住まいのコラム

住宅ローン控除を受けられる中古マンションの条件は?
売主や省エネ性能によって異なる控除額と控除期間

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
中古マンションで住宅ローン控除を受けるための条件は?
原則的に、新耐震基準に適合していること・床面積が50㎡以上であること・所得の合計が2000万円以下であることなどが主な条件です。また、買取再販住宅を購入し、2024・2025年に入居する場合は、対象物件が長期優良住宅・ZEH水準省エネ住宅といった、省エネ基準に適合していることも求められます。

中古マンションの購入を検討している方の中には、「中古マンションでも住宅ローン控除は受けられるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、中古マンションの購入時に住宅ローン控除の適用を受けるための条件と、適用される場合の控除額や控除期間を解説します。

住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは?

住宅ローン控除、または住宅ローン減税とは、住宅ローンの残高に基づいて、所得税と一部住民税が軽減される制度です。

マイホームを購入した人の金利負担を、少しでも軽くできるように設けられた精度で、年末の住宅ローン残高の0.7%が、最大13年間にわたり税額控除の対象となります。

中古マンションは対象?住宅ローン控除の主な適用要件

住宅ローン控除では、購入対象が中古マンションの場合でも、一定の要件を満たすことで適用を受けられます。

築年数要件

中古マンションが住宅ローン控除の対象となるためには、対象の物件が新耐震基準に適合されていることが求められます。

具体的には、下記のいずれかに該当してる中古マンションが住宅ローン控除の対象です。

(1)昭和57年(1982年)1月1日以後に建築されたもの
(2)上記以外の場合は、取得日の前2年以内に、新耐震基準に適合していることを証明されたもの

(2)の場合は、耐震基準適合証明書や建設住宅性能評価書の写しといった、書類の提出が求められます。

広さ要件

住宅ローン控除の対象になるのは、購入する中古マンションの床面積が50㎡以上の場合です。

ただし、買取再販住宅は、所得が1000万円以下の場合に限り広さ要件が40㎡に緩和されます。買取再販住宅とは、不動産会社が購入し、リフォームや修繕などをしたうえで再販する住宅を指します。買取再販住宅で住宅ローン控除の適用を受けるためには、不動産業者が物件を取得してから再販するまでの期間が2年以内であり、なおかつ再販時点での築年数が10年を超えていることが条件です。
また、買取再販住宅は、2024年から省エネ基準に適合していることが条件として加わっています。

中古マンションの中にも買取再販に当てはまるものが存在します。

所得要件

中古マンションの購入時に住宅ローン控除の適用を受けるためには、控除を受ける年の合計所得金額が2000万円以下であることも条件です。所得が2000万円を超える年がある場合、その年は控除を受けることができません。

ただし、先のとおり40㎡以上50㎡未満の買取再販住宅の場合は、所得要件が1000万円となるのでご注意ください。

住宅ローン控除の広さ要件は、原則的に「50㎡以上」ですが、ここで言うところの「広さ」は壁の内側の面積を測定した「内法面積」を指します。一方、マンションの販売チラシやポータルサイトで表記される面積は「壁芯面積」。内法面積より面積が広くなるため注意が必要です。

中古マンションの住宅ローン控除期間

中古マンションの控除期間は10年が基本ですが、買取再販住宅を購入する場合は、新築同様、最大13年の控除期間が適用されます。

ただし、省エネ基準に適合していない買取再販住宅で、次のいずれかの書類がある場合は控除期間が10年となります。

・2023年12月31日以前に建築確認を受けたことを証する確認済証または検査済証の写し
・2024年6月30日以前に建築されたことを証する登記事項証明書

上記の証明ができない中で2024年以降に買取再販住宅に入居する場合は、住宅ローン減税の対象外です。

<条件別>中古マンションの控除額シミュレーション

中古マンション購入においては、購入する物件の条件によって住宅ローン控除適用時の控除額が異なります。

ここでは下記3つの条件に当てはまる物件を購入する際の、控除額をシミュレーションします。

・省エネ基準に適合している中古マンション
・省エネ基準に適合していない中古マンション
・不動産業者が再販する中古マンション

購入する物件と借り入れる住宅ローンの条件は、以下のとおりです。

・物件価格:3000万円(フルローン)
・返済期間:35年
・金利:全期間固定 1.11%(2024年3月1日時点)

