住まいのコラム

タワーマンションと高層マンションの違いは?
買って後悔しない?
タワマンのメリット・デメリット

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
タワーマンションとは?高層マンションとはどう違う?
タワーマンションは、一般的に高さ60m以上のマンションのことを言います。一方、高層マンションは高さ31m以上のマンションを指します。タワーマンションは20階建て以上、高層マンションは10階建て以上が目安です。

タワーマンションや高層マンションの購入・引越しを検討する際は、それぞれの違いを理解したうえで、住むメリットや注意点について整理することが大切です。景色が良い、セキュリティ対策が万全などメリットだけではなく、賃料や生活上の制限などにも注目し、自身に適しているかどうかを判断しましょう。

ここでは、タワーマンションと高層マンションの違いや住むメリット・デメリット、注意点などについて詳しく解説します。

何階からがタワーマンション?タワマンの定義

タワーマンションに法的な定義はありませんが、高さ60m以上の超高層マンションをタワーマンションと呼ぶことが一般的です。高さ60mは20階程度に相当するため、20階以上のマンションはすべてタワーマンションといえます。

「構造耐力」について規定されている建築基準法20条では、建築物の規模に応じて1~4号に区分けされています。この中で規模が最も大きく、高さ60m以上と定義づけられている「1号」がタワーマンションに該当するとの考え方が通例です。

出典:e-GOV法令検索「建築基準法」

高層マンションとの違い

高層マンションに法的な定義はありませんが、消防法で定められている高さ31mを超える「高層建築物」を指すことが一般的です。

高さ31mのマンションは10階建て程度のため、10階以上のマンションはすべて高層マンションに該当します。その中でも、高さ60mを超えるものはタワーマンションと呼びます。

タワーマンションのメリット

タワーマンションに憧れを持つ人は、メリットについて整理することで、自身に適しているかどうか明確になるでしょう。タワーマンションに住む・購入するメリットは次のとおりです。

高層階は眺望が良い

タワーマンションの中でも高階層は、眺望が良いため景色を楽しむことができます。

たとえば、都市の中心部に位置しており、高層ビルやランドマークが連なるような地域では、市街地の全景を一望できるでしょう。また、海岸沿いや河川付近に建てられたタワーマンションでは、海や川、夕日の美しい景色を堪能できます。

さらに、山岳地帯に建設されたタワーマンションでは、山々や自然の景色を眺めることができるでしょう。

このように、タワーマンションの高階層は周囲の建物に視界をさえぎられにくいため、立地に応じてさまざまな景色を楽しめます。

共用施設が充実している

タワーマンションは、共用施設が充実している傾向があります。主な共用施設は以下のとおりです。

・ジム
・プール
・コミュニティラウンジ
・パーティールーム
・バーベキューガーデン
・キッズルーム
・ドッグランスペース

ジムやプールなどで適度な運動を習慣づけたり、子どもやペットと日々の生活を楽しんだりしたい人に向いているでしょう。

高層階は虫が発生しにくい

一般的に、高階層になるほど虫が侵入しにくい傾向があります。10階以上では虫をほとんど見かけなくなるとされているため、虫を避けたい人にはタワーマンションの高階層が適しています。

ただし、人の身体やバッグなどについた虫や卵が侵入し、高階層でも部屋の中で虫を見かける可能性もあります。

セキュリティが厳重

タワーマンションの多くは24時間体制のセキュリティ対策が施されています。セキュリティ対策の例は次のとおりです。

・エントランスやエレベーター、廊下などの防犯カメラ
・専用のカードキー
・複数のオートロックシステム
・インターホンを押した部屋の階層にのみアクセスできる
・ICカードや顔認証などによるロックシステム

タワーマンションは、安全面を重視する人にも適しています。

資産価値が高い

タワーマンションは比較的利便性の高い立地に建っていることも多く、またそのステータスからほとんどが人気物件です。そのため、資産価値としは高く、数年住んだ後売却したいとなったときも、高値で売れる可能性があります。また、購入した部屋を賃貸物件として貸し出すとしても、借り手が見つからず困るという可能性は低いでしょう。将来、不動産で資産運用したい人にも適した物件です。

充実した共用施設や高いセキュリティはたしかにタワーマンションのメリットですが、マンションの設備や機能の維持・管理にはお金がかかります。これらの費用には、住人から徴収する管理費や修善積立金が充てられているため、決して「無料で利用できる」というわけではありません。

タワーマンションのデメリット

タワーマンションのデメリットといえば、賃料の高さが気になる人は多いのではないでしょうか。賃料のほかにもデメリットがいくつかあるため、自身に適しているかどうかを判断するためにも確認しておきましょう。

取得費・賃料が高額な傾向にある

タワーマンションの購入価格は5000万~数億円程度と高く、それに応じて多額の初期費用もかかります。たとえば、新築マンションの初期費用の相場は3~5%程度といわれているため、1億円のタワーマンションの初期費用は300万~500万円程度です。

賃料は15万~30万円程度が目安です。 仲介手数料を家賃1ヵ月分とした場合、家主と折半する場合は7〜15万円程度、入居者が全額負担する場合は15万~30万円程度かかります。タワーマンションは、取得費・賃料が高額な傾向があることを理解しておきましょう。

ベランダに洗濯物を干せない物件も多い

多くのタワーマンションでは、ベランダに洗濯物を干すことができません。特に高層階は風が強いため、洗濯物が飛ばされるリスクが高まります。洗濯物が落下し、周囲の人々や通行人にけがをさせるリスクもあるでしょう。

