住まいのコラム

家を買うと決めたらまずやること3つ!
重視するポイントも押さえておこう

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役

自分の家を買うことを人生の目標のひとつとしている人もいるでしょう。期待に胸を膨らませるマイホーム選びですが、現実問題として、家の購入に必要な資金や災害リスクなどについては知っておかなければなりません。

ここでは、家を買うと決めたらまずやること、重視すべきポイントを解説します。

家を買うときにまずやること(1)資金計画

住みたい場所、欲しい広さ、求める設備などを挙げればきりがありませんが、多くの人は住まいの購入にいくらでもかけられるわけではありません。まずは住まいの予算を決める必要があるでしょう。

住宅資金は、自己資金と住宅ローン借入額で構成されます。これらの許容範囲や配分を考えることを、住まいの「資金計画」といいます。

自己資金の割合は必ずしも多ければ良いわけではない

住まいを購入する際に、いくら自己資金を入れるかは慎重に考えなければなりません。自己資金の割合が多いほど住宅ローンの返済額が抑えられますが、手元資金をすべて住まいの購入に充ててしまうことはおすすめできません。

というのも、災害やその他のリスクに備えるには一定の自己資金が必要です。たとえば、病気や怪我、未曾有の大地震、近年多発している水害などにより、仕事ができなくなったり、家に被害がでたりした際、一定の資金がなければ困ることになってしまいます。家が被災した場合の修繕費は、火災保険や地震保険でまかなえることもありますが、その後の生活まで補償してくれるわけではありません。

手元には、半年ほど生活できる資金を残しておくのが良いとされています。基本的に、住宅ローンも返済し続けなければならないため、現在の生活費に住宅ローンの月々の返済額を加えた金額の6ヵ月分程度は手元に残しておくことをおすすめします。

住宅ローンを借りるうえで大事なのは「借りられるか」ではなく「返済できるか」

住宅ローンの借入額を決めるときの注意点は「借入可能額」ではなく「返済可能額」とすることです。たとえば、全期間固定金利でおなじみのフラット35は、年収に占める年間合計返済額の割合の基準を、以下のように定めています。

年収 400万円未満 400万円以上
年間合計返済額の割合基準 30%以下 35%以下

出典:住宅金融支援機構をもとに作成

たとえば年収400万円の人は、年間返済額140万円以下が基準となりますが、この金額が返済可能とは限りません。ご家庭によって、世帯の数や構成、趣味や教育資金の考え方は異なるものです。住まいの取得金額は「年収の○倍」といわれることもありますが、このような指標もあくまで目安にすぎません。

大切なのは、住まいを購入した後も無理なくローンの返済を続けることができ、豊かな生活が送れるかどうかです。

家を買うときの諸費用

家を買うときには、次のような諸費用がかかることも忘れてはいけません。

諸費用 諸費用の目安
仲介手数料(仲介を伴わない場合は不要) 物件価格×3%+6万円(税別)が上限
売買契約書や請負契約書にかかる印紙税 1〜6万円程度(購入金額による)
住宅ローンを借り入れるときの諸費用 借入金額の3〜4%程度(金融機関による)
不動産取得税 固定資産税評価額の3〜4%(軽減税率あり)
登録免許税 固定資産税評価額の0.4〜2%(軽減税率あり)
火災保険料 数万円から十数万円程度(期間・エリア・物件種別・構造等による)
修繕積立金基金(新築マンションに限る) 30万円前後(マンションによる)
水道負担金(新たに水道を設置する場合に限る) 20万円前後(状況による)

中古住宅を購入するときの諸費用は、物件価格の6%前後、新築住宅は7〜10%程度といわれています。これらの諸費用は基本的に現金で支払う必要があるため、取得資金とは別に用意しておきましょう。

住宅ローンの返済は35年など長期にわたるため、子どもにどのような教育を受けさせるか、今の仕事をずっと続けていくのか、老後資金にはいくら必要か……といったことまで考える必要があります。そのため、資金計画の前に、まずは「ライフプラン」をシミュレーションすることが大切です。

家を買うときにまずやること(2)物件種別を決める

住宅はまず、新築と中古に大別されます。そして、物件種別はマンションと一戸建てに大別されます。つまり、住まいの選択肢は、新築マンション・新築一戸建て・中古マンション・中古一戸建ての4種類です。最初に決めた物件種別を購入しなければならないというわけではありませんが、物件を絞っていく過程では新築と中古、マンションと一戸建ての主な違いを知っておくと良いでしょう。

新築と中古の違いは?

