同棲の初期費用をシミュレーション
内訳と節約のコツを解説
最終更新日:
- 高野 友樹
- 公認不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
- 同棲の初期費用は100万円かかるって本当?
- 「同棲を始めるには100万円かかる」と聞くことがありますが、新たにアパートやマンションを探して契約し、引越して、新しい家具や家電をそろえるとなれば、その合計金額が100万円を超えてもおかしくはありません。ただし、上手に節約することで、半額近くまで費用を抑えることも可能です。
カップルで同棲を始めるときに気をつけたいのが、お金の問題です。あまり考えずにいろいろなことを決めてしまうと、初期費用だけで100万円以上かかってしまうこともあります。
この記事では、同棲の初期費用について、何にどれくらいお金がかかって、何を節約すれば安くできるのか、詳しく解説していきます。
アンケートで聞いた、同棲でかかった初期費用は?
実際のところ、同棲を始めたカップルはどの程度の初期費用を払っているのでしょうか。
同棲経験のある20代~30代の男女654人にアンケートしたところ、以下のような結果となりました。
※対象者:全国の同棲経験のある20代~30代男女654人 調査時期:2024年1月
アンケートで聞いた 同棲するときにかかった初期費用はいくら?
もっとも多かったのが「10万円~30万円未満」で30.3%でした。「~10万円未満」の回答も20%以上見られます。
一方で、わずかではありますが「100万円以上」の回答もありました。
新しく賃貸物件を借りるか、今住んでいる家で同棲するかで、初期費用は大きく変わってくると考えられます。
同棲に必要な初期費用は主に3種類
2人で新しい賃貸物件を借りて同棲を始めるとき、最初に必要になる初期費用は主に次の3種類に分けられます。
<同棲に必要な初期費用>
・賃貸物件の契約費用
・引越し費用
・家具、家電の購入費用
よく「同棲には100万円かかる」といわれます。しかし、実際の費用は、契約する賃貸物件の家賃や引越しの時期・業者、どのような家具・家電を購入するかによって大きく異なります。
費用を抑えたいなら、事前にしっかりと予算を立て、無駄な出費をしないようにすることが大切です。2人で事前に話し合いをして、何を節約するかなどを決めておきましょう。
同棲の初期費用1:賃貸物件の契約費用
同棲の初期費用の中で、最も大きな割合を占めるのが賃貸物件の契約費用です。これには、敷金、礼金、家賃の前払いなど、いくつかの要素が含まれます。
たとえば、家賃10万円の場合、賃貸物件を契約する際にかかる費用の目安は下記のとおりです。合計54万~59万円程度の費用がかかります。
■賃貸物件の契約費用の目安(家賃10万円の場合)
項目 | 相場 | 金額 |
---|---|---|
敷金 | 1ヵ月分 | 10万円 |
礼金 | 1ヵ月分 | 10万円 |
前家賃 | 1ヵ月分 | 10万円 |
日割り家賃 | 仮に半月とする | 5万円 |
仲介手数料 | 1ヵ月分+消費税(10%) | 11万円 |
火災保険料 | 1年で1万円程度 | 1万円 |
家賃保証料 | 半月分~1ヵ月分 | 5万~10万円 |
鍵交換費用 | 実費 | 2万円 |
合計 | 54万~59万円 |
<初期費用の項目>
・敷金:家賃の不払いや原状回復費用のために貸主が預かる費用。退去時に原状回復のための修繕が必要な場合に利用され、差額があれば返金される。
・礼金:入居に際して貸主に支払う謝礼的な費用。退去時にも返還されない。
・前家賃:入居時に翌月分の家賃を前払いするのが一般的。
・日割り家賃:月の途中で賃貸借契約を結んだ場合、日割りで発生する家賃。
・仲介手数料:物件の案内、契約条件の交渉、重要事項の説明、契約の締結などの対価として不動産会社に支払う手数料。
・火災保険料:賃貸の場合、家財を対象にした火災保険に加入するのが一般的。
・家賃保証料:賃借人が家賃を滞納した場合に家賃を立て替えてくれる保証会社に支払うお金。保証会社を利用している賃貸物件の場合に必要で、この費用がない物件もある。
・鍵交換費用:新しい入居者用に鍵に取り替えることで発生する費用。前の住人の負担である場合もあり、入居時には鍵交換費用がかからない場合もある。
不動産会社や物件によっては、「敷金・礼金無料」「フリーレントつき」「仲介手数料無料」といった、初期費用を抑えられるキャンペーンを実施しているケースがあります。賃貸物件の契約時にかかる初期費用については、そのようなキャンペーンの実施有無も確認してから、物件探しを始めてみましょう。
同棲の初期費用2:引越し費用
