同棲とは?
同居や事実婚、ルームシェアとの違いやメリット・デメリットを解説
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 同棲ってどういう状況を指すの?
- 結婚していないカップルが同じ家で一緒に暮らすことを指します。他人である2人以上が共に生活する形態として、同居や事実婚、ルームシェアなどが挙げられますが、同棲は「結婚していないカップル」に限定される点が特徴です。
大好きなパートナーと同棲をしたいと思っても、これまで別々に暮らしてきた2人が一緒に生活をすると考えると、そう気軽に始められるものではありません。同棲をした結果、結婚後の生活がイメージしやすくなったとの声もある一方で、生活上の悩みが増えたとの声もあります。
同棲のメリットとデメリットを理解することで、同棲すべきか否かを判断しやすくなるでしょう。
そこで本記事では、同棲と同居や事実婚、ルームシェアとの違いとともに、メリット・デメリット、同棲前に考えておきたいポイントについて解説します。
同棲とは?同居・ルームシェア・事実婚と何が違うの?
同棲とは、結婚していないカップルが同じ家で一緒に暮らすことです。他人同士が同じ家で暮らす形として同居やルームシェア・事実婚などもありますが、これらと同棲は何が違うのでしょうか。
同居との違い
同居とは2人以上が同じ家で一緒に暮らすことです。この「2人以上」にはカップルも含まれるため、同棲は同居の一種といえるでしょう。
カップルに加えて他の人も一緒に暮らす場合は、同棲ではなく同居といいます。たとえば、カップルのいずれかの連れ子と一緒に暮らす場合が該当します。
ルームシェアとの違い
ルームシェアとは、家族やカップル以外の2人以上が同じ家で一緒に暮らすことです。それぞれが自分の部屋を持ちながら、キッチンやトイレ・浴室・洗面所・リビングなどを共用します。
同棲との違いは、一緒に住むのがカップルかどうかのみです。ただし、同棲においては自分の部屋を持っているかどうかの指定はありません。
事実婚との違い
事実婚とは、婚姻の届出をしていないものの事実上の婚姻関係にあることで「内縁関係」とも呼ばれます。事実婚と認められるためには、次のような要件を満たす必要があります。
・お互いに婚姻の意思がある(結婚式を行っている、親族に人生のパートナーとして紹介しているなど)
・同じ家で暮らしている
・事実上の夫婦として役所に届け出ている
・2人の間に生まれた子を認知している(連れ子でも養子縁組や自身の子どもとして養育している場合は要件を満たす可能性がある)
同棲は、同じ家で暮らしているものの、婚姻しておらず、事実上の夫婦として役所に届出も出していません。
また、同棲は他人同士で同じ家に住んでいるのと同じ扱いのため社会的な保障は一切ありませんが、事実婚は健康保険の扶養に入ることができます。
同棲するメリット
同棲を検討する際は、メリットとデメリットを把握したうえで、自分たちに合っているかどうかを判断することが大切です。
同棲経験のある20代~30代の男女654人に同棲のメリット(同棲して良かったこと)をアンケートしたところ、以下のような結果となりました。
※対象者:全国の同棲経験のある20代~30代男女654人 調査時期:2024年1月
アンケートで聞いた 同棲して良かったと思う理由は?
一緒に過ごせる時間が増える
同棲すると、別々の家に住んでいるよりも一緒に過ごす時間が長くなるため、より多くのコミュニケーションを取れるようになります。仕事帰りに一緒に夕食を作ったり、休日に一緒に出かけたりしやすくなるでしょう。
別々の家に住んでいる場合、仕事や趣味、家事などの都合で会う機会が少なくなりがちです。同じ1年間でも、コミュニケーションの量には大きな差があります。
結婚前にお互いの価値観や生活スタイルがわかる
同棲すると、お互いの価値観や生活スタイルをより深く理解できます。日々のルーティンや価値観の違いなどが明確になれば、生涯のパートナーとして相性が良いかどうかを判断しやすくなるでしょう。
生活費が安くなる
同棲することで、別々で暮らしていたときよりも生活費が安くなる場合があります。
たとえば、それぞれ家賃5万円の1Kに住んでいた場合にかかる費用は、2人で10万円です。家賃8万円の2LDKで同棲すると、それぞれ1万円ずつの合計2万円を節約できます。お互いの負担を軽くしてなるべく多く貯蓄することができるので、特に将来、結婚を考えているカップルには大きなメリットです。
「同棲して良かった」実際の声
アンケートで聞いた 同棲して良かったと思うことは?