新築 中古
金額 高い 安い
物件数 少ない 多い
購入前に現物を見られるか 見られないことも多い 見られる
耐震性 一定の基準以上 物件による

マンションと一戸建ての違いは?

マンション 一戸建て
立地 良い傾向にある 良くない物件も多い
固定費 一戸建ての固定費に加え、修繕積立金・管理費・駐車場代がかかる 固定資産税・都市計画税
騒音トラブル 多い傾向にある 少ない傾向にある
セキュリティ 高い傾向にある 低い傾向にある
バリアフリー性 高い物件が多い 低い物件が多い
耐用年数 47年 22年

マンションのメリットは、立地が良い物件が多く、セキュリティやバリアフリー性が高いということです。一方、一戸建てはマンションと比べて騒音トラブルに頭を悩ませる可能性が低く、マンションのように修繕積立金や管理費、駐車場代がかからないという点がメリットになってきます。ただし、一戸建ては修繕積立金が不要だからといって、修繕やメンテナンスにお金がかからないということではありません。マンションは管理組合が積み立ててくれますが、一戸建てを購入したら、自分で費用を積み立てておかなければなりません。

また、両者の違いは耐用年数にも見られます。「耐用年数=寿命」というわけではありませんが、一戸建ては築20〜30年程度で価値がゼロに近づき、築40年、50年にもなると多くの物件が建て替える必要があるでしょう。一方、マンションは築50年、60年でも現存している物件があり、適切にメンテナンスしていけばこれ以上の期間、住むことができるといわれています。

マンションの耐用年数や寿命について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

マンションの耐用年数は47年って本当?寿命がすぎたら住めなくなる?

家を買うときにまずやること(3)相場の確認

予算や希望の物件種別が大方決まったら、続いては相場の確認をしていきましょう。希望のエリアや物件種別、広さ、築年帯では、予算オーバーになってしまう可能性もあります。その場合は、優先する事項と妥協できる事項を考慮し、希望条件を精査する必要があります。

【物件別】2024年の相場価格

首都圏
2024年1月の平均価格
新築マンション 7956万円
新築一戸建て(土地面積50㎡以上100㎡未満) 5218万円
中古マンション(平均63.97㎡) 4860万円
中古一戸建て 3803万円
近畿圏
2024年1月の平均価格
新築マンション 6390万円
新築一戸建て(土地面積50㎡以上100㎡未満) 3839万円
中古マンション(平均63.97㎡) 2789万円
中古一戸建て 2447万円

エリア・物件種別ごとの2024年1月の平均価格は、上記のとおりです。ローン金利の低下や物価高、人件費高騰などの影響から、不動産価格は高騰傾向にあります。

不動産ポータルサイトで売出価格をチェック

平均価格は、エリアの中のすべての不動産を統合した中央値です。首都圏といっても、東京23区と埼玉県や千葉県の不動産価格は大きく異なります。また、不動産価格はエリアのみならず、築年帯や広さ、設備、構造などによっても変わってきます。

そのため、平均価格から大まかな不動産市況を把握した後は、希望する条件の物件の相場価格を調べましょう。条件を絞って検索するには、不動産ポータルサイトを活用するのが便利です。

売出価格と成約価格は異なる

不動産ポータルサイトは、希望するエリアや物件種別、築年帯や広さを絞って検索するのに非常に便利な媒体ですが、ポータルサイトに掲載されている金額は「成約価格」ではなく「売出価格」である点にご注意ください。

中古住宅は特に、売出価格のまま成約に至るケースばかりではありません。市況にもよりますが、成約価格は売出価格から5〜10%下がった金額になるのが一般的です。

家を買うときに重視すべきこと(1)災害リスクの把握

家を買う際には「希望」だけでなく「リスク」も把握しなければなりません。資金計画もリスクの1つですが、近年、多発化・激甚化している災害リスクに備える必要もあるでしょう。

