一人暮らしの初期費用は50万円?100万円?
徹底シミュレーション
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- 一人暮らしのスタートに必要な初期費用はいくら?
- 入居に伴う初期費用は賃料のおよそ5~6ヵ月分といわれています。さらに引越し業者に支払う代金や家具・家電の購入費が20~40万円ほど。合計で賃料が4万円なら45.5万円~61万円、7万円なら60.5万円~79万円、10万円なら75.5万円~97万円程度になるものと考えられます。
賃貸住宅で新生活をスタートさせるとき、初期費用の支払いは大きな負担になる要因のひとつです。賃貸住宅の初期費用の相場は「50万円」とも「100万円」ともいわれていますが、実際には1ヵ月あたりの賃料や家主の意向によって異なります。
今回は、主要都市(東京都23区・大阪市・福岡市)ごとの初期費用の徹底シミュレーション。物件選びの参考にしてみてください。
賃貸住宅の初期費用の内訳
貸住宅の初期費用は、地域や物件のタイプ、契約内容などによって異なる場合がありますが、一般的には次のような項目が挙げられます。
敷金
「敷金」とは、入居者が賃貸分件を借りる際の「保証金」や「担保」といった役割のある費用です。万一、家賃の滞納や不払いがあった場合は敷金から補填されます。また、退去時の原状回復費に充てられることもあります。契約内容などにもよりますが、敷金は退去時に返還されることもあります。
礼金
「礼金」は「家主への謝礼」という役割のある費用です。基本的に、敷金のように返還される費用ではありません。
前払い賃料
「前払い賃料」とは、一般的に賃貸契約を締結時に支払う「翌月の賃料」と「契約日に応じて日割計算した当月分の賃料」を指します。フリーレント物件など、前払い賃料の支払いが不要な賃貸物件も見られます。
仲介手数料
「仲介手数料」とは、賃貸仲介会社に支払う手数料を指します。仲介手数料は成功報酬であるため、支払うタイミングは取引が成立したときです。
火災保険料
「火災保険」とは、主に火災による損失をカバーする保険です。火災だけでなく、盗難や水災、風水害などにより家財や部屋が破損した場合も補償されます。火災保険の加入は入居者の義務ではありませんが、多くの物件が火災保険の加入を必須要件としています。
保証料
「保証料」とは、保証会社に加入するための費用です。入居者が家賃を滞納した場合、保証会社が不払い家賃を立て替えて家主に支払います。
引越し費用
一人暮らしを始めるには、転居が伴います。引越し業者に荷物の搬入出や配送を依頼すると、引越し費用がかかります。
家具・家電購入費
新生活をスタートさせるには、新たな家具や家電も必要です。特に初めて一人暮らしを始める場合は、冷蔵庫や洗濯機、デスクやベッドなど、生活に欠かせない家具・家電を購入する必要があるため高額になりがちです。
家具・家電付きの物件を選択すれば、購入費用を抑えられるだけでなく、将来的な引越し費用を抑えられます。しかし、家賃が他の物件と比べて高めに設定されているため、総合的にどちらが得なのかよく考えてから決めましょう。
一人暮らしの家賃相場
一人暮らしの家賃相場は、エリアによって大きく異なります。ここでは、東京都23区・大阪市・福岡市の各自治体の家賃相場を紹介します。
東京都23区
goo住宅・不動産(2023年7月時点「東京都の家賃相場」)によれば、東京都23区のアパート(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は5.8万円〜8.8万円、マンション(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は5.8万円〜13.0万円となっています。
千代田区 | アパート | 8.8万円 |
---|---|---|
マンション | 12.7万円 | |
中央区 | アパート | 7.8万円 |
マンション | 10.2万円 | |
港区 | アパート | 8.4万円 |
マンション | 13.0万円 | |
新宿区 | アパート | 6.6万円 |