- 回答者の声
- 仕事で辛いことがあった際に家に恋人がいることで気持ちが切り替えられたり、安心して過ごすことができた。20代/女性
- 交際相手の一面を知ることができ、生活を続けていけるかどうか見極めることができた。20代/男性
- コンビニやスーパーなど日常的な買い物も夜遅くにでかけるのも2人で出かけられるので、楽しい。20代/女性
- 相手が一人暮らしをしていて、そこに同居する形で同棲を始めたので、家賃、光熱費などの負担が減る。30代/男性
- お互いの価値観のずれなどを理解し歩み寄れることができた。30代/男性
同棲するデメリット
同棲には、一緒に暮らすがゆえに出てくるデメリットもあります。続いて、同棲するデメリットについて詳しく見ていきましょう。
1人の時間が減る
同棲すると、相手と一緒にいる時間が長くなる分、一人の時間が減ってしまう場合があります。趣味に没頭したり自分の部屋でリラックスしたりする時間が限られてしまうことで、息が詰まる感覚を覚える人もいます。
一緒に過ごす時間とは別に、お互いに一人過ごす時間を確保することが同棲を長く続けるコツです。
婚期が遅れる可能性も
同棲を始めると、結婚に対する焦りや必要性を感じなくなり、婚期が遅れる可能性があります。また、相手の価値観や生活スタイルなどで気になる点が出てきた際に、本当にこの人と結婚してもよいのかどうか迷ってしまうでしょう。
同棲によってお互いの長所や短所がより明確になり、結婚すべきかどうか判断しやすくなる一方で、結婚への不安や迷いによって婚期が遅れることがあります。
基本的に「結婚」のような社会的な保障はない
同棲カップルに法的な婚姻関係はないため、結婚によって得られる社会的な保障を得られません。例えば、法律婚および事実婚では配偶者が加入している健康保険の扶養に入れますが、同棲においては相手の社会保険の扶養に入ることはできません。
また、配偶者控除や医療費控除などの適用についても、法律上の婚姻関係にあることが条件です。
「同棲して良くなかった」実際の声
アンケートで聞いた 同棲して良くなかったと思うことは?
- 回答者の声
- 相手のためを思って行動することが減る。お互いに段々と気を配らなくなる。30代/女性
- 生活に関していちいち口出しをしてきて本当にストレスだった。20代/女性
- 生活リズムが違うことで意見の食い違い。20代/女性
- 相手の生活に合わすのが大変でした。なにもかも気を使いました。30代/男性
法的に婚姻関係がなくても、事実婚であることが証明できれば生命保険の受取人になれるなど、婚姻関係と同等のサービスや扱いを受けられるケースもあります。昨今では、カップルの形も多様化しています。社会保障制度やカップル向けのサービスを利用したいと考えている場合は、自治体や企業に問い合わせ、詳細を確認することをおすすめします。
同棲する前に考えておきたいポイント
同棲した結果、納得感を持って結婚に進んだ人もいれば、別れてしまった人もいます。つまり、同棲は結婚や別れのきっかけにもなり得るもの。適当な気持ちで始めるのでなく、どのようにすればお互い気持ちよく生活できるかを考えて準備しましょう。以下で、同棲前に考えておきたいポイントを解説します。
同棲する家の間取りや広さ
同棲を始めるためには、一緒に住む家を選ぶ必要があります。その際は、家の間取りや広さについて慎重に検討しましょう。
ワンルームや1Kは費用面で見ると手軽ですが、普段1人の時間を大切にしている人は、いくら恋人とはいえずっと同じ部屋にいるのがしんどくなってしまう可能性があります。
また、2人分の私物を収納できるスペースも欠かせません。収納が少ない場合、収納棚をリビングや自室に置く必要があるため、スペースが圧迫されます。ある程度の収納スペースがとれる広さが理想的でしょう。
とはいえ、広くなるほど家賃は上がる傾向にあります。予算とのバランスを考えながら選ぶことも大切です。
間取りや広さに加え、立地・予算・築年数など、さまざまな希望があるでしょうが、そのすべてを満たす物件が見つかるとは限りません。物件選びの際には「優先順位」や「許容範囲」をあらかじめ決めておくことをおすすめします。とはいえ、2人の希望が合致するとは限りません。物件探しの前には、1人暮らしの物件を探すとき以上に時間をかけ、希望する条件を整理しましょう。
生活費の管理方法
同棲するカップルの喧嘩やトラブルの火種になりやすいのが、お金の問題です。
同棲すると食費や光熱費といった費用を折半とすることも多く、パートナーの金銭感覚が気になってくる人もいます。
「金銭感覚が合わない」「お金の管理がルーズ」「負担割合が全然違う」このような理由で同棲が解消されることのないよう、お金の管理方法についてはあらかじめしっかり認識を合わせておきましょう。
同棲における生活費の管理方法として、次のような方法が挙げられます。
・共有口座に毎月決まった額を入金して生活費に充てる
・そのときの経済状況を踏まえてお金を出す人を決める
・費用ごとに負担する人を決める
管理の方法に正解はありません。お互いが納得できる生活費の管理方法を決めましょう。また、生活費の節約や貯蓄についてもルールを決めておくと、どちらかが贅沢をして揉めるようなリスクも軽減できます。
家事の役割分担
家事の分担も、お金と同じく同棲で揉めやすい部分です。
一人暮らしであれば自分の世話を自分でするだけなので不満もありませんが、同棲し、相手の分まで洗濯や食事作りをするとなると負担は大きいもの。その負担がどちらかに偏れば、不満が爆発して喧嘩にもつながりかねません。
家事は同棲直後から発生するものなので、早めに割り振りやルールを決めておくのが望ましいでしょう。
普段の家事分担だけでなく、仕事が忙しいときや体調不良のときはどうするのかなども決めておくと、家事に関してもめるリスクをより低減できます。
まとめ
同棲は、結婚前の準備期間として価値観や生活スタイルの違いを把握する重要な機会です。しかし、結婚に対して慎重になりすぎることで婚期が遅れたり、生活費や家事などのルール作りでもめたりする場合があります。
お互いにとって快適な同棲生活を実現するために、思いやりの気持ちやフォローし合う姿勢を持ちましょう。
監修者プロフィール
- 矢野 翔一
- 関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。