住まいのコラム

賃貸アパートにカビが発生してしまったときの退去費用はいくら?

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
賃貸アパートのカビ除去にはいくらくらいの費用が必要?
カビ除去の相場は1平方メートルあたり1500~3000円程度で、カビ防止のコーティングも同額程度です。除去する範囲によって比例して、料金が上がります。業者によっては部屋単位で料金を設定しているので、複数の業者に見積もりをとるのがおすすめです。

高温多湿の日本は、住まいにカビが生えやすい環境といわれています。特に湿度が高い夏場は自然とカビが生える条件が揃ってしまうため、気をつけながら暮らしていてもカビの発生を避けられないケースがあります。

賃貸アパートから退去する際、カビの生え具合によっては原状回復費用を請求されることも珍しくありません。思わぬ出費に繋がってしまうカビを防ぐためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

今回は賃貸アパートからの退去時に支払うカビの除去費用の相場と、カビを発生させないための対策をご紹介します。

賃貸アパートにカビが発生してしまったときの退去費用の相場

アパートの室内に生えたカビの除去は、程度によって料金が大きく異なります。少しブラシでこすれば落ちる程度のカビであればハウスクリーニングで対応できますが、壁の材質や範囲、カビの深さによっては専門のカビ取り業者に依頼する必要があります。

一般的なカビ除去の費用は、対応する範囲で料金が決まります。除去費用の相場は1平方メートルあたり1500~3000円程度。カビ防止のコーティングをする場合には、除去費用と同額程度の1平方メートルあたり1500~3000円程度が加算されます。

なお業者によっては、1平方メートル単位ではなく部屋単位で料金を設定しています。浴室全体にカビが広がっているような場合には割安になる場合もありますが、キッチンの極一部だけ処理してほしいような時には割高になるかもしれません。

カビ取りを依頼する際には、できるだけ複数の業者に見積もりを依頼し、適切な料金設定の業者を選ぶとよいでしょう。

退去費用は誰が負担するの?

賃貸アパートで発生したカビに関する原状回復費用は、原則として国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従って負担者が決まります。すべてのケースにおいて入居者が費用負担するわけではなく、カビが発生した理由次第では家主負担になる場合もあります。

入居者負担となるケース

入居者の住み方によって自然損耗以上の損害が発生した場合の原状回復費用は、原則として入居者が負担します。カビについても同様であり、もし入居者が適切な掃除や手入れを怠ったために発生したカビの除去費用は、入居者が負担しなければなりません。

通常のハウスクリーニングでは対応できないカビの除去を専門業者に依頼する場合、原則として料金はハウスクリーニング費用に含まれません。費用は前述の通りカビが生えた範囲によって決まりますが、広がり具合によっては敷金を超えた費用を請求されることもあるでしょう。

家主負担となるケース

入居者が住んでいる間の自然損耗に対する原状回復費用は、原則として家主が負担します。入居者がどれだけ気をつけてもカビが生えてしまうような構造なら、費用の一部または全部が家主負担になるでしょう。

結露が生じやすい断熱性の低い窓や、吸湿性に欠けるコンクリート製の壁などは、家主の責任が問われやすい構造です。入居者側で十分な対策をしていたにも関わらずカビが発生したようなら、家主側の負担によるカビ除去を申し入れてみましょう。

国交省によるガイドラインは、あくまで「目安」や「基本法」的な立ち位置であり、どちらが退去費用を負担するかについては家主と居住者の契約次第です。入居前には、どんな傷や汚れ、劣化が退去費用に該当するのか、また敷金の扱いはどうなるのかをあらかじめ聞いておき、契約書に明記されているか確認しておきましょう。

アパートの中でカビが生えやすい場所はどこ?