マンション | 9.5万円 | |
文京区 | アパート | 6.2万円 |
マンション | 8.6万円 | |
台東区 | アパート | 6.4万円 |
マンション | 9.5万円 | |
墨田区 | アパート | 6.0万円 |
マンション | 9.7万円 | |
江東 | アパート | 7.0万円 |
マンション | 10.5万円 | |
品川区 | アパート | 6.9万円 |
マンション | 9.2万円 | |
目黒区 | アパート | 7.3万円 |
マンション | 9.9万円 | |
大田区 | アパート | 6.2万円 |
マンション | 7.4万円 | |
世田谷区 | アパート | 6.3万円 |
マンション | 7.5万円 | |
渋谷区 | アパート | 7.2万円 |
マンション | 11.7万円 | |
中野区 | アパート | 5.9万円 |
マンション | 7.7万円 | |
杉並区 | アパート | 5.9万円 |
マンション | 6.8万円 | |
豊島区 | アパート | 6.2万円 |
マンション | 7.6万円 | |
北区 | アパート | 5.8万円 |
マンション | 7.2万円 | |
荒川区 | アパート | 6.5万円 |
マンション | 7.2万円 | |
板橋区 | アパート | 5.7万円 |
マンション | 6.5万円 | |
練馬区 | アパート | 5.7万円 |
マンション | 6.2万円 | |
足立区 | アパート | 5.8万円 |
マンション | 6.4万円 | |
葛飾区 | アパート | 5.8万円 |
マンション | 6.2万円 | |
江戸川区 | アパート | 5.8万円 |
マンション | 5.8万円 |
引用:goo住宅・不動産(2023年7月時点「東京都の家賃相場」)
大阪市
同じくgoo住宅・不動産(2023年7月時点「大阪府の家賃相場」)によれば、大阪市のアパート(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は4.3万円〜7.6万円、マンション(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は3.1万円〜6.8万円となっています。
都島区 | アパート | 6.2万円 |
---|---|---|
マンション | 3.8万円 | |
福島区 | アパート | 4.7万円 |
マンション | 5.5万円 | |
此花区 | アパート | 6.6万円 |
マンション | 4.5万円 | |
西区 | アパート | 6.4万円 |
マンション | 5.7万円 | |
港区 | アパート | 4.3万円 |
マンション | 5.9万円 | |
大正区 | アパート | 6.0万円 |
マンション | 4.0万円 | |
天王寺区 | アパート | 5.0円 |
マンション | 5.7万円 | |
浪速区 | アパート | - |
マンション | 5.7万円 | |
西淀川区 | アパート | 5.7万円 |
マンション | 6.0万円 | |
東淀川区 | アパート | 5.5万円 |
マンション | 3.2万円 | |
東成区 | アパート | 5.7万円 |
マンション | 4.1万円 | |
生野区 | アパート | 5.8万円 |
マンション | 3.1万円 | |
旭区 | アパート | 6.1万円 |
マンション | 3.3万円 | |
城東区 | アパート | 6.0万円 |
マンション | 3.3万円 | |
阿倍野区 | アパート | 5.6万円 |
マンション | 4.0万円 | |
住吉区 | アパート | 4.9万円 |
マンション | 3.1万円 | |
東住吉区 | アパート | 5.1万円 |
マンション | 3.8万円 | |
西成区 | アパート | 5.0万円 |
マンション | 3.8万円 | |
淀川区 | アパート | 4.9万円 |
マンション | 4.2万円 | |
鶴見区 | アパート | 3.5万円 |
マンション | 4.0万円 | |