災害リスクは安全性だけでなく資産価値にも影響する

地震や水害、台風や火災といった災害リスクが高いエリアでは、万一の際に豊かな暮らしが送れなくなってしまう恐れがあります。加えて、災害リスクは資産価値にも影響する要素です。

日本ではすでに人口の減少が始まっており、空き家は年々、増加しています。家が余る時代に、わざわざ災害リスクが高いエリアに住む必要はありません。したがって、今後は災害リスクが高いエリアの不動産価格は落ちていくものと推測されます。

すでに、さまざまな都市でコンパクトシティ化が推進されています。コンパクトシティとは、その名のとおり街をコンパクトにする取り組みです。利便性が高く、インフラも整備されているエリアに居住区を集約させることで、自治体は効率的に街を維持・管理していくことができます。街をコンパクトにするにあたって、まず除外されるのが災害リスクが高いエリアです。こうした取り組みからも、災害リスクが高いエリアは人が住まなくなり、資産価値はどんどん下落していくものと考えられます。

ハザードマップで災害リスクをチェック

災害リスクは、ハザードマップで確認することができます。国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、住所を入力することで簡単に洪水・内水や土砂災害、高潮、津波、地震などの災害リスクがわかります。リスクの高さは色でも識別できるようになっているため、初めて利用される方も災害リスクの把握が容易です。

2024年10月、火災保険の水災補償に対する保険料が水災リスクに応じた5段階に細分化します。つまり、水災リスクが高い場所は火災保険の水災オプションの保険料が高くなるということです。近年、自然災害の多発化・激甚化が顕著になってきているということもありますので、災害リスクは必ず確認するようにしましょう。

家を買うときに重視すべきこと(2)省エネ性能

昨今では省エネ性能が高い住宅が多く分譲されており、世論的にも「脱炭素」や「地球環境保護」の意識が高まっています。2025年からは、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられることから、今後、住宅の省エネ性能は住宅の資産価値にも大きく影響していくようになっていくものと考えられます。

快適性と資産価値を左右する省エネ性能

省エネ性能の高い住宅は、少ないエネルギーで住まいの熱をコントロールできるため、以下のような効果が得られます。

・光熱費の削減
・夏涼しく、冬暖か
・ヒートショックや高血圧症のリスク低減

つまり、省エネ性能は快適性に直結するのです。

省エネ性能を高めるには、断熱性・気密性を高め、太陽光発電システムや蓄電池、省エネ性能の高い給湯器など高効率な設備を導入する必要があります。これらのスペックを高めるのに一定の費用がかかることも、近年、住宅価格が高騰している理由の1つです。

しかし、先のとおり、高性能住宅は増加しており、2025年からは省エネ基準に適合しない住宅は建築できなくなるため、省エネ性能が高い住宅は建設費や取得費が高い反面、その後の資産価値の下落率は省エネ性能が低い住宅と比較して小さくなると考えられます。

省エネ性能によって住宅ローン控除額も異なる

近年では、国をあげて住宅の省エネ性能を高める取り組みを推進しています。省エネ性能の高い住宅を取得する際の補助金制度・支援事業は多岐にわたり、住宅ローン控除においても優遇されます。

新築住宅・買取再販
子育て世帯・若者夫婦世帯 左記以外の世帯
長期優良住宅・低炭素住宅 5000万円 4500万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円
その他の住宅 0円
(2023年までに新築の建築確認:2000万円)
中古住宅
子育て世帯・若者夫婦世帯 左記以外の世帯
長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 3000万円
その他の住宅 2000万円

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」をもとに作成

住宅ローン控除における借入限度額は、上記のとおりです。新築住宅、中古住宅ともに省エネ性能が高いほど、借入限度額は高くなります。

まとめ

家を買う前に、予算や希望の条件を明確にしましょう。予算内で希望する条件の物件を購入できるとは限らないため、相場を把握することも重要です。

また、住んでからの快適性や資産価値の維持を重視するなら、災害リスクや省エネ性能にも目を向けるべきです。マイホームの購入では考えるべきことがたくさんあるので、不動産会社と相談しながら進めていくことをおすすめします。

監修者プロフィール

監修者
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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