賃貸アパートは多かれ少なかれカビが発生します。構造次第ではある程度カビの発生を防ぎやすくなりますが、次に紹介するような場所には注意が必要です。

浴室

浴室は家の中で最も湿気が多く、カビが発生しやすい場所です。人の垢や皮脂を養分とする赤カビが発生しやすく、さらに赤カビをエサとして黒カビが発生するため、常に清潔に保つことが望まれます。

クローゼット・押し入れ・下駄箱

クローゼットや押し入れ、下駄箱といった収納は湿気がこもりやすいため、わずかな期間でカビが発生します。特に扉を閉めたままの間は空気が循環せず、湿気が一ヵ所に留まり続けてしまいますので、あっという間にカビが広がってしまうでしょう。

窓際

結露が発生しやすい窓際は、カビの温床になりやすい場所です。窓の外と内の寒暖差が激しい冬場は特に結露が激しいため、窓枠の下部に根の深いカビが発生しやすくなります。また結露が原因でカーテンにカビが繁殖してしまい、洗濯しても落ちない汚れになるケースがあります。

家具の裏側

普段動かす機会がない家具の裏側も、カビが生えやすい場所として注意が必要です。壁と家具が密着している場所は空気が通り抜けしないため、湿気が乾かないままカビを発生させてしまうでしょう。大きな家具ほど裏側を見る機会がありませんので、引越しの時に初めて広がったカビの存在に気がつくことも珍しくありません。

エアコン

部屋の除湿をしてくれるエアコンは、内部にカビを発生させやすい家電の筆頭です。夏場は室内と屋外の寒暖差で生まれた結露がエアコン内部にたまるため、自然とカビが発生しやすくなります。表面にカビが見えていないとしても、酸っぱい臭いの空気が出るようになったらカビが繁殖している証拠です。

カビの発生を抑える方法は?

カビが生えた場所によっては専門業者に依頼しなければならないため、費用面でも大きな負担になります。一方で、カビの除去は難しくても、入居者本人によるカビの予防は可能です。わずかな手間で効果的にカビを抑えられますので、ぜひチャレンジしてみてください。

定期的に換気する

カビの予防に効果的な方法のひとつが定期的な換気です。カビは60%未満の湿度の中ではほぼ活動しないため、室内に湿気をためないようにするのが根本的な対策になります。

晴れている日には1日に数回窓を開け、部屋の空気を入れ換えるのがおすすめです。換気の際には部屋の対角にある窓やドアを開けておくと、空気が流れやすくなり換気の効率がよくなります。風がなく空気が流れていかないようなら、扇風機やサーキュレーターを使って空気を循環させるとよいでしょう。

換気は居室だけでなく、浴室や収納も忘れずに行いましょう。浴室の換気扇を入浴後に2~3時間回す習慣をつけておくと、浴室のカビを防止しやすくなります。クローゼットや下駄箱の湿気対策には、雨で濡れた服や靴をすぐに仕舞わないようにするだけでも十分高価が期待できます。

こまめに清掃する

カビは室内のホコリや汚れをエサに繁殖します。掃除されておらずホコリがたまっている部屋は、カビにとって非常に繁殖しやすい環境です。裏を返せば、室内を清潔な状態に保つことが有効なカビ対策になります。

定期的に掃除機をかけたり、雑巾掛けをしたりといった、基本的な掃除をするだけでもカビ対策には有効です。カビが懸念される場所だけでなく、棚や机の上といったカビが生えにくい場所も清潔に保つことで、カビが生えやすい場所にホコリがたまることを予防できます。

さらに根本的にカビの発生を防ぎたいなら、定期的なアルコール消毒がおすすめです。水拭きしやすい窓やフローリングはもちろん、壁紙や畳のカビ防止も期待できます。なお、カビ防止に使うアルコール除菌液は、最も効果が期待できる度数70~80%の商品を選んでください。

調湿する

カビ防止には換気が効果的であるとご紹介しましたが、常に家中全てを換気し続けるのは困難です。特に収納や窓のない部屋は空気が循環しにくく、扉を開けているだけでは十分なカビ対策にならない場合があります。

狭い空間の湿度の調整には、市販の除湿剤が有効です。クローゼット用の吊り下げタイプや押入れ向けの置き型タイプなど、除湿したい場所に応じた種類の除湿剤を選びましょう。大容量タイプは吸水性が高く、長期間設置したままにできるため便利です。

