設立するには、本店所在地を約款で定めたうえで登記しなければなりません。事業を行う場所や住んでいる場所が法人登記できない場合、別途、法人登記が可能なバーチャルオフィスを借り入れるなどしなければならないため、余計な経費と手間がかかります。
一括りにSOHO物件といっても、大家さんによって賃貸経営の方針が異なります。事務所寄りの物件として経営したいオーナーならば法人登記を認めてくれるかもしれませんが、住居として賃貸経営したい大家さんは、事務所としての利用も歓迎しないかもしれません。
法人登記の可否は大家さんの方針次第ですので、法人登記が必要な事業を展開する予定があるなら、賃貸契約を結ぶ前に法人登記の可否を確認しておきましょう。
ビジネスに必要な設備や備品は自分で用意する必要がある
オフィス利用できる物件には、ロッカーや机、椅子、コピー機などが備え付けられていることもありますが、SOHO物件で仕事をするとなると、設備や備品は自前で用意する必要があります。
特に事業を開始した直後は揃える設備が多く、その他の出費も多くなりやすい時期のため、働く環境を整備することが難しい場合もあるでしょう。
業務・業種が限られる
SOHO物件は住宅契約であるため、契約上認められない業務や使い方があります。禁止事項に指定されやすいのが、不特定多数の人物の出入りや騒音、振動を出すような行為です。そのため飲食店のような一般消費者が多数出入りする事業や、トレーニングジムやダンススクールといった騒音・振動を出しやすい事業は、SOHOで展開できない可能性があります。
なお、オンラインの会議や電話など、テレワークにともなう音や声程度であれば問題になりにくいため、来客がないWeb系フリーランスや、外出先での打ち合わせが多い一人社長などはSOHOの利用が向いています。

自宅兼事務所であるSOHOは、業務・業種が限られる、法人登記できないケースがあるといったようにさまざまな制限の影響を受ける可能性があります。また、設備が揃っているケースが多いレンタルオフィスとは違い、設備を揃えることに多くの初期費用がかかる可能性があるため、総合的に判断することが大切です。
SOHO物件と賃貸オフィスの比較表
ここまでの話を前提に、SOHO物件と賃貸オフィスの用途やメリット・デメリットを比較しましょう。
SOHO物件 | 賃貸オフィス | |
---|---|---|
契約形態 | 住居契約 | 事務所契約 |
用途 | 住居兼事務所 | 事務所に限定 |
入居費用 | 比較的安価 | 比較的高額 |
法人登記 | 要相談 | 可 |
事務所の表札・看板 | 出せない | 出せる |
不特定多数の人物の出入り | 原則認められない | 原則認められる |
賃料の経費計上 | 家事按分の範囲に限定 | 計上できる |
賃料への消費税課税 | 課税されない | 課税される |
契約形態・用途
繰り返しになりますが、SOHO物件は住居契約が結ばれる賃貸物件であり、基本的な契約内容は住宅に準じています。大家さんの意向で限定的に物件内での事業活動が認められていますが、その許可は一部の行為に限定されています。
法人登記・事務所の表札・看板
賃貸オフィスは事務所としての契約を結ぶ物件なので、用途も事務所としての使用に限られます。原則として住居としての利用はできませんが、不特定多数の顧客・関係者の出入りや表札・看板の掲示、法人登記が可能であるため、さまざまな事業を展開する拠点として利用できます。
SOHO物件の用途はあくまで住宅がメインです。そのため他の住民に迷惑となるような使い方は認められず、顧客の出入りや看板の掲示は原則不可とされます。また、一部のSOHO物件では法人登記が認められる場合がありますが、住居本来の用途とは外れた使い方になりますので、許可を得られるかどうかは大家さんの意向に委ねられます。
賃料の経費計上・消費税課税
会計処理や税金の面にもSOHOと賃貸オフィスには大きな違いがあります。
SOHO物件において事務所として利用する範囲は、間取りの中でも一部の空間に限定されるため、会計処理上は家賃のすべてを経費計上することは認められません。事務所として使用する範囲を家事按分した分だけ経費として認められます。また、SOHO物件で使用する水道光熱費やインターネット回線費用も、事業で利用した割合しか経費へ組入れられません。
賃貸オフィスは事業活動のために借りる賃貸物件なので、家賃は全額経費として計上できます。また賃貸オフィスで契約している水道光熱費なども家事按分の必要はなく、全額が経費計上の対象です。
なお、賃貸借契約における住居契約は税制上の消費活動には当たらないため、家賃に対する消費税の課税はありません。一方の賃貸オフィスは事業活動にともなう消費活動に該当し、消費税の課税対象となります。
SOHO物件に向いている間取りとは

