住まいのコラム

分譲賃貸とは?
普通の賃貸との違いとメリット・デメリットを解説

最終更新日:

監修者
高野 友樹
公認不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
分譲賃貸とはどのような物件?デメリットはある?
分譲賃貸とは分譲マンションの一室が賃貸物件として貸し出されている物件のことです。共用設備や施設が充実している、住民のマナーが良いといったメリットがある一方、賃料は高め、契約期間に制限がある場合がある、オーナーが賃貸管理に慣れていないなどのデメリットもあります。

物件を探していると「分譲賃貸」という表記を見かけることがあります。通常の賃貸物件と何が違うのか気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、分譲賃貸とは何か、どのようなメリット・デメリットがあるのかを解説します。併せて、借りる場合の注意点や探し方のコツなども見ていきましょう。

分譲賃貸とは分譲マンションが賃貸として貸し出されたもの

分譲賃貸とは、分譲マンションの一部屋が賃貸物件として貸し出されている物件のことです。賃貸用に個人が購入した場合や、一時的に住めなくなったことで賃貸物件として貸し出している場合などがあります。

賃貸物件は、一棟まるごとをオーナーや事業者が所有しており、全戸が賃貸向けに貸し出されている形が一般的です。しかし分譲賃貸は、1棟まるごとが賃貸物件ではなく分譲住宅と混在するほか、部屋ごとにオーナーが異なっていることが多く、それによるメリット・デメリットがあります。

分譲マンションが賃貸として貸し出される理由とは?

分譲マンションが賃貸物件として貸し出されて、分譲賃貸となるのはどのような場合なのでしょうか。理由としては主に下記の3つが挙げられます。

オーナーが一時的に住めない

もともとはオーナーが住んでいたけれども転勤などの事情によって一時的に住めなくなってしまい、分譲賃貸として貸し出すことがあります。転勤から戻ってくる時期が決まっていて、3年程度などオーナーが戻ってくるまでの期間限定で貸し出されていることが多いケースです。

投資目的の購入

オーナーが自分で住むためではなく、最初から賃貸で賃料を得ることを目的に、資産として分譲マンションを購入し、分譲賃貸としているケースもあります。

分譲で売却予定だったが買手がつかず賃貸にしている

不動産会社などがオーナーの場合は、分譲予定だったマンションに買手がつかなかったため、販売から賃貸に切り替えて、分譲賃貸として管理しているケースがあります。

分譲賃貸のメリット

室内の設備が充実している

賃貸物件は、貸し出して利益を得るのが主目的のため、建設時からマンション設備の価格をなるべく抑えて設計する傾向があります。一方、分譲賃貸の場合、購入者がずっと住むことを想定して作られているので、室内の設備が充実している傾向です。
たとえば、床暖房や浴室の追い焚き機能のほか、キッチンの食洗機や、生ごみを粉砕しながら下水に流すディスポーザーがついているなど、生活に便利な設備が期待できます。

共用の設備や施設も充実している

分譲賃貸の場合、通常の賃貸用のマンションと比べて、マンション全体の設備も充実している傾向があります。たとえば、広いロビーや宅配ボックスがあったり、共用施設としてのゲストルームやパーティールームがついていたりします。

管理人やコンシェルジュがいる

マンションにもよりますが、管理人やコンシェルジュがいる場合も多くあります。見回りや共用部の清掃が行き届いているなど、管理体制がしっかりしているので、マンションの環境が良好に保たれています。

耐震・耐火性や防音性が高い

賃貸用に作られたマンションに比べて建物の構造がしっかりしているため、耐震性や耐火性が高く、安心感があります。防音性も高い傾向で、音漏れや騒音トラブルの心配も軽減できます。

住民のマナーが良い

分譲住宅の場合、賃貸のように一時的な住まいではなく、長く居住することを前提に購入している人が多くなります。共用設備などをきれいに使おうという意識が高く、マンション全体の住民のマナーが良い傾向があります。

分譲マンションは長期居住者を前提として設計、建築しているため、賃貸マンションに比べてマンションの外観にも凝っているケースが多々あります。家に帰ったときに見る外観で気分があがるマンションに住みたいという人には、分譲賃貸はおすすめです。

分譲賃貸のデメリット

分譲賃貸にはデメリットも存在します。後から「こんなはずじゃなかった」とならないように、デメリットについてもチェックしておきましょう。

契約期間に制限がある

オーナーがもともと自宅用に購入した物件を、転勤などで不在の間だけ賃貸にしている場合は、契約期間に制限がある「定期借家契約」の場合があります。

通常の賃貸契約は契約更新が可能で、長期間にわたる家賃滞納などの理由がない限り、借主が更新を希望すれば、貸主から契約を破棄することはできません。一方で、定期借家契約は契約の更新がなく、原則として借主から途中解約をすることもできません。

ただし、制約が多い分、通常の賃貸契約に比べれば家賃が割安な傾向もあるので、定期借家契約の場合は、契約期間が自分のニーズに合うかどうかを検討する必要があります。

物件数が少ない

通常の賃貸の物件総数に対して、分譲賃貸は数が少ないのが現状です。分譲賃貸で絞ってしまうと物件やエリアの選択肢を狭めてしまうほか、人気物件は早い者勝ちになる傾向があります。