また、タワーマンションは一般的に高級感を演出し、美観を重視しています。洗濯物がベランダに干されていると、建物の外観に影響が出るため、禁止されている場合があります。さらに、一部のタワーマンションでは、ベランダそのものがありません。そのため、衣類乾燥機や浴室乾燥機、サンルームが備えられている物件がほとんどです。

出勤時にエレベーターが混み合う

タワーマンションは住民の数が多いため、エレベーターが混み合う場合があります。特に、出勤時は多くの住民が同じタイミングでエレベーターを使うため、ときには次のエレベーターを待つこともあるでしょう。急いでいるときに不便に感じることもあるかもしれません。 ただ、近年はリモートワークが定着しつつあります。自宅での仕事が主となっている人であればデメリットと感じないでしょう。

「長周期地震動」の影響を受けやすい

長周期地震動とは、揺れが1往復するのにかかる時間が長い地震のことです。地震の揺れの往復にかかる時間や強さは、地震の規模や性質によって異なります。長周期地震動ではタワーマンションは大きく長時間揺れます。それだけ、家具が大きく動いたり物が落ちてきたりしやすいため、より一層の地震対策が必要です。

大規模災害時に高層難民になる恐れがある

高層マンションにおける災害時の課題として、エレベーターの停止や水の供給制限などによって、高層難民になる恐れがあることが挙げられます。高層階では地震の揺れが長く続き、エレベーターが停止することで避難が難しくなる場合があります。

また、水の運搬が困難なため、災害時には水の確保が難しくなるでしょう。これにより、高層階で孤立する世帯が生まれ、いわゆる「高層難民」が発生する恐れがあります。

階層別の特徴、メリット・デメリット

タワーマンションと一言でいっても、低階層・中階層・高階層・最上階に区分けされており、それぞれのメリット・デメリットもあります。タワーマンションのメリット・デメリットについて、階層別に詳しく見ていきましょう。

低階層(10階以下)

低階層(10階以下)に住むメリットは、取得費や賃料が安いことです。高層階よりも低層階の方が取得費・賃料が低い傾向にあります。また、外出までの時間がかからない点も大きなメリットです。低層階ではエレベーター待ちの時間が短く、階段を使って1階に行くこともできます。

一方、低階層のデメリットとしては、都心部や交通量の多い地域では車の音や電車の音などが届きやすいことが挙げられます。

中階層(10〜15階以下)

中階層(10〜15階以下)に住むメリットは、街並みや公園や水辺などの景色を近くで楽しめることです。また、高階層と同じく自然光が入りやすく、風通しも良いため、快適な暮らしを実現できるでしょう。

それでいて高階層と比べて、取得費や賃料を抑えることができます。ただし、低階層と比べて緊急時の階段の利用が難しくなります。

高階層(16階以上)

高階層(16階以上)に住むメリットは、遠くまで広がる街並みや海、川、山などを楽しめることです。朝焼けや夕焼け、花火などを建物にさえぎられずに眺められます。

デメリットは、同じ広さの住戸の低層階に比べて2~3割ほど価格が高いことです。さらに、災害時にはエレベーターが停止したり、水の供給が難しくなったりして、高層難民になりかねない点も留意すべきでしょう。

最上階

最上階のメリットとデメリットの大部分は、高階層のものと共通しています。最上階は高階層よりも取得費や賃料が高く、プレミアムなイメージがあることから、他の住民よりも高級な部屋に住みたい人に向いているでしょう。

ただし、最上階だけの特別な施設が設けられたタワーマンションもあるため、高階層との違いについては、マンション単位で確認が必要です。

タワーマンションに住むときの注意点

タワーマンションに住むときは、デメリットを理解したうえでいくつかの注意点を押さえておく必要があります。次の注意点を押さえることで、自身に適したタワーマンションを選択できるでしょう。

災害対策をしっかりする

タワーマンションに住むと、災害時に高層難民になる恐れがあるため、十分に災害対策をすることが大切です。たとえば、停電や断水時には階段で買い出しに出る必要があるため、より多くの食料や水を備蓄しておくべきでしょう。

また、階層が上がるほど地震の揺れが大きくなります。家具や家電の配置変更や地震対策なども欠かせません。このような災害対策をしたうえで、揺れの影響を直接的に受けないよう工夫された「免振」、地震の揺れを吸収する装置がついている「制揺」のタワーマンションも検討しましょう。

入居前に管理規約や使用細則をよく確認する

タワーマンションに入居する前に、管理組合の運営や共用部分の利用方法、管理などについて定められた管理規約を十分に確認しましょう。また、より細かなルールが記載された使用細則の確認も必要です。

共用施設の利用方法や管理組合の運営方針を理解することで、他の住民や管理者などとのトラブルを回避できるようになります。

高層階以外も検討する

タワーマンションに住むのであれば、高階層を選ぶべきと考える人もいますが、価格とメリットのバランスが取れた中階層、便利な共用施設を利用しつつ災害時のリスクを軽減できる低階層など、他の階層も検討することが大切です。

どのような物件にもメリットとデメリットがあるため、自身に適しているかどうかを軸に物件を選びましょう。

マンションの災害リスクは、立地や管理状態にもよります。タワーマンションは2000年頃から建築されるようになったため高経年の物件は少ないですが、「適切なタイミング大規模修繕が実施されているか」「今後の修繕に向けた計画や積立金は十分か」といった点も確認しておくことをおすすめします。

まとめ

タワーマンションは、階層によってメリットとデメリットが異なります。後悔するかもしれないとの不安を払拭し、タワーマンションでの生活への期待に目を向けられるよう、今回ご紹介したタワーマンションのメリット・デメリットや注意点を意識して物件を選んでみてください。

監修者プロフィール

監修者
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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