防カビ剤を設置する

カビを防ぐ方法のひとつが、薬剤による繁殖の防止です。防カビ剤はあらゆる化学反応を利用してカビを防ぎます。

防カビ剤は銀・銅・酸化チタンなどの無機系、アルコールなどの有機系、動物・植物由来の天然物系に分類されます。効果が高く安価な有機系、殺菌できる微生物の範囲が広い無機系、安全性に優れた天然物系など、特徴はさまざまです。種類によって使用できる場所や対象物が変わりますので、カビを防ぎたい場所に応じた防カビ剤を選ぶ必要があるでしょう。

エアコンを掃除する

エアコンのカビを効果的に防止するには、小まめな掃除とお手入れが有効です。本体カバー下のフィルターはエアコン内部にホコリが侵入するのを防ぐ部品です。フィルターが汚れるとエアコン内部の空気が循環しにくくなるため、内部にカビが繁殖しやすくなります。また、フィルターにホコリがたまるとエアコンの効きが悪くなりますので、2週間に1回はホコリを取り除くようにしましょう。

風の吹き出し口もカビが発生しやすい部品のひとつです。吹き出し口にカビが残っていると、エアコンの風と一緒にカビを室内に散乱させてしまいますので、こちらも小まめな掃除が望まれます。特に掃除のために部品を外す必要はありませんので、カビが発生する前に汚れを落とす習慣をつけるとよいでしょう。

内部に発生するカビを防止するには、定期的な送風運転が効果的です。冷房や除湿運転でたまった内部の結露を送風運転で乾燥させ、カビの発生を防ぎましょう。冷房や除湿運転を停止した後が効果的です。エアコンを頻繁に使わない季節でも、月1回程度の送風運転を行いましょう。

退去費用は、場合によって数万円にもなります。カビだけでなく、経年劣化を超える汚れや破損などの清掃・補修費も基本的には退去費用として請求されてしまうため、日頃から「丁寧に住む」ことを心がけましょう。

発生してしまったカビを自分で除する方法

カビが発生してしまった場合は、次の方法で一定程度、除去することができます。ただし、除去する際には、逆に建材や建具などを傷めてしまわないように気をつけましょう。

熱湯をかける

カビの多くは、60度以上で死滅します。よって、熱湯をかけることは、カビを除去する方法のひとつとして有効です。

ただし、熱湯をかけることによって木材が反り返ったり、樹脂やコーキング材などが溶けてしまう恐れがあります。たとえば、浴室はカビが生えやすい場所ですが、排水溝の耐熱温度は60度ほどとされています。熱湯をかける際には、部位の取り扱い説明書に目を通し、お湯の温度に配慮しましょう。

布類は漂白する

カーテンなど布類にカビが見られる場合は、酵素系の漂白剤で洗浄することでカビを一定程度、除去できます。布類に付着したカビ臭も除去する効果に期待できるため、選択肢のひとつとして考えてみましょう。

ただし、漂白剤には、その名の通り色を落とす効果もあります。カビだけでなく、布類の柄や色が薄くなってしまう恐れがあるため、使用の前には目立たない場所につけてテストすることをおすすめします。

アルコールで除菌する

カビの除去とともに予防効果もあるのが、アルコールです。70%程度以上の濃度のアルコールを布に含ませたうえで拭き掃除すれば、とくに黒カビの除去・予防に効果があります。また、カビに直接、噴射するのも効果的です。掃除の際には手が荒れてしまう可能性があるため、手袋をつけましょう。

まとめ

賃貸アパートで発生したカビの処理は、退去時に行う原状回復の対象です。カビが発生した理由によっては、入居者が数万円の除去費用を負担しなければならない場合があります。

退去時の費用負担を抑えるためには、日頃からカビを発生させない対処が効果的です。カビを繁殖させないための代表的な手段は、小まめな清掃と換気です。湿気がたまりやすい収納や浴室、水気が残りやすい水回りの清掃と換気は特に注意し、カビが生えないきれいな住まいを維持するように心がけましょう。

監修者プロフィール 亀梨 奈美 株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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