引越し費用は、引っ越す時期や移動距離、荷物の量(トラックの大きさ)、業者などによって異なります。
一人暮らしの住まいから引っ越す場合の、平均的な引越し費用の目安は下記のとおりです。カップルそれぞれが引っ越せば、2倍のお金がかかります。
■引越し費用の目安(移動は同じ都道府県内程度)
期間 | 一人暮らしの荷物が少ない場合 | 一人暮らしの荷物が多い場合 |
---|---|---|
繁忙期(3~4月) | 3万5000~6万円 | 4万4000~8万円 |
通常期(5~2月) | 2万7000~4万円 | 3万2000~5万円 |
旧居と新居の距離が離れていて移動距離が長くなると、上記の目安よりも引越し費用は高くなります。
同棲の初期費用3:家具・家電の購入費
家具や家電は、すでにそれぞれ持っているものがあるなら、何を買い足すか、買い替えるかによって違ってきます。
同棲に必要な家具・家電の金額の目安は下記のとおりです。一人暮らし用のものから二人暮らし用のものになると、サイズや機能も変わるため、価格相場もやや高くなります。
■家具・家電の購入費の目安
アイテム | 金額の目安 |
---|---|
ベッド | 2万~7万円 |
ソファ | 1.5万~5万円 |
冷蔵庫 | 8万~10万円 |
洗濯機 | 4万~7万円 |
テレビ | 3万~5万円 |
電子レンジ | 1万~3万円 |
炊飯器 | 1万~5万円 |
合計 | 20.5万~42万円 |
※2023年7月末時点の価格相場を参考に作成
最初からすべての家具・家電をそろえようとすると、多額のお金がかかってしまいます。もし、どちらかが一人暮らしで使っていたものがあるならば、とりあえず単身用のもので一旦代用して、家具・家電が安く売り出される時期などに、2人用のものに買い替えていく、という方法もおすすめです。
同棲の初期費用シミュレーション
家賃が8万円の場合と10万円の場合で、同棲にかかる初期費用の総額をシミュレーションしてみましょう。カップルがそれぞれ一人暮らしだったとして、新居へ引っ越す場合を想定しています。
引越しの費用や家具・家電の購入費用はどちらも変わらないものとした場合、家賃8万円と10万円では、賃貸契約費用によって初期費用に10.2万円の差が出ます。
■家賃8万円・10万円の場合の同棲の初期費用シミュレーション
項目 | 家賃8万円 | 家賃10万円 |
---|---|---|
賃貸契約費用 | 43.8万円 | 54万円 |
引越し費用(通常期5~2月) | 8万円 | 8万円 |
家具・家電(最低価格) | 20.5万円 | 20.5万円 |
合計 | 72.3万円 | 82.5万円 |
※賃貸契約費用の家賃保証料は半月分、引越し費用については荷物が少なく200km以内の移動の場合、家具・家電については各アイテムの最低価格の合計額で計算しています(購入しないアイテムがある場合はさらに安くなる)
※引越し時期が繁忙期(3~4月)の場合は、引越し費用が4万円程追加になる場合があります
敷金・礼金ゼロ物件だった場合
同棲の部屋として選んだ物件が敷金・礼金ゼロ物件だった場合、家賃8万円なら16万円、家賃10万円なら20万円の節約になります。
<敷金・礼金ゼロ物件で家賃8万円の初期費用総額>
72.3万円-16万円(敷金+礼金)=56.3万円
<敷金・礼金ゼロ物件で家賃10万円の初期費用総額>
82.5万円-20万円(敷金+礼金)=62.5万円
家具・家電を買わなかった場合
どちらか一方の家具・家電を利用する、もしくは双方の家具・家電を持ち寄ることで同棲生活を始められる場合には、家具・家電をまったく買わないこともあります。家具・家電を買わなかった場合、約20万円の節約になります。
<家賃8万円で家具・家電購入なしの初期費用総額>
72.3万円-20.5万円(家具&家電)=51.8万円
<家賃10万円で家具・家電購入なしの初期費用総額>
82.5万円-20.5万円(家具&家電)=62万円
3~4月の引越しの繁忙期は、賃貸市場の繁忙期でもあり、この時期は最も賃貸物件の出入りが多いため、家賃の値下げや初期費用の交渉が非常に難しいタイミングです。可能なら、繁忙期を避けて5月~2月のあいだ、特に部屋探しの閑散期である6月~8月を狙って物件を探すと、初期費用などの交渉もしやすく、数万円から数十万円の節約になる可能性があるので、ぜひ検討してみてください。
同棲の初期費用はどう分担する?
初期費用をどのように分担するかは、お互いの価値観や経済状況によって異なります。ここでは、一般的な分担の方法について見ていきましょう。
先ほどと同じく、同棲経験のある20代~30代の男女654人にアンケートしたところ、以下の結果でした。
アンケートで聞いた 同棲の初期費用はどのように出した?
