60代女性の一人暮らし。
生活費や老後資金の不安をなくし楽しみを増やす方法
最終更新日:
- 亀梨 奈美
- 不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
- 60代女性の一人暮らしにかかる生活費は?
- 2022年の60〜65歳女性の単身世帯の平均消費支出は「15万1673円/月」です。一方、60歳以上の女性の平均年間賃金は200万円強。すでに年金生活を送っている方も多いと考えられるため、一定の老後資金を確保しておく必要があるでしょう。
長く一人暮らしをしていた人であっても、60代を迎えると、お金のことや心身のことなどに少なからず不安を感じるのではないでしょうか。また、60代になって初めて一人暮らしをすることになり、不安を抱えている人もいるかもしれません。
今回は、60代女性の生活費や年金の実態と一人暮らしをする際の物件の選び方、楽しみを創出するアイデアなどをご紹介します。
60代の一人暮らしで心配なこと
全国の一人暮らしをする60代男女を対象に、60代の一人暮らしで1番心配なことをアンケートで聞いてみました。
※対象者:全国の一人暮らしの60代男女209人 調査時期:2024年1月
アンケートの結果、資金やお金に関する悩みは、健康に次いで多い結果に。60代の一人暮らしの1/4以上が、資金や生活費について大きな不安を抱えていることがわかりました。
アンケートで聞いた 60代の一人暮らしで1番心配なことは?
- 回答者の声
- 定年退職後、年金と貯金だけが頼りなので、円安によるインフレが進み、生活できなくなるのではないかと不安いっぱい。60代/男性
- 収入が年金だけになったら、生活費が賄えない。60代/男性
- 今の住まいは賃貸。年齢を重ねると部屋を借りにくいと聞いているが、新しく部屋を探したりする気力も資金力もない。60代/女性
- 老後資金を貯めているがなかなか思うように貯めることができない。賃貸という点でもこの先住み続けられるのか不安である。60代/女性
- 今は就業しているが、やがて働けなくなった時の、金銭的な不安が大きい。60代/女性
60代女性の一人暮らしの生活費はどれくらい?
退職や老後の暮らしが見据えられ始める60代。気になることのひとつに、家計の収支バランスが挙げられるのではないでしょうか。
一人暮らしとなると、家族の収入を頼りにすることもできません。
60代女性の平均的な収入・支出を見ると、一定程度の老後資金を用意しておく必要性は高いものと考えられます。
生活費の平均と内訳
政府の家計調査によれば、2022年の60〜65歳女性の単身世帯の平均消費支出は「15万1673円/月」だといいます。その内訳は、次のとおりです。
項目 | 費用 |
---|---|
食料 | 37610円 |
住居 | 14163円 |
光熱・水道 | 15055円 |
家具・家事用品 | 7149円 |
衣類等 | 4501円 |
保健医療 | 8585円 |
交通・通信 | 14578円 |
教養娯楽 | 15336円 |
その他 | 34696円 |
60歳以上女性の平均賃金は200万円強
厚生労働省によれば、女性の平均年間賃金は、55〜59歳をピークに低下していきます。
2022年の60〜65歳女性の平均年間賃金は、237.3万円でした。65〜70歳となると216.2万円まで下がります。
年金はどれくらいもらえるの?
60歳以上の女性は、退職し、年金生活を送っている方も少なくありません。
厚生年金の受給額は男女差が多く、厚生労働省の公表する「厚生年金保険・国民年金事業年俸」によれば、2021年度の月々の厚生年金受給額の平均は、男性が16万円を超えている一方、女性は10万円足らずということです。
60代からの一人暮らし。賃貸物件選びのポイントは?
