住まいのコラム

注目されるDIY可能な賃貸住宅。
借りる前に知っておきたい注意点とは?

最終更新日:

監修者
矢野 翔一
2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
DIY可能な賃貸住宅とは?
基本的に賃貸住宅で可能なDIYは限られますが、一部、自由にDIYできる物件が見られます。DIY可能としている理由は、家主に修繕やリフォームの手間や費用の負担がかからないからです。DIY可能な賃貸住宅を選ぶ場合は、入居後にトラブルにならないよう、できる改修の範囲や原状回復の扱いについてあらかじめ確認しておきましょう。

DIYとは「Do It Yourself」の略で、自らリフォームや家具作りを楽しむことを指します。DIYなら安価に、自分好みに部屋をカスタマイズできるため、近年、人気が高まっています。

人から借りて住む賃貸住宅は、自作の家具などを置くことはできても、棚を造り付けたり、壁紙を変えたりすることは基本的にできません。しかし、近年では入居者によるDIYが認められている賃貸住宅も増えてきています。

賃貸住宅ってDIY可能なの?

賃貸住宅の入居者には「原状回復」の義務があります。これは、民法で定められていることです。原状回復とは、退去時に借りた当時の状態に回復させるということ。つまり基本的には、原状回復できる範囲でなければ、賃貸住宅のDIYや修繕などはできません。

しかし、民法は任意規定であることから、契約上、DIY等に関する取り決めがあれば、それに準拠します。

「DIY型賃貸住宅」「貸主負担DIY型」って何?

「DIY型賃貸住宅」や「貸主負担DIY型」とは、入居者によるDIYが認められている物件です。

DIY可能な賃貸住宅とは

DIY型賃貸住宅とは、入居者の意向で改修等ができる賃貸住宅を指します。近年では、国を挙げてDIY型賃貸住宅の普及に取り組んでいます。その理由は、賃貸住宅の流通促進のためです。

住宅は、基本的に経年とともに劣化していき、価値を落としていきます。価値を維持していくには適切な修繕が求められますが、家主は賃貸経営で利益を出すことを目的としているため家主の負担で十分にメンテナンスできているわけではありません。一方、入居者には、居住環境をよくしたいというニーズがあります。DIY型賃貸住宅は、このような賃貸住宅の課題を解決し、入居者のニーズを満たすことができる物件です。

とはいえ、入居者の意向で自由に改修できるとは限りません。どこまで賃貸住宅に手を加えられるかは、家主の意向次第です。

一般的な賃貸住宅との違い

出典:国土交通省

DIY型賃貸住宅は、一般的な賃貸住宅と比べて賃料は安めに設定されてます。それは、修繕やリフォームが入居者の負担となるからです。

入居者は基本的に、まず「こんな改修をしたい」と家主に提案し、許可が得られればDIYなど改修に着手できます。契約時には、賃貸借契約に加え、DIY工事等の詳細な取り決めに関する合意書が締結されるケースもあります。

DIY型賃貸住宅に住んでから退去するまでの流れ

DIY型賃貸住宅に住んでから退去するまでの流れは、次のとおりです。

(1)物件選び
(2)賃貸借契約・工事申請
(3)入居
(4)DIY・リフォーム・修繕などを実施
(5)退去(原状回復義務なしかは契約内容次第)

一般的な賃貸住宅と異なるのは、契約時にDIYやリフォームの申請を出すことです。DIY可能としている賃貸住宅の多くは入居者に原状回復義務はありませんが、必ず事前に確認してください。

DIY型賃貸住宅に住むメリット

・自分好みにカスタマイズできる
・持ち家感覚で賃貸住宅に住める
・賃料が安い

DIY型賃貸住宅の最大のメリットは、入居者が自分の好みに合わせて修繕や改修を加えられることです。自分がこだわって手を加えることで、住まいに対する思い入れも深まり、持ち家感覚で居住することができます。

DIYやリフォームの費用を負担するのは入居者ですが、その分、家賃は相場より安めに設定されていることもメリットのひとつです。

DIY型賃貸住宅に住むデメリット

・設備や建具のメンテナンスが行き届いていないことがある
・工事費用は自己負担
・自由自在にDIYできるわけではない

DIY型賃貸住宅の中には、要メンテナンス、要修繕の状態の物件も見られます。「自分好みのDIYができる」というのはメリットですが、見方を変えれば、自分で費用を負担して修繕しなければならないということです。