住之江区 | アパート | 5.2万円 |
マンション | 3.8万円 | |
平野区 | アパート | 5.0万円 |
マンション | 3.8万円 | |
北区 | アパート | 6.0万円 |
マンション | 5.9万円 | |
中央区 | アパート | 6.8万円 |
マンション | 7.6万円 |
引用:goo住宅・不動産(2023年7月時点「大阪府の家賃相場」)
福岡市
同じくgoo住宅・不動産(2023年7月時点「福岡県の家賃相場」)によれば、大阪市のアパート(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は4.3万円〜7.6万円、マンション(ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場は3.1万円〜6.8万円となっています。
東区 | アパート | 3.3万円 |
---|---|---|
マンション | 6.4万円 | |
博多区 | アパート | 4.0万円 |
マンション | 5.7万円 | |
中央区 | アパート | 3.8万円 |
マンション | 5.6万円 | |
南区 | アパート | 3.5万円 |
マンション | 4.2万円 | |
西区 | アパート | 4.0万円 |
マンション | 4.3万円 | |
城南区 | アパート | 3.0万円 |
マンション | 3.8万円 | |
早良区 | アパート | 4.2万円 |
マンション | 4.6万円 |
引用:goo住宅・不動産(2023年7月時点「福岡県の家賃相場」)
一人暮らしの初期費用は最低50万円?複数ケースをシミュレーション
賃貸住宅の初期費用の相場は「50万円」とも「100万円」ともいわれていますが、実際にはどの程度が相場なのでしょうか。ここでは、主要都市の賃料を踏まえ「賃料4万円」「賃料7万円」「賃料10万円」の3つのケースにおける初期費用の金額をシミュレーションします。
各初期費用の相場
初期費用の多くは「賃料○ヵ月分」と設定されているケースが多いものです。以下に、賃貸住宅の初期費用の相場を示します。
賃貸住宅の初期費用 | 費用相場 |
---|---|
敷金 | 賃料の1ヵ月分 |
礼金 | 賃料の1ヵ月分 |
前払い賃料 | 賃料の1〜2ヵ月分 |
仲介手数料 | 賃料の1ヵ月分 |
火災保険料 | 5,000円〜1万円程度 |
保証金 | 賃料の1ヵ月分 |
引越し費用 (1K〜1DK・100Km程度) |
5万円〜6万円 |
家具・家電購入費(概算) | 20万円〜30万円 |
参考:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査報告書」「関東運輸局」をもとに作成
賃貸住宅入居に伴う初期費用は、月額賃料の5〜6ヵ月分。それに加え、引越し費用や家具・家電の購入費で20万円〜40万円ほどかかると考えておきましょう。
ただし、引越し費用については、時期や時間帯、曜日、荷物の量による変動が非常に大きいため、必ず引越し業者に見積もりをとって判断するようにしてください。
賃料4万円の場合
上記の初期費用の相場を踏まえると、家賃4万円の賃貸住宅で一人暮らしを始めるときの初期費用の相場は、次のようになります。
賃貸住宅の初期費用 | 費用相場 |
---|---|
敷金 | 4万円 |
礼金 | 4万円 |
前払い賃料 | 4万円〜8万円 |
仲介手数料 | 4万円 |
火災保険料 | 5,000円〜1万円程度 |
保証金 | 4万円 |
引越し費用 (1K〜1DK・100Km程度) |
5万円〜6万円 |
家具・家電購入費(概算) | 20万円〜30万円 |
合計 | 45.5万円〜61万円 |
賃料7万円の場合
家賃7万円の賃貸住宅で一人暮らしを始めるときの初期費用の相場は、次のとおりです。
賃貸住宅の初期費用 | 費用相場 |
---|---|
敷金 | 7万円 |
礼金 | 7万円 |
前払い賃料 | 7万円〜14万円 |
仲介手数料 | 7万円 |
火災保険料 | 5,000円〜1万円程度 |