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、高齢単身世帯のうち3割程度が賃貸住宅に入居しているといいます。
60代の方が一人暮らしをする際には、次のポイントに注意して物件探しを進めていきましょう。
利便性の高い立地を選ぶ
60代は、多くの方にとって、生活スタイルが大きく変わる転換期です。身体の不調や足腰の弱りも感じやすくなる年齢に差し掛かっています。
ただこれらの点は個人差が大きく、バリバリと働き、年齢を感じさせないアクティブな方も多くいらっしゃいます。しかし、物件選びでは「今」の生活スタイルや身軽さだけでなく「一歩先」の暮らしや働き方を視野に入れることが大切です。
在職中は「駅からの距離」が利便性に大きく影響しますが、離職後は生活利便施設や医療機関が身近にあると暮らしやすくなります。
危険性の低い物件を選ぶ
60代からの物件選びでは、防犯面やバリアフリー性にも気を配りたいところです。空き巣や詐欺といった高齢者を狙った犯罪は増えているといいます。必要に応じて、次のような設備や防犯対策が整っている物件も選択肢に加えましょう。
・オートロック完備
・防犯カメラ稼働
・管理人常駐
・ホームセキュリティ導入
また、今はまだ階段の上り下りや段差につまづくことがなかったとしても、エレベーター付きかつ居室内の水まわり部分などに段差のないバリアフリー物件が60代の方にはおすすめです。
入居審査に通らなかったらどうする?
60代以上の方は、現役世代と比べると、収入面や健康面を理由に入居を断られてしまう可能性が高いといえます。
しかし、超高齢化社会となった日本で年齢を理由に入居を断ってしまうことは、家主にとっても機会損失です。従って、1つの物件で入居を断られてしまったからといって、他の入居審査も通らないということはありません。
また、連帯保証人を立てたり、保証会社を利用したりすることで、家主の不安を払拭できるケースもあります。
住まいの選択肢のひとつとして、高齢者向けの賃貸住宅も検討してみましょう。高齢者施設やサービス付き高齢者向け住宅より自由度が高い一方、高齢者でも入居しやすく、緊急駆けつけサービスなどが提供されている物件も多いため、60代からでも安心して入居できます。
老後の不安をなくして楽しむアイデア
収入面や体調面などから、老後の生活に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一定の不安があるからこそ、それを解消するための準備ができるのであり、これまで生きてきた中で創り上げてきた「自分」という人間の価値や人脈、家族が、60代になって損なわれるというわけではありません。最後に、老後の不安をできる限り払拭し、楽しく暮らしていくためのアイデアをご紹介します。
セカンドキャリアを築く
収入面や生きがいの創出を不安視している方は、セカンドキャリアを築くことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。近年では、少子高齢化や人口減少が進んでいることから、シニア層の求人も充実しています。フルタイムで働かずとも、仕事があることで一定の収入が得られ、メリハリのある生活が送れます。
これまでの「仕事」は主に「ライスワーク=ご飯を食べるための仕事」に重きを置いていた方も多いことと思います。セカンドキャリアは、自分が好きなことや社会貢献などを主な目的とした「ライフワーク=人生をかけてやりたい仕事」を見つけるチャンスでもあります。
子どもとの同居・近居
お子さんがいる場合は、同居や近居も検討してみましょう。
昨今では共働き世帯が増加しており、現役の子育て世帯の多くは子どものお迎えや習い事の送迎に、家事に、仕事に……毎日忙しく生活しているものです。子世帯からすれば、親が近くに住んでいてくれるだけで心強いもの。最近では「子育て」ならず「孫育て」という言葉も多くのメディアで散見されます。
親からしても、子や孫と過ごせる時間が増えるため寂しさはなくなり、老後生活の豊かさも向上するのではないでしょうか。同居であれば、賃料や光熱費などの負担も下がります。
コミュニティに積極的に参加する
老後は、これまでできなかったことにチャレンジするチャンスでもあります。ジムやプールで体を鍛えたり、友人と旅行を楽しんだりするのもよいでしょう。
お金をかけずにコミュニティに参加することもできます。たとえば、自治会活動やボランティアに参加すれば周りの助けにもなるため、やりがいにも繋がりやすいものと考えられます。
「人生100年時代」とも言われている昨今、「老後」の時間は以前よりはるかに長くなりました。適切な住まいを選ぶことは、経済面の不安をなくし、心身の健康を損なわないため、そして老後を楽しむための基盤となります。
まとめ
近年では、60歳を超えても、仕事に、趣味に、孫育てに、忙しくしている人も少なくありません。60代女性の一人暮らしに、不安や寂しさも感じることもあるでしょう。しかし、実態と自分の状況をしっかり把握し、必要な準備をすることで、これまでにない楽しみや生きがいが創出できるはずです。
監修者プロフィール
亀梨 奈美
株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。