- 折半して払った…38.8%
- 全額片方が払った…31.2%
- 片方が多めに払った…27.8%
- その他…2.1%
割り勘・折半するケースが多い
多くのカップルは、初期費用を折半にしていることが多いでしょう。2人の負担を均等にできるので対等な関係を保ちやすく、シンプルで理解しやすいのがメリットです。
最初にお互い同額を出し合って共有する財布を作り、そこから費用を支払うのがおすすめです。引越し後に残金を分け合えば、簡単に割り勘にできます。
負担割合を設定するケース
折半ではない形で同棲の初期費用を分担するケースとして、給与や貯金などの経済的状況に応じて、負担の割合を設定する方法があります。収入が多いほうが6割、少ないほうが4割など、割合を決めて分担します。カップルの年齢差がある場合は、この方法を選ぶことも多いようです。
片方が全額負担するケース
同棲の初期費用を、片方が全額を支払うケースもあります。片方の経済的な状況がよい場合や、片方が学生や無職である場合など、特定の事情があるときの選択肢となるでしょう。
同棲の初期費用が払えない!節約するコツは?
賃貸物件の契約費用、引越し費用、家具・家電の購入費用を考えると、80万円前後の初期費用がかかることがわかります。家賃が高い場合や、家具・家電にこだわるなら、初期費用は100万円を超えるでしょう。そこで、初期費用を少しでも抑えるためのコツを紹介します。
家賃が安い物件を選ぶ
最も同棲の初期費用を削減できる方法は、安い家賃の物件を探すことです。家賃が安ければ、敷金・礼金・仲介手数料なども安くなって初期費用を抑えられるほか、月々の負担も抑えられます。
たとえば、同じ都内でも家賃が安いエリアを狙う、郊外エリアを選ぶ、駅から徒歩20分以上の物件を探す、物件の築年数や間取りなどの条件を柔軟に考えるなど、予算内で快適に住める物件を粘り強く探せば、家賃を節約できる可能性があります。
敷金ゼロ・礼金ゼロなど初期費用の安い物件を探す
敷金や礼金は、絶対に必要とは限りません。敷金・礼金なしの物件も探せば見つけることができます。ただし、なぜこれらの費用がゼロになるのか、気になる人もいるでしょう。
まず敷金は、家賃の不払いや原状回復費用に備えるためのお金です。そのため、たとえば家賃保証会社の利用が必須となっている物件では、似た目的を持つ敷金はゼロとなることがあります。この場合、敷金はゼロでも、保証会社への費用は必ず支払う仕組みです。また、退去時に原状回復のためのクリーニング費用を請求される場合があります。
礼金は、貸主である大家さんに支払う謝礼の意味を持つお金です。そのため、大家さんが不要と判断すれば礼金はゼロなります。特に、空室状態が続いているような部屋は、早く入居者を決めたいとの理由で、礼金がゼロになる傾向があります。
現在は、賃貸物件が供給過多の状態にあることから、敷金・礼金ゼロの物件も増加傾向です。
家具・家電は手持ちのもを使う、必要なものだけ買う
同棲をして新生活を始めるとなれば、新しい家具や家電をそろえたい気持ちになるものです。しかし、手持ちの家具・家電があるのなら、それらを最大限利用したほうが節約になります。
たとえば、ベッドはシングルを2台並べたツインスタイルにすることもできます。炊飯器は3合炊きのものを持っていれば、二人暮らしでもさほど不便なく使えるでしょう。
ただし、冷蔵庫の場合は、一人暮らし用の100L前後の製品のほうが、300Lタイプなどのファミリー向けの製品より消費電力量が多いことがあります。長期的に考えると、一人暮らし用を無理に使わず、容量の大きい冷蔵庫を購入したほうがお得かもしれません。
引越しの繁忙期を避ける
引越しの繁忙期(3~4月)は、基本的に引越し料金が高くなります。節約のためには、この時期を避けて引っ越すのがおすすめです。
通常期に引越しを計画することで、費用を2人合わせて4万円程度節約できる可能性があります。その際、複数の引越し業者に相見積もりをして、安いところを選ぶのもおすすめです。
まとめ
同棲を始めるときの初期費用は、今後の生活のためにも、節約できるところは節約するという考えで計画するのがおすすめです。
シミュレーションを参考に、初期費用の具体的な内訳を把握し、2人でよく話し合いながら、何を買うのか、どこを節約できるのかなどを考えてみてください。
監修者プロフィール
- 高野 友樹
- 公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
不動産会社にて600件以上の仲介、6000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。現在は株式会社高野不動産コンサルティングを設立し、不動産コンサルティングを行う。