住まいのコラム

登録免許税とは?
計算方法や軽減措置をわかりやすく解説

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
登録免許税とはどのような税金ですか?
登録免許税は、法務局で行う不動産の登記手続きに必要な税金です。具体的には所有権の移転・保存、抵当権の設定・抹消の際に登録免許税が必要で、税額の算出に用いる税率は、一部の不動産に関しては軽減税率も設定されています。軽減税率の適用には期限がありますので、計画的に手続きを進めることが大切です。

不動産を売買した際には、登記手続きが必要です。登記手続きには「登録免許税」が課されます。登録免許税は、消費税や所得税のように毎日の暮らしの中でよく納める税金ではないことから、耳慣れないという人も多いのではないでしょうか。

登録免許税には軽減措置が設けられており、計算方法も複雑です。
ここでは、登録免許税の計算方法や軽減措置についてシミュレーションを用いながらわかりやすく解説します。

登録免許税とは?

登録免許税は、不動産の所有権移転や抵当権の設定など、法務局で行われる登記に際して納める国への税金です。登記手続きにかかる手数料のようなもの、と覚えておくと良いでしょう。

不動産の登記というのは、不動産の取引が行われたことを公的な記録として残すための手続きで、土地や建物の所有権が誰にあるかを明確にする重要な役割を果たします。

つまり、「この不動産は私が所有しています」ということを示すために、必要な手続きということです。

登録免許税はどのようなときに課税されるの?

不動産の登記において登録免許税が課せられるのは、大きく分けて以下2つの場合です。1つは所有権の移転・保存登記の際、もう1つは抵当権設定・抹消登記の際です。

所有権の移転・保存

不動産の所有権とは、法律の範囲内で不動産を自由に使用したり、売却したり貸して収益を建てたりできる権利のことを指します。

所有権の移転登記は、不動産の売買・相続・贈与などが発生した際に、前の持ち主から新しい持ち主へと、所有権が移転されることを公的に記録する手続きです。

また、マイホームを建てた場合など、建物の所有者の情報を登記する場合も登録免許税が発生します。この登記手続を、所有権の保存登記と呼びます。

抵当権の設定・抹消

不動産の抵当権とは、住宅ローンを利用して不動産を購入する場合に、金融機関などの債権者が物件に対して設定する権利のことを指します。

万が一債務者が返済不能に陥った場合、債権者は抵当権が設定された物件を競売にかけ、売却金額を融資金の回収にあてられるという仕組みです。

登録免許税は、抵当権設定登記のときだけでなく、抹消登記の際にも発生します。抵当権の抹消登記は、住宅ローンの完済と共に行われるのが一般的です。

不動産売買における所有権移転登記の登記費用は、売主、買主、どちらが負担しても法律上、問題ありませんが、買主が負担するのが慣習となっています。一方、抵当権の設定・抹消については、登記する人が負担します。

登録免許税の計算方法

計算方法は登記の種類によって異なり、さらに一定条件を満たせば軽減税率も適用されます。

本則税率

まず、登録免許税の基本的な計算式は、以下の通りです。

登録免許税額=課税標準×税率

所有権移転登記・保存登記では、課税標準は対象の不動産の"固定資産税評価額"です。固定資産税評価額は、毎年1月1日時点での所有者に対して送られる、固定資産税明細書に記載されています。

税率は登記の種類ごとに、下記のように定められています。

所有権移転登記
土地 売買 2.0%
相続または法人の合併 0.4%
贈与・交換・収用・競売等 2.0%
建物 売買または競売 2.0%
相続または法人の合併 0.4%
贈与・交換・収用等 2.0%
所有権保存登記
建物 新築住宅取得 0.4%

また、住宅ローンを利用する際に設定される抵当権の設定登記には、借入額に対して0.4%の税率が適用されます。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき一律1000円です。土地と建物両方の抵当権を抹消する場合は、土地と建物それぞれに登録免許税がかかります。

登記手続きを司法書士に委託する場合は別に報酬が必要

登録免許税の計算と登記手続きは、専門的な知識が必要なため、司法書士に委託して行うケースも多くあります。

司法書士は、登記に必要な書類の準備から法務局への提出まで、一連の手続きを代行してくれます。権利関係が複雑な不動産の場合、個人での申請ではスムーズに進まないこともあるため、司法書士に委託すると安心です。

司法書士に登記手続きを委託する場合は、登録免許税とは別に、司法書士への報酬が発生します。司法書士の報酬額は、手続きの内容や複雑さによって異なりますが、一般的には数万円から十数万円程度が相場です。