SOHOとして使う物件は、居住空間から独立したSOHO用のスペースを確保できる間取りをおすすめします。
住居向けの物件をSOHOに活用する場合、生活空間と業務空間がひとつの物件の中に共存する形になります。たとえばワンルームや1Kなど、居住空間と仕事をするスペースが同じ部屋になる間取りだと、仕事とプライベートの境目を見失いやすく、常に仕事場にいるような心境になりかねません。常に仕事のことだけを考えたいような人はあまり意識する必要はありませんが、オン・オフの切り替えを大切にしたい人ほど、仕事環境とプライベート空間がお互いに干渉しない間取りの物件を選ぶとよいでしょう。
また、SOHO用スペースに来客がある可能性を考えると、玄関から居住空間を通らずにSOHO用スペースに向かえる間取りが理想的です。
東京のSOHO向け物件の家賃相場

実際にSOHO向けの物件を借りる場合、どの程度の家賃を考えればよいのでしょうか。
「goo住宅・不動産」を参考に、東京23区における1LDK・2K・2DK物件の家賃相場をご紹介します。
単位:万円
1LDK・2K・2DK
区名 | アパート | マンション |
---|---|---|
千代田区 | - | 20.0 |
中央区 | 14.8 | 19.1 |
港区 | 17.3 | 23.0 |
新宿区 | 14.4 | 18.0 |
文京区 | 12.5 | 18.2 |
台東区 | 14.4 | 16.6 |
墨田区 | 12.4 | 15.5 |
江東区 | 11.9 | 15.3 |
品川区 | 13.1 | 17.2 |
目黒区 | 12.2 | 18.8 |
大田区 | 11.2 | 13.2 |
世田谷区 | 12.2 | 15.0 |
渋谷区 | 13.5 | 20.0 |
中野区 | 12.3 | 14.3 |
杉並区 | 11.8 | 14.0 |
豊島区 | 11.7 | 14.3 |
北区 | 10.2 | 13.4 |
荒川区 | 13.3 | 13.9 |
板橋区 | 10.5 | 11.8 |
練馬区 | 11.3 | 11.7 |
足立区 | 10.2 | 9.9 |
葛飾区 | 9.4 | 8.9 |
江戸川区 | 9.5 | 10.8 |
※goo住宅・不動産 東京都の家賃相場
※2024年2月26日時点の情報を参照しています
23区内ではアパート・マンションともに港区が最高となりました。その後は中央区、渋谷区、新宿区といった都内中央付近の区が続きます。
一方、足立区、江戸川区、葛飾区といった東部エリアは相場が落ち着いています。同じ東京23区でもエリアによって相場は大きく異なるので、SOHOの事務所を構える際にはビジネス内容とビジネス規模に応じたエリア内で物件を選択するとよいでしょう。
まとめ
「Small Office Home Office」の頭文字から生まれたSOHOは、個人規模のビジネスへの関心が強まる現代に適した事業、またはそうした事業向けの物件を指す言葉です。ビジネスの多様化が進む昨今では、自由な働き方を実現する手段のひとつとして注目を集めています。
SOHOは手軽に事務所を構えられるメリットがある一方、法人登記不可などのデメリットもあります。事務所選びを検討する際には、将来に向けて展開したいビジネスの方向性を踏まえ、理想のビジネスを実現できる物件を選びましょう。
監修者プロフィール

- 矢野 翔一
- 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。