マンションの固定資産税はいくら?目安金額や途中で上がる理由
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- 亀梨 奈美
- 不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
- マンションの固定資産税額の目安は?
- マンションの固定資産税額は10万〜20万円弱が目安ですが、築年数やマンションを購入した地域の地下によっても固定資産税は大きく変動します。また、減税措置の有無や評価替えの影響も受けるため、固定資産税額は必ずしも一定ではないということは押さえておきましょう。
マンションを所有している方には、固定資産税の支払い義務が生じます。しかし、固定資産税の仕組みや計算方法を理解している人は少ないのではないでしょうか。「マンションの固定資産税はいくらくらいなのか」「途中で上がることはあるのか」といった疑問を持つ人も多いでしょう。
そこで本記事では、マンションの固定資産税について、目安金額や計算方法、軽減措置、途中で増額する理由などを詳しく解説します。
マンションを購入予定の人やすでにマンションを所有している人は、ぜひ参考にしてください。
固定資産税とは
固定資産税は、土地や建物などの不動産に対して課される市町村税です。
毎年1月1日時点における不動産の所有者が毎年支払う義務があり、住宅の場合は土地と建物の両方に課税されます。
マンションの場合、購入するのがマンションの一室であるという認識から、土地部分には固定資産税がかからないと思っている人もいるかもしれません。
しかしマンションでは、建物が建っている土地をマンションの総戸数で割った面積を、専有部分に帰属する土地として扱います。そのため、当然土地の固定資産税も発生します。
固定資産税を払う時期
固定資産税の納税通知書は、毎年4〜6月の春頃に届くのが一般的です。固定資産税は市町村税のため、送付スケジュールは自治体によって多少ばらつきがあります。
納付期限は原則として年4回に分けられますが、納税者の希望があれば一括納付することも可能です。
固定資産税の計算方法と固定資産税評価額
固定資産税の計算は、原則として「課税標準額×1.4%」という計算式で算出されます。
計算に用いる課税標準額は、土地と建物それぞれの固定資産税評価額を基に計算しますが、2024年3月現在、宅地と住居の場合はそれぞれ異なる税率の軽減措置が適用されます。
そのため、固定資産税の計算は、土地と建物を別々に行う必要があるということです。
なお、土地と建物の固定資産税評価額は、以下の3つの方法で確認できます。
・固定資産税納税通知書で確認(毎年市区町村から送付)
・役所で固定資産税課税台帳を閲覧する
・役所で固定資産評価証明書を取得する
ここでは、土地と建物それぞれの固定資産税評価額の考え方について解説します。
土地の固定資産税評価額
土地の固定資産評価額は、公示価格の7割程度です。
公示価格というのは、国土交通省が毎年3月に発表する、1月1日時点での全国の標準地の価格を指します。
国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」を利用し、対象の土地に近い標準地の公示価格を利用することで、土地の固定資産税評価額を算出できます。
建物の固定資産税評価額
建物の固定資産税評価額は、再建築価格の5〜7割程度になるのが一般的で、下記の計算式で算出されます。
建物の固定資産評価額=再建築費評点数×経年減点補正率×評点1点あたりの価額
再建築価格というのは、同じ建物を再度建築する場合の建築費のことを指します。経年減点補正率というのは、完成後の経年劣化を考慮して定めた比率のことです。
土地の持分が多く、上層階であるほど時価と固定資産税評価額の乖離が大きいタワーマンションを相続税対策として取得するケースも見られます。しかし、2024年からマンションの相続税評価方法が変わり、いわゆる「タワマン節税」がしにくくなっているためご注意ください。
固定資産税の軽減措置
固定資産税の算出においては、特定の条件を満たす場合に適用される軽減措置があります。
軽減措置は、住宅用地や新築住宅を対象として用意されているもので、納税者の負担を軽減することを目的としています。
住宅用地の特例
住宅用地に対して適用されるのが「住宅用地特例」で、住宅やマンションといった、居住できる建物が建っている土地(住宅用地)が対象です。
土地面積が200㎡以下の住宅用地の場合、「小規模住宅用地の特例」により、固定資産税の課税標準額が6分の1に軽減されます。
さらに、200㎡よりも大きい住宅用地に関しては、200㎡を超える部分の課税標準額が3分の1になります。
なお、土地の固定資産税の軽減措置は、土地の用途が住宅用地である間に適用されるものです。1月1日の時点で宅地以外の用途で使用されている場合は、軽減措置の対象外になるため注意が必要です。
新築住宅の固定資産税の軽減
2026年3月31日までに新築された住宅には、固定資産税額が2分の1になる特例が適用され、一般住宅と長期優良住宅でそれぞれ異なる適用期間が設定されています。
一般住宅適用期間 | |
---|---|
(1)一般住宅 ※(2)以外 |