自身で登記することも可能ですが、不動産売買は自分だけの問題ではなく、売主、買主が関わっているため、確実に登記するため司法書士に委託するのが一般的です。また、抵当権についても金融機関と共同申請になるため、基本的には司法書士に委託することになります。一方、相続登記は登記する人だけの問題ですので、一定の時間と手間をかけられるのでれば自身で登記することも可能です。

登録免許税が軽減される要件

登録免許税の算出に用いる税額は、対象の不動産が一定の条件を満たすことで軽減される場合があります。

土地

土地の所有権移転登記のうち、土地の売買による所有権移転登記にかかる登録免許税の税率は、本則税率では2.0%です。しかし、2026年3月31日までに登記する場合は、税率が1.5%まで軽減されます。

登記の種類 本則税率 軽減措置後の税率
(2026年3月31日までに登記する場合)
土地の売買による所有権移転登記 2.0% 1.5%

出典:国税庁「登録免許税の税額表」をもとに作成

建物

建物の登録免許税に関しても、税率軽減の特例が設けられています。対象の建物が住宅用家屋の場合に適用される軽減税率は、以下の通りです。

登記の種類 本則税率 軽減措置後の税率
(対象の建物が住宅用家屋の場合)
所有権移転登記(売買または競売の場合) 2.0% 0.3%
所有権保存登記 0.4% 0.15%

出典:国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」をもとに作成

さらに取得した建物が、特定認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・特定の増改築等がされた住宅のいずれかである場合、税率はさらに緩和されます。適用期限はいずれも2027年3月31日までです。

なお、売買または競売以外の理由による所有権移転登記については、軽減措置は実施されていません。

抵当権

抵当権設定の登録免許税に関しても、税率の軽減措置が設けられています。適用期限は2027年3月31日です。

抵当権設定登記の軽減措置の条件は以下となります。

新築の場合
・自己の居住用の住宅である
・床面積が50㎡
・新築後もしくは取得後から1年以内に登記されている
・耐火建築物か準耐火建築物、または耐火性能基準に適合する低層集合住宅である

中古の場合
・自己の居住用の住宅である
・床面積が50㎡
・新築後もしくは取得後から1年以内に登記されている
・耐火建築物か準耐火建築物、または耐火性能基準に適合する低層集合住宅である
・1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅である

登記の種類 本則税率 軽減措置後の税率
抵当権設定登記 0.4% 0.1%

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」をもとに作成

軽減措置を受けるには申請が必要

登録免許税の軽減措置を受けるためには、登記申請時に「住宅用家屋証明書」という書類を準備する必要があります。

住宅用家屋証明書は建物が所在する市区町村で公布され、登記の申請書と併せて法務局に提出します。

登記申請は住宅を新設または取得してから1年以内に行う必要があるため、期限には十分注意しましょう。

登録免許税をシミュレーションしてみよう

ここからは実際に不動産を購入した場合の、登録免許税のシミュレーションをしてみましょう。

以下の条件で土地・建物を購入し、住宅ローンを組んだ場合の登録免許税を計算します。
・土地:評価額1000万円
・建物(新築・住宅用):評価額1500万円
・住宅ローン借入額:2000万円
・購入時期:2024年3月

上記の場合、かかる登録免許税は以下の3つです。

・土地の所有権移転登記
・建物の所有権保存登記
・土地と建物の抵当権設定登記

それぞれの登録免許税は、以下のように求めます。

土地の所有権移転登記
土地の評価額1000万円×1.5%(軽減税率)=15万円

建物の所有権保存登記
建物の評価額1500万円×0.15%(軽減税率)=22万5000円

抵当権設定登記
借入額2000万円×0.1%(軽減税率)=20万円

今回のシミュレーションでの登録免許税は、合計で57万5000円です。

登録免許税はいつ払う?

登録免許税の金額は、取引する不動産の価格によっても大きく変動し、場合によっては数十万円〜数百万円におよぶこともあります。

あらかじめ納付時期と納付方法を知っておき、準備しておくようにしましょう。

納税時期

登録免許税は、法務局で登記申請をする前に納付するのが原則です。

納税方法

原則として、事前に銀行や郵便局で所定の用紙での振り込みを行い、領収書を申請書と一緒に提出する必要があります。

ただし、登録免許税額が3万円以下の場合は、申請書に収入印紙を貼り付けることでも納付可能です。

近年ではオンラインでの登記申請も可能になっており、その場合はネットバンクやクレジットカードでの納付も認められています。

まとめ

不動産の登記は、土地や建物の所有者や担保状況を正確に把握するためにも、非常に重要な手続きです。どのように進めればよいか迷ったら、司法書士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

※本記事に掲載されている登録免許税の軽減措置については、2024年3月時点の調査に基づき、掲載しております。最新の適用期限等は変更となっている可能性があります。最新の情報は、国税庁や国土交通省地方のサイト等でご確認ください。

監修者プロフィール

監修者
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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