住まいのコラム
仲介手数料の相場は?
計算方法や賃貸の初期費用を抑えるコツを解説
最終更新日:
- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士/宅地建物取引士/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)/相続診断士/J-REC公認不動産コンサルタント
- 賃貸の仲介手数料とは?相場はどのくらい?
- 仲介手数料とは、不動産会社が借主と貸主のあいだに入って仲介し、物件の案内や契約条件の交渉、重要事項の説明、契約の締結といった業務をしてくれたときに、その手数料として不動産会社に支払うお金です。相場としては、「家賃1ヵ月分+消費税」が一般的です。
アパートやマンションを借りるときに不動産会社に支払う仲介手数料。「家賃1ヵ月分+消費税」と設定されていることが多いのですが、中には半額や無料になるケースもあります。
仲介手数料とはそもそも何のために支払うお金なのか、その計算方法や、仲介手数料を含めた賃貸の初期費用を抑えるコツを解説します。
目次
仲介手数料とは賃貸契約で不動産会社に支払う手数料のこと
賃貸物件の契約で発生する仲介手数料とは、不動産会社が物件の案内(内見)や契約条件の交渉、重要事項の説明、契約の締結といった業務を行った際、不動産会社に対して支払う手数料を指します。部屋を探している借主と、貸主(大家)とのあいだに発生するやりとりを、不動産会社があいだに入って代行したり、手伝ったりしたときに発生するお金が仲介手数料です。
ただし、内見はしたものの物件が決まらなかったなど、最終的に契約に至らなかったときには、仲介手数料を支払う必要はありません。仲介手数料はあくまで成功報酬型のお金なので、部屋を借りることが決まって、賃貸借契約を結ぶときに支払うことになります。
仲介手数料は誰が誰に支払うお金?
仲介手数料は不動産会社に対して支払いますが、実は同じ不動産会社でも「管理会社」と「仲介会社」では役割が異なります。
管理会社は、賃貸アパートやマンションの維持管理のほか、家賃の集金と管理、契約更新手続き、退室時の原状回復やリフォームなどを行います。貸主である大家さんから支払われる管理料が主な収入源です。
一方の仲介会社は、入居希望者と大家さんとのあいだを仲介する業務を担当します。大家さんからの依頼を受けて広告などを使って空室の入居者を募集し、入居希望者に対しては条件に合った部屋を探して提案や案内をし、大家さんと入居希望者のあいだで合意が得られれば、賃貸借契約のための手続きをします。
仲介手数料はこれらの業務の対価です。仲介会社は大家から支払われる広告料や、借主から支払われる仲介手数料が主な収入源となります。
また、管理と仲介を両方行う、仲介会社兼管理会社も存在します。したがって、仲介手数料を支払う相手は、管理会社ではなく、仲介会社か仲介会社兼管理会社です。仲介手数料を支払うのは通常、借主である入居者ですが、場合によっては貸主である大家さんが支払うケースもあります。
仲介手数料は、物件情報のマッチング、物件の案内、契約条件の交渉や契約の締結、重要事項の説明など、仲介会社のさまざまな業務への対価です。物件を紹介してもらう場合には、これらの業務が実際に発生しているため、仲介手数料の強引な値引き交渉は禁物です。交渉する場合には慎重に行いましょう。
仲介手数料の計算方法・上限額
賃貸住宅の仲介の場合には、仲介手数料の上限は「家賃の1ヵ月分+消費税」と定められています。下限は決められていませんが、相場は「家賃の0.5ヵ月~1ヵ月分+消費税」です。敷金・礼金、家賃には消費税がかかりませんが、仲介手数料には消費税がかかります。
仲介手数料の計算式は以下のとおりです。
<仲介手数料0.5ヵ月分の場合の計算式>
仲介手数料=家賃(月額)×0.5(ヵ月分)×1.1(消費税10%)
<仲介手数料1ヵ月分の場合の計算式>
仲介手数料=家賃(月額)×1(ヵ月分)×1.1(消費税10%)
【家賃別】仲介手数料の相場
家賃が7万円・10万円・12万円の場合、仲介手数料の相場は以下のような金額になります。
家賃 | 仲介手数料0.5ヵ月分 | 仲介手数料1ヵ月分 |
---|---|---|
7万円 | 3万8500円 | 7万7000円 |
10万円 | 5万5000円 | 11万円 |
12万円 | 6万6000円 | 13万2000円 |
貸主が仲介手数料を支払う場合とは?
