住まいのコラム

マンションの耐用年数は47年って本当?寿命がすぎたら住めなくなる?

最終更新日:

  • Xでシェア
  • facebookでシェア
  • LINEでシェア
  • はてなブックマークでシェアする
  • メールでシェアする
監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
マンションの耐用年数は何年ですか?
鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションの場合、会計上の資産価値を減価償却するための法定耐用年数は47年と定められています。とはいえ、法定耐用年数は物理的なマンションの耐用年数は示しているわけではありません。近年のマンションは、建築技術の発展により、100年以上住み続けられるともいわれています。

マンションの購入を検討する人が気にするポイントのひとつに、マンションの耐用年数があります。高額なマンションを購入するのなら、できるだけ長く住み続けられる物件を選びたいものです。マンションの耐用年数は一説には47年や60年ともいわれますが、実際には何年住めるものでしょうか。

今回は法律や会計処理の観点から見たマンションの耐用年数の考え方と、物理的な耐用年数が長いマンションの見分け方についてご紹介します。

マンションの耐用年数は47年!これをすぎたら住めなくなってしまうの?

「マンションの耐用年数は47年」という話を聞いたことはないでしょうか。47年という時間は非常に長く、マンションの耐用年数として適当な期間のようにも思えます。では新築から47年が経過したマンションは、 その後住めなくなってしまうのでしょうか。

「47年」は法定耐用年数

マンションの耐用年数として語られる「47年」は、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の「法定耐用年数」を指しています。

法定耐用年数とは、会計上におけるマンションの金銭的な価値が減損する期間の取り決めです。新築で購入した鉄筋コンクリート造のマンションは、建築から徐々に価値を減損させていき、47年後には資産価値が1円になるように帳簿上で処理されます。

ただし、法定耐用年数はあくまで会計上の資産価値を決めるためのルールであり、実際にマンションを使用できる物理的な耐用年数を示すものではありません。現存する鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションの中に は、50年を超えても現役で住み続けられている建物も多く、60年を超えても現役であり続けるマンションも少なくありません。

長持ちさせるためには大規模な補修やこまめな手入れも必要ですが、鉄筋鉄骨コンクリート造のマンションの物理的な耐用年数は法定耐用年数を上回ると考えてよいでしょう。

減価償却とは?耐用年数との関係は

会計上のマンションの資産価値は「減価償却」と呼ばれる処理によって減損していきます。減価償却処理には法定耐用年数が深く関わっており、定められた法定耐用年数の長さによって、減価償却される額と期間が 決まります。

減価償却と耐用年数の関係

減価償却とは、建物の取得にかかった支出を法定耐用年数で定められた期間に分割して費用計上する会計上の処理です。会計においては、建物などの固定資産の購入代金は購入時に全額費用として処理せず、法定耐 用年数で分割した金額を毎年費用計上するというルールがあります。

仮に4700万円の鉄筋コンクリート造のマンションを購入した場合、代金は費用に計上されず、4700万円の資産として帳簿上に記録されます。その後、47年間かけて毎年100万円ずつ資産を費用に振り替え、47年後に価値がゼロになるように処理するのが減価償却の考え方です。

建物の法定耐用年数は構造別に定められています。住宅用として建てられた建物の構造別の法定耐用年数は以下の通りです。

構造 法定耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄筋鉄骨コンクリート造・鉄骨コンクリート造 47年
レンガ造・石造・ブロック造 38年
金属造※骨格材の肉厚によって変動 19~34年

引用:国税庁「耐用年数(建物/建物附属 設備)」をもとに作成

マンションの寿命はどれくらい?何年住めるかは物件次第

法律により会計上の耐用年数は定められていますが、マンションの寿命ともいえる物理的な耐用年数はどの程度の長さなのでしょうか。

建て替え・取り壊し例は少ない

鉄筋鉄骨コンクリート造のような頑丈な構造のマンションは、法定耐用年数を大きく超えて利用され続けています。実際にマンションとして建てられた建物の取り壊しや建て替えが行われた例はそれほど多くありません。

特に近年は建築技術の著しい進歩により、適切な補修を行えば100年以上住み続けられるともいわれています。今後も建築技術の発展は続くと期待できることから、マンションの寿命はさらに延びていくと考えられます。

一方で、過去に建築された建物は現在の耐震基準を満たしていない場合もあり、安全性に配慮した対応が求められる建物は少なくありません。耐震補強工事により寿命を延ばすマンションも多くありますが、劣化が 激しく安全性が著しく低下している場合には、取り壊しの道を選ぶという選択肢もあるでしょう。

寿命は建築時期・構造などによる

マンションの寿命は、建築時期や構造によって長さが変わります。高層マンションはほとんど鉄筋コンクリート造あるいは鉄筋鉄骨コンクリート造で作られているため、鉄骨造や木造のマンションよりも寿命は長い といわれています。