また、あくまで所有権は家主にあるため、どのようなDIYでも自由にできるとは限りません。

DIYの費用は自己負担です。賃料が安く設定されているといっても、劣化が進行している物件ではDIY費用が大きくなり、契約期間が短い場合は割高な物件になる可能性もあるので注意してください。

賃貸住宅でもここまでできる!DIY事例

DIYでも、まるでリフォームしたかのように大きく部屋のイメージを変えることができます。最近では、DIYグッズも多く販売されています。DIYの様子やビフォー・アフターもSNS上で多く見ることができるため、参考にしてみるとよいでしょう。

洗面台をおしゃれにDIY

清潔でおしゃれな洗面台があれば、朝の身支度もスムーズになり、テンションも高まります。洗面台を交換するとなると数十万円かかりますが、もっと少ない予算でリメイクすることは可能です。たとえば、無機質な洗面台の周りをタイルでデコレーションしたり、鏡を変えてみたりするだけで、印象は大きく変えられます。

棚の造作ならDIY初心者もチャレンジしやすい

収納が少ないお部屋におすすめなのが、棚の造作です。置くタイプの棚も重宝しますが、スペースが少ない場合は、壁付の棚を作れば空間を有効活用できるでしょう。また、飾り棚としても利用できます。

DIYで使い勝手の良いキッチンに

料理好きなら、キッチンにもこだわりたいところ。キッチンの収納が少ない場合は、シンク上のスペースを有効活用し、棚や戸棚を作ってみましょう。スペースに余裕があるなら、お手製のカップボードやカウンターを作って配置するのもおすすめです。

DIY可能な賃貸住宅に住むときの注意点

「DIY可能」とされていても、どのようなDIYができるのか、退去時に原状回復の必要があるのかは物件ごとに異なります。DIY可能の物件であれば、自由自在に手を加えられて、そのまま退去できるとは限らないためご注意ください。

以下で、DIY物件を検討する際の注意点を解説します。

どこまで手を入れていいかあらかじめ確認する

DIY可能とされていても、可能な改修内容が細かく規定されている場合もあります。つまり、DIYが「可能」であっても「自由」ではない可能性もあるのです。入居後、トラブルに発展したり、自分がしたかったDIYができなくなってしまったりすることのないよう、入居前にはどこまで手を入れていいのか確認しておきましょう。

「内装制限」「管理規約」を理解しておく

自由にDIYできる物件だとしても「内装制限」を超えた改修はできません。内装制限とは、安全のため、建築基準法で定められた壁や天井の仕上げ材の制限です。内装制限によって、壁・天井に無垢材や輸入品のクロスなどが使用できないことがあります。内装制限の対象となるのは、基本的に天井と床から1.2m以下を除く壁・天井です。

また、マンションの場合は、管理規約でリフォーム内容が制限されているケースもあります。家主がOKだったとしても、できない改修も少なくありません。従って、賃貸借契約だけでなく、不動産会社の担当者に法令上、規約上、どんな改修ができるのか聞いておくと良いでしょう。

退去時の原状回復義務についても確認しておく

DIY可能であったとしても、退去時の原状回復の義務は免除されないケースもあります。たとえば、棚を造作で作って取り付けた場合、退去時に撤去しなければならないのか、そのままでいいのかは契約内容次第ということです。また、手を加えた部分ではないところで劣化や損傷が見られた場合の扱いはどうなるのかについても、併せて入居前に確認しておきましょう。

借主は原状回復義務を果たすのが基本です。DIYによって設置したものは貸主の許可があればそのままにできますが、許可がない場合は撤去しなくてはならず、原状回復費用が高額になる可能性があるので注意してください。

まとめ

DIY可能な賃貸住宅の多くは、退去時の原状回復を不要としており、入居者の好みの部屋にアレンジできます。歴史を感じる築古物件も、壁紙や照明を変えたり、好みの家具や雑貨を配置したりすれば、おしゃれな部屋に様変わりします。入居前に、できる改修・できない改修をしっかり確認し、DIYを楽しみましょう。

監修者プロフィール 矢野 翔一 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

他のカテゴリからコラム記事を探す

  • 賃貸
    賃貸物件探しに役立つ間取りや各種費用の詳細、物件選びのコツも紹介。
  • 引越し
    引越しに伴う手続きや引越し前にやっておくとよいことを伝授。
  • マンション購入
    新築から中古まで、マンション購入で失敗しないためのお役立ち情報。
  • 戸建て購入
    新築or中古?ローンは?物件の探し方は?戸建て購入の疑問を解決。