3年度分 |
(2)3階建以上で耐火構造の住宅 | 5年度分 |
適用期間 | |
---|---|
(1)一般住宅 ※(2)以外 |
5年度分 |
(2)3階建以上で耐火構造の住宅 | 7年度分 |
なお、軽減税率の適用が受けられるのは、居住部分の床面積のうち120㎡が限度です。
新築3000万円のマンションの固定資産税額シミュレーション
では、ここからは新しくマンションを購入した場合の、年間の固定資産税のシミュレーションをしてみましょう。
新築マンションを3000万円で購入した場合を例に、その他の条件は下記のように設定します。
物件種別:区分マンション築年数:新築(2023年竣工)構造:鉄骨鉄筋コンクリート造購入価格:3000万円エリア:千葉県課税床面積:50㎡地価:10.8万円(2023年度地価公示)再建築価格:33.8万円*
*国税庁「建物の標準的な建築価額表」001.pdf (nta.go.jp)
土地の固定資産税額を算出
50㎡あたりの地価は、50㎡×10.8万円=540万円です。
これに70%を乗じることで、土地の固定資産税評価額を算出できます。
土地の固定資産税評価額=540万円×70%=378万円
今回のケースでは200㎡以下の小規模住宅用地のため、固定資産税評価額が1/6になります。
378万円×1/6=63万円
上記で算出した固定資産評価額に1.4%を乗じると、土地の固定資産税額が分かります。
63万円×1.4%=0.882万円
建物部分の固定資産税額を算出
50㎡あたりの再建築価格を求めます。
50㎡×33.8万円=1690万円
上記に1.4%を乗じます。
1545万円×1.4%=23.66万円
新築マンションの場合は、固定資産税額が1/2になる特例が適用されます。
23.66万円×1/2=11.83万円
以上より、3000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税は、下記のようになります。
土地0.882円+建物11.83万円=12.712万円
築30年3000万円の中古マンションの固定資産税額シミュレーション
次に、築30年の中古マンションを購入した場合の、固定資産税額をシミュレーションします。
物件種別:区分マンション
築年数:築30年(1994年竣工)
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
購入価格:3000万円
エリア:千葉県
課税床面積:50㎡
地価:10.8万円(2023年度地価公示)
再
建築価格:26.3万円
土地の固定資産税額はマンションの築年数の影響を受けないため、新築マンションの場合と同様の0.882万円です。
建物部分の固定資産税額を算出
まず50㎡あたりの再建築価格を求めます。
50㎡×26.3万円=1315万円
上記に1.4%を乗じます。
1315万円×1.4%=18.41万円
以上より、築30年のマンションを3000万円で購入した場合の固定資産税は、下記のようになります。
土地0.882円+建物18.41万円=19.292万円
固定資産税が途中で上がるケース
固定資産税はいつまでも同じ額ということではなく、途中で増額するケースもあります。
軽減税率の適用がなくなる
土地や建物の固定資産税には、さまざまな軽減税率や減税措置が用意されています。それらが適用されなくなることにより、固定資産税が増額するということはよくあります。
新築マンションであれば、購入後3〜7年の間は建物の固定資産税が2分の1になる減税が適用されますが、適用期間が終われば本来の固定資産税額に戻ります。
評価替え
3年に一度、土地と建物の固定資産税用価額の「評価替え」により、固定資産税額が増えることもあります。
評価替えというのは、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、土地と建物の価値を評価し直すことを指します。
評価替えにより、所有している土地や建物の固定資産評価額が増えると、必然的に固定資産税評価額も増えるという仕組みです。
2024年は、評価替えの年です。近年は全国的に地価が上がっている一方、足元の経済状況は余予断を許さない状況であることから、土地に係る固定資産税については負担調整措置および条例減額制度が取られることが決定しています。これらの措置により、大幅に税額が上がることが避けられます。
まとめ
固定資産税は、マンションを所有するすべての人に課される税金です。決して安い金額ではありませんが、軽減税率によって税額を抑えることも可能です。納税が遅れれば延滞税などが課されます。毎年課税される ものなので、確実に納付できるように計画を立てておくことが大切です。
※本記事に掲載されている固定資産税の軽減措置については、2024年3月時点の調査に基づき、掲載しております。最新の適用期限等は変更となっている可能性があります。最新の情報は、国土交通省や地方自治体のサイト等でご確認ください。
監修者プロフィール
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。
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