国土交通省が平成25年に発表した『「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取組紹介』では、鉄筋コンクリート造住宅の平均寿命は68年と示されました。さらには鉄筋コンクリート部材の効用持続年数は120年、外装仕上げにより150年まで延命できるとも発表されています。先述の通り、近年の建築技術は著しい発展を遂げている最中にあることから、鉄筋コンクリート造住宅の寿命が100年を超える日 も近いといえるでしょう。

出典:「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取組紹介

「管理」もマンションの寿命に大きく影響する

マンションの寿命には、管理の質も大きく影響すると考えられています。

建物に限らず、丁寧に扱われたものは粗雑に扱われたものよりも長持ちします。マンションも同様に、廊下のゴミやホコリを掃除し、切れた電球をこまめに交換し、排水口を詰まらせないような掃除をするといった 手入れを積み重ねていくことで、建物自体の痛みや劣化を最小限に抑えることができるでしょう。

管理会社や住人の管理の仕方がマンションの寿命にも関わってくるのです。

監修者

マンションの建て替えが進まない要因の1つに「決議が取れない」ことが挙げられます。建て替えには区分所有者の5分の4の賛成が必要ですが、建て替えには費用がかかることも多く、決議を取ることは容易ではありません。

寿命が長いマンションを見極めるチェックポイント

マンション選びの際に気になるのが、マンションの残り寿命の長さです。すぐに取り壊しになるようなマンションに入居しないためにも、寿命を見極めるためのポイントに注意しながらマンションを選びましょう。

適切なタイミングで大規模修繕が実施されているか

築年数は古くても、適切なタイミングで大規模修繕が行われているマンションは劣化速度が遅いため、残り寿命の長さに期待が持てます。

一般的なマンションでは、12年から15年程度の周期で大規模修繕を行えるように計画が立てられています。もし築年数が古いマンションへの入居を検討しているなら、過去の修繕履歴を確認し、適切な計画に基づい た築年数に応じた修繕の実施結果を確認しておきましょう。

長期修繕計画に向けた積立金額となっているか

寿命を延ばすための修繕を適切に行うためには、無理のない長期修繕計画の立案が大切です。向こう何十年という期間で行われる修繕計画や、修繕を行うための積立金の計画と積立実績を見れば、マンションの寿命を予測しやすいでしょう。

積立金の総額は、国土交通省が定めた「修繕積立金に関するガイドライン」を元に算出した数値と比較することで、積立額の適正さを確認できます。あまりに積立額が多すぎるのも問題ですが、著しく少ない場合に は未来の大規模修繕を行えない可能性があり、今後の寿命の長さには期待できないでしょう。

「建物」以外の修繕も実施・予定されているか

マンションにおける修繕は、建物部分だけが対象ではありません。配管設備や駐車場、共用部の内装やエレベーターなど、建物よりも早く寿命を迎える設備の修繕も必要です。

これらの設備は住民の生活に密着しているものが多く、破損や故障が生じると、住民の日常生活に支障を来す可能性があります。本来は計画的な修繕を行うのが望ましいですが、建物本体に比べて軽微な修繕で問題 を解決しやすいため、壊れたら修繕するというような場当たり的な対応を選ぶ管理組合も多いでしょう。

逆にいえば、備品や設備の修繕計画も長期計画の中に盛り込まれているようなら、そのマンションには建物と住民を大切に扱う管理組合により管理されていると予測できます。

監修者

「購入時にはマンションの管理を見るべき」とはいっても、適切に管理されていて、修繕計画に問題がないか判断することは容易ではありません。仲介会社にはある程度の知識がありますが、マンション管理のプロではないため、マンション管理士事務所やマンション管理のインスペクション(検査)を実施している事業者に見てもらうことも検討しましょう。

まとめ

マンションの耐用年数として語られる47年という数字は、会計上の資産価値を定める法定耐用年数です。帳簿上のマンションの価値は最長47年で無くなりますが、マンションが物理的に使えなくなるわけではありません。マンションの寿命は建築時期や構造、大規模修繕の実施状況によって変わってきます。入居先のマンションを探す際には、修繕記録や長期修繕計画を参考に長く住み続けられるマンションを選びましょう。

監修者プロフィール

監修者
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。
  • Xでシェア
  • facebookでシェア
  • LINEでシェア
  • はてなブックマークでシェアする
  • メールでシェアする
  • お引越し時のインターネット回線の移転手続き方法
  • 【dスマホローン】急な出費にお困りのときに…当日17時までのお申込みで最短即日融資可能!詳細はこちら
  • 【OCN×ドコモ光】10ギガが最大6か月、月額料金ワンコイン!適用条件など詳細はこちら
  1. goo住宅・不動産
  2. 住まいのコラム
  3. マンション購入
  4. マンションの探し方・選び方
  5. マンションの耐用年数は47年って本当?寿命がすぎたら住めなくなる?

関連コラム記事

他のカテゴリからコラム記事を探す