宅地建物取引業法には、不動産会社は借主と貸主のそれぞれから「賃料の0.5ヵ月分以内」を上限とした仲介手数料を受け取れると定められています。ただし、仲介の依頼者の承諾があれば、どちらか一方から賃料の1ヵ月分以内までの手数料を受けることができるとも定められています。
実際には、不動産会社が貸主(大家)から仲介手数料を受け取ることはあまりありません。入居者(借主)が仲介手数料1ヵ月分を支払うことが長年、一般的な慣習となっているためです。
ただし、規定上では貸主が仲介手数料を支払うことが可能です。こうした事情もあり、入居者が支払う仲介手数料の相場は「家賃の0.5ヵ月~1ヵ月分+消費税」となっています。
仲介手数料が安くなるケース
仲介手数料は不動産会社の業務に対する対価であり、特に物件の管理をしない仲介会社にとっては主な収入源なので、一般的には交渉による値引きはあまり期待できないというのが現状です。物件の築年数が古い、駅から遠いといったマイナスの条件があってとしても、それを理由にして仲介手数料が下がることはほとんどないでしょう。
ただし、仲介手数料の値引きはまったくないわけではありません。ここでは、具体的に仲介手数料が安くなるケースを紹介します。
不動産会社の繁忙期(12~4月)を避ける
不動産会社の繁忙期である12~4月を避けた時期に物件を探し、手数料を下げてくれれば即入居を約束するといった条件で交渉した場合などには、仲介手数料が安くなるかもしれません。空室が長期化することを避けるために、不動産会社が柔軟な対応をすることがあります。
仲介手数料半額・無料のキャンペーンを利用する
不動産会社が新規の入居者の獲得を目的として、特定の物件に対して仲介手数料半額や無料のキャンペーンを行っていることがあります。キャンペーンは期間限定で、繁忙期ではない時期に行われるのが通常です。また、空室の状態が長い物件ほど、こうしたキャンペーンの対象になる確率は高くなります。
仲介手数料に関するキャンペーンを見つけたときと、引越しのタイミングが合うのならチャンスといえます。ただし、空室が長く続いている物件には何かしら理由があるかもしれないので、その点は冷静に確認しましょう。
不動産会社の管理物件である場合
管理会社や仲介会社兼管理会社が管理している賃貸物件であれば、仲介手数料について融通がきく可能性があります。仲介手数料を安くする、またはゼロにしたとしても、主な収入源として管理料があるからです。
ほかに、不動産会社が自社で所有している物件で、不動産会社が貸主(大家)を兼ねている物件も、仲介手数料が安くなる可能性があります。
貸主と直接契約する場合
不動産会社を通さずに、直接、貸主(大家)と契約を結ぶ場合は、仲介手数料が発生しません。ただし、その場合は契約の内容を自分で確認しなければならないため、専門的な知識が必要となります。
また、大家さんに直接、物件を借りたいと申し出て交渉するのは、知り合いの紹介などがある場合以外はハードルが高いといえます。
貸主が仲介手数料を負担する場合
貸主(大家)が空室を早く埋めるためや、条件の合う入居者候補を確保するために、自己負担で仲介手数料を払うケースがあります。この場合は、入居者は仲介手数料を支払う必要がありません。
また、不動産会社が宅地建物取引業法に則り、貸主から0.5ヵ月分の仲介手数料を受け取っていて、借主の負担がそもそも0.5ヵ月分に設定されているケースもあります。
ほかに、貸主からのみ仲介手数料を受け取って、借主は無料にするというビジネスモデルを採用している不動産会社もあります。ただし、適用されるのは人気物件ではなく、貸主が入居者を早く決めたい物件が中心になる傾向があるようです。
企業の福利厚生で仲介手数料を負担する場合
一部の企業では、社員への福利厚生の一環として、仲介手数料の負担や家賃補助を行っていることがあります。勤務している企業にこうした制度がある場合には、仲介手数料の金額について気にする必要がなくなります。
仲介手数料は相場で「家賃の1ヵ月分+消費税」で、ファミリー向け物件など、家賃が高くなるほど初期費用の負担が増すこともあり、少額に抑えたいと考えるのもわかります。物件探しのスケジュールに余裕があれば、仲介手数料の割引キャンペーンを待つなど、仲介手数料が安くなるケースを狙ってみるのもよいかもしれません。
仲介手数料の値下げにこだわるデメリット
賃貸物件を借りる際の初期費用を抑えるために仲介手数料を安くしたいと考えるのは、一見理にかなっているように思えますが、デメリットも存在します。ここでは、仲介手数料の値下げにこだわることによって起こる可能性のある、デメリットについて見てみましょう。
紹介してもらう物件数が減る可能性がある
仲介手数料の値下げにこだわると、不動産会社が管理している物件や自社所有している物件、つまり、仲介手数料がなくても収益が見込める物件を優先的に紹介されることがあります。そのため、紹介してもらえる物件数が減り、多様な候補の中から選ぶ機会を失うことになるかもしれません。
値下げ交渉のあいだにほかの入居希望者に契約される
仲介手数料の値引き交渉を行っているあいだに、ほかの入居希望者によって物件を先に契約されてしまうこともあります。これは、特に人気の物件や、物件が少ないエリアで起こりやすい問題です。
トータルの価格で調整されている可能性がある
仲介手数料が安く設定されている物件でも、敷金・礼金など含めた初期費用の合計額で考えると、結局のところあまり費用が変わらないケースもあります。敷金・礼金の月数が何ヵ月分なのかなど、初期費用全体を見て判断することが必要です。
仲介手数料の値下げにこだわると、さまざまなデメリットが生じてしまうリスクもあります。希望する時期までに、条件に合った物件を借りられるように、仲介手数料だけでなく初期費用全体をみて、賃貸借契約の費用を抑えることを考えてみましょう。
仲介手数料のほかに初期費用を抑えるポイント
初期費用を抑えるには、仲介手数料だけにこだわるのではなく、敷金や礼金が無料の物件や、月数が少ない物件を選ぶ方法もおすすめです。
また、一定期間家賃が無料になるフリーレントという契約形態もあります。無料期間は半月~3ヵ月などまちまちですが、多いのは1ヵ月無料というケースです。フリーレントは、貸主にとっては早く空室を埋められるという効果があり、家賃を下げることで物件の価値も下げて入居者を募集するよりも、貸主にとってメリットがあるため、採用されることが増えています。このフリーレントを条件に物件を探してみるのもよいかもしれません。
初期費用を抑えたいときは、仲介手数料だけに注目するのではなく、初期費用全体を考慮に入れることが大切です。
まとめ
賃貸の仲介手数料は、ケースバイケースで安くしたりゼロにしたりすることが可能です。最大で家賃1ヵ月分+消費税のお金が節約できるのは魅力的です。
しかし、仲介手数料の値下げにこだわることにはデメリットもあります。仲介手数料以外の部分で初期費用を抑える方法も含めて検討してみましょう。
監修者プロフィール
三輪 歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント。
約20年間の鑑定・宅地建物取引業の経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として活動を行う。