オーナーとの規約がある

分譲賃貸は、マンション全体の規約に加えて、オーナーとのあいだで取り決めた規約も守らなくてはいけません。たとえば、マンションとしてはペット可の物件でも、オーナーとの取り決めでペットが不可であれば、ペットを飼うと契約違反になります。
このように、マンションの規約とオーナーとのあいだで取り決めた規約が異なる場合、混乱する可能性があります。

家賃が比較的高い

分譲賃貸は、通常の賃貸マンションより設備などのグレードが高いことから、家賃は高くなりがちです。オーナーが住宅ローンで物件を購入していれば、月々の返済額は決まっているので、値引き交渉も難しいことが多いです。

設備の故障・交換の対応が遅いことがある

賃貸物件で設備などが故障した場合は、オーナーや管理会社に連絡して修理してもらうのが基本です。分譲賃貸では、オーナーが賃貸物件の管理になれていないことも多く、トラブルへの対応が遅れる場合があります。
事前に、設備の故障などのトラブルがあった場合はどのような対応になるのか、確認しておくのがおすすめです。

分譲賃貸は基本的に、1部屋1部屋に異なる所有者がいます。そのため、その部屋のオーナーがどんな人なのかは、マンション自体の口コミを見てもわかりません。契約の前にはオーナーがどのような人か、仲介の不動産会社などにしっかりと確認しておきましょう。

分譲賃貸のトラブルを防ぐポイント

分譲賃貸で起こるトラブルの多くは、「マンションの規約は守っていたが、オーナーとの契約内容に違反してしまった」「トラブル発生時のオーナーの対応が遅い」など、デメリットにまつわるものがほとんどです。トラブルを防ぐためには、下記のポイントに注意しておくとよいでしょう。

契約内容や規約をしっかりチェックする

契約を結ぶ前に、マンションの規約とオーナーとの規約の双方をしっかりチェックし、双方の規約の相違点や禁止事項を確認しておきます。焼き肉などのにおいのある料理は室内でできるのか、ペットは飼えるのか、喫煙はできるのかなど、譲れない項目がある場合は、特に念入りにチェックが必要です。

たとえば、たばこのにおいが苦手で禁煙物件に住みたい場合、オーナーとの契約では禁煙となっていても、物件全体としては喫煙OKなら、近隣のベランダなどからたばこの煙が流れてくることはありえます。

オーナーとのあいだに管理会社が入るか確認

オーナーが直接物件を管理するのではなく、あいだに管理会社が入っている場合は、設備などのトラブル時に管理会社にスムーズに対応してもらえます。家賃の支払いなども管理会社に行うこととなり、直接オーナーとやりとりせずにすむので、オーナーが物件の管理に慣れていなくても特に問題ありません。管理会社があいだに入るのかどうか、契約前に確認してみましょう。

退去時の原状回復の範囲を確認

物件を退去する際、借主は部屋を元の状態にして返還する、原状回復義務があります。原状回復の範囲は借主が故意または過失によって壊したものの修復や、汚れの除去などにとどまり、経年劣化による損耗は対象となりません。
たとえば、借主が不注意で重いものを落として床を傷つけた場合は修復義務がありますが、経年によって生じる床の日焼けまで修復する義務はありません。また、借主の責任とはいえない事由による傷や汚れも、修復義務はありません。

しかし、オーナーが不動産賃貸について詳しくない場合、原状回復の認識が違っており、本来は借主が負担すべきではない分まで原状回復を求められる場合があります。そのようなトラブルにならないように、契約時に原状回復の範囲を確認しておくのがおすすめです。

分譲賃貸の探し方のコツ

分譲賃貸を探すには、賃貸情報サイトなどで「分譲タイプ」を選んで絞り込みをかける、賃貸情報サイトの「分譲賃貸特集」から探す、希望するエリアの不動産会社に相談してみるなどの方法があります。

分譲賃貸の物件数は少なく、良い物件はなかなか空きがでないものですが、希望に近い物件を見つけたからといって、焦って契約するのは禁物です。契約の前に、家賃に見合った設備かどうかを検討し、契約期間やマンション規約とオーナーとの規約の違い、あいだに入る管理会社の有無、原状回復義務の認識なども確認した上で、契約するようにしましょう。

希望エリアの不動産会社に、分譲賃貸を検討していることを伝えておくと、売却依頼を受けていた分譲マンションのオーナーに賃貸での貸し出しを打診してくれるケースもあります。タイミングによっては、まだ不動産情報サイトなどに載ってない、掘り出し物件を借りられるケースもあります。

まとめ

分譲賃貸には、設備や施設が充実している、住民のマナーが良いといったメリットがある一方、物件数が少ない、賃料が高め、オーナーが賃貸管理に慣れていない場合があるといったデメリットもあります。
分譲賃貸を探す場合は、メリット・デメリットを踏まえつつ、家賃や設備などの譲れない条件と照らし合わせて検討しましょう。

監修者プロフィール 高野 友樹 公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
不動産会社にて600件以上の仲介、6000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は株式会社高野不動産コンサルティングを設立し、不動産コンサルティングを行う。

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