保証金 | 7万円 |
引越し費用 (1K〜1DK・100Km程度) |
5万円〜6万円 |
家具・家電購入費(概算) | 20万円〜30万円 |
合計 | 60.5万円〜79万円 |
賃料10万円の場合
家賃10万円の賃貸住宅で一人暮らしを始めるときの初期費用の相場は、次のとおりです。
賃貸住宅の初期費用 | 費用相場 |
---|---|
敷金 | 10万円 |
礼金 | 10万円 |
前払い賃料 | 10万円〜20万円 |
仲介手数料 | 10万円 |
火災保険料 | 5,000円〜1万円程度 |
保証金 | 10万円 |
引越し費用 (1K〜1DK・100Km程度) |
5万円〜6万円 |
家具・家電購入費(概算) | 20万円〜30万円 |
合計 | 75.5万円〜97万円 |
初期費用を抑えるポイント
一人暮らしを始めるにあたっての初期費用は、50万円以上かかることも少なくありません。しかし、次のような方法で負担を軽減することが可能です。
敷金・礼金無しの物件を選ぶ
賃貸住宅に入居するときの初期費用のうち「敷金」と「礼金」を無しとしている物件は、少なからずあります。敷金、礼金は各賃料1ヵ月分ほどなので、このような物件を選ぶことで、一人暮らしの初期費用の負担を軽減できます。
敷金・礼金無しの物件は、不動産ポータルサイトで物件検索するときに条件を指定すれば、簡単に見つけることができるでしょう。
敷金・礼金を簡単にわかりやすく解説!いつ払う?返ってくるの?
フリーレント物件を選ぶ
フリーレント物件とは、入居から一定期間の賃料が無料の物件を指します。多くの場合、初期費用のうち前払い賃料の支払いがなくなるため、入居時の負担が軽減します。
「フリーレント」も不動産ポータルサイトの絞り込み条件の項目のひとつになっていることが多いです。チェックをつけて物件検索をしてみましょう。
フリーレント賃貸物件とは?メリット・デメリットや注意点、探し方を解説
仲介手数料が安い物件を選ぶ
不動産仲介会社に支払う仲介手数料もまた、相場が月額賃料の1ヵ月と決して安い金額ではありません。ただ、「月額賃料の1ヵ月分」というのは、法律で決められた賃貸仲介会社が受領できる上限額です。下限は定められていないため、月額賃料1ヵ月分以下の金額としている物件も少なくありません。
家主に初期費用減額を交渉する
初期費用の中でも、敷金や礼金、賃料は家主の意向で決まるため、家主に対し、これらの費用の減額を交渉するのも初期費用を抑える手段のひとつです。ただ、人気の物件や賃貸市場の繁忙期では、交渉を受け入れてもらうことは難しいでしょう。
閑散期を狙う
初期費用を抑えられる可能性が高いのが、新生活を始める人の少ない「閑散期」を狙うことです。
閑散期は家主や賃貸仲介会社への減額交渉も通りやすく、引越し費用も安く抑えられます。
閑散期は、6月〜8月、あるいは11月、12月などです。入居時期を調整できるのであれば、この方法も検討してみましょう。
閑散期を狙う方法は、初期費用だけでなく家賃の値下げなどの交渉を有利に進めやすい傾向があります。しかし、閑散期は選択できる物件が限られているため、好条件の物件を希望している方は、入れ替わりが多い繁忙期のほうがよいでしょう。
まとめ
一人暮らしの初期費用は、住む場所や生活スタイルによって大きく変わります。今回のシミュレーションにより「50万円」や「100万円」という数字は、あながち間違いではないことがわかりました。しかし、これらの数字は、あくまで目安にすぎません。
実態に即した初期費用を計算するには、賃料に加え、敷金や礼金、仲介手数料がどの程度かかるか知らなければなりません。また、家具や家電の購入にかかる費用は、自分の好みや理想の生活次第でもあります。まずは、どのような場所でどのような暮らしをしたいのかイメージし、予算を踏まえて物件を選ぶことから始めてみましょう。
一人暮らしの費用や失敗しないコツについてはこちらでも詳しく解説しています。
初めての一人暮らしで失敗しないコツは?まずやること・必要なものリスト
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。