省エネ基準に適合している中古マンション

国土交通省が定める省エネ基準は、大きく分けて3つあります。

・長期優良住宅、低炭素住宅
・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅

上記のいずれかに該当する中古マンションは、控除期間10年・借入限度額は2022年〜2025年入居の場合で3000万円です。

年収別の返済額のシミュレーション結果は、以下のようになります。

年収 1年目の控除額 10年間の控除額
300万円 11.9万円 119.8万円
400万円 18.1万円 175.8万円
500万円 20.6万円 183.2万円
600万円 20.6万円 183.2万円
700万円 20.6万円 183.2万円
800万円 20.6万円 183.2万円
900万円 20.6万円 183.2万円
1000万円 20.6万円 183.2万円
※100円以下切り捨て

省エネ基準を満たした中古マンションは、年間の控除限度額が21万円と定められています。そのため一定以上の年収があり、所得税を年間20万円以上納めている場合は、1年間の控除額は最大21万円となります

省エネ基準に適合していない中古マンション

次に、省エネ基準に適合していない中古マンションの場合の、控除額をシミュレーションします。

省エネ基準に適合していない物件を購入する場合、控除期間10年・借入限度額は2000万円です。

今回の場合は購入する中古マンションの価格は3000万円ですが、そのうち2000万円の部分にのみ住宅ローン控除が適用されることになります。

年収 1年目の控除額 10年間の控除額
300万円 11.9万円 119.9万円
400万円 14万円 140万円
500万円 14万円 140万円
600万円 14万円 140万円
700万円 14万円 140万円
800万円 14万円 140万円
900万円 14万円 140万円
1000万円 14万円 140万円
※100円以下切り捨て

省エネ基準を満たさない中古マンションの場合は、1年間の控除額上限は14万円です。

不動産業者が再販する中古マンション

最後に、買取再販の中古マンションを購入する場合のシミュレーションです。

買取再販の物件の場合は、控除期間は原則的に一律13年ですが、対象物件の環境性能によって借入限度額が異なります。

住宅の環境性能等 借入限度額 控除期間
2022・2023年入居 2024・2025年入居
長期優良住宅
低炭素住宅
5000万円 4500万円 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円
その他の住宅 3000万円 0万円

上記の表をご覧いただくとわかるとおり、2024・2025年の入居に関しては、物件が省エネ基準に適合していない場合、住宅ローン控除の適用外になるため注意が必要です。

控除額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

年収 1年目の控除額 13年間の控除額
300万円 11.9万円 155.9万円
400万円 18.1万円 220.3万円
500万円 20.6万円 227.7万円
600万円 20.6万円 227.7万円
700万円 20.6万円 227.7万円
800万円 20.6万円 227.7万円
900万円 20.6万円 227.7万円
1000万円 20.6万円 227.7万円

買取再販住宅の控除限度額は、省エネ基準を満たす物件と同じく年間21万円です。

住宅ローン控除による控除額は、売主や物件の省エネ性能、控除を受ける人の収入によって異なります。同じ金額のマンションを購入したとしても総控除額には100万円以上の差が出ることもあるため、物件選びの段階でいくら控除されるのかシミュレーションされることをおすすめします。

中古マンション購入後に住宅ローン控除を受ける手続き

住宅ローン控除を受けるためには、控除を受ける最初の年と2年目以降で異なる手続きが必要です。

1年目は確定申告が必要

住宅ローン控除を受ける最初の年は、確定申告をする必要があります。

具体的には、中古マンションを購入した翌年の2月16日~3月15日の間に、確定申告書と必要書類を添付して、管轄の税務署に提出します。

必要書類は購入する物件によって異なりますので、詳しくは国税庁のホームページをご覧いただくか、管轄の税務署で確認しましょう。

国税庁「住宅ローン控除を受け受ける方へ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/juutaku.htm

会社員は2年目以降は年末調整でOK

中古マンションを購入した方が会社員の方であれば、2年目以降は会社の年末調整で控除の適用を受けられます。

税務署から送られてくる書類を勤務先に提出するだけで足りるため、毎年確定申告の手続きをする必要はありません。

まとめ

中古マンション購入時に住宅ローン控除の適用を受けるためには、物件の耐震性や住宅性能、本人の年収など、一定の条件を満たしている必要があります。物件を選ぶ段階から意識し、賢く新居を手に入れましょう。

※本記事に掲載されている住宅ローン控除の適用用件や控除条件については、2024年3月時点の調査に基づき、掲載しております。最新の適用用件・控除条件等は変更となっている可能性があります。最新の情報は、国税庁や国土交通省のサイト等でご確認ください。

監修者プロフィール

監修者
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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