フリーレント賃貸物件とは?
メリット・デメリットや注意点、探し方を解説
最終更新日:
- 矢野 翔一
- 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
- フリーレントとは?
- フリーレントは、入居後の家賃を一定期間無料にする賃貸契約上の取り決めです。物件や時期によって数日~数ヵ月と差があり、普段はフリーレント期間を設けていない物件もあります。原則として無料になるのは家賃だけで、管理費や共益費、敷金・礼金といった費用は無料になりません。
近年、広告の一部に「フリーレント」と記載されている物件が増えています。入居者にとってお得な取り決めといわれるフリーレントとは、具体的にどのような制度なのでしょうか。
今回はフリーレントの基礎知識と、メリット・デメリットについてご紹介します。
賃貸のフリーレントとは
「フリーレント」と聞いて、何かが無料になるというイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。ここでは、賃貸契約を結ぶ直前で話題に出やすいフリーレントの基礎知識を紹介します。
フリーレントは一定期間家賃が無料の契約のこと
フリーレントとは、入居後の家賃を一定期間無料にする賃貸契約上の取り決めです。原則として大家さんが決めた無料期間中は家賃の回収をしない代わりに、入居者にある程度の期間は最低でも住み続けることを求める契約形態のことで、近年導入する物件が増えています。
フリーレント期間中に家賃は発生しませんが、無料期間中も契約期間として扱われます。
たとえば2年契約の物件に2023年4月1日に入居した場合、4月中はフリーレントの契約を結んだとしても、契約期間は2025年3月31日までです。
なお、原則として無料になるのは家賃のみで、管理費・共益費の支払いは発生します。2ヵ月のフリーレント期間がある家賃5万円共益費5000円の物件に入居した場合、最初の2ヵ月は5000円のみ支払いで、3ヵ月目以降の支払額が5万5000円になります。
賃料が無料になる期間は物件ごとに異なる
家賃が無料になるフリーレント期間は、すべての物件で統一されているわけではありません。無料期間の設定は物件や契約時の状況によって異なり、短ければ数日程度、長ければ3ヵ月程度、設けられます。
無料期間の長さは大家さんの一存で決められることが多く、間取りの広さが期間に影響することは基本的にありません。ワンルームや1Kだからフリーレント期間が短くなるといったことはなく、あくまで大家さんがさまざまな条件をもとに判断した期間で設定されます。
フリーレントにする理由
賃貸経営において家賃収入はなくてはならないものですが、なぜフリーレントを設定する物件があるのでしょうか?
フリーレントを設定する物件の大家さんは、すぐにでも入居者を決めたいと考えています。自然に入居希望者が集まるならフリーレント期間を設ける必要はありませんが、なかなか次の入居者が決まらずに、半年以上先の繁忙期が来るのを待たなければならないような物件なら、最初の数ヵ月の家賃を無料にしてでも契約を決めたいと考えます。
また、そこまで切羽詰まっていない状況であったとしても、契約前の最後の一押しに使われるケースは少なくありません。家賃がタダになるというわかりやすいアピールは、入居者にとっても大きなメリットになるのは間違いないでしょう。
フリーレント賃貸物件のメリット
最初の一定期間家賃が無料になるフリーレント。この家賃の無料化に伴うメリットとして以下のものがあります。
初期費用を抑えられる
フリーレントにより無料になる家賃は、契約時の初期費用に含まれる家賃分が該当します。初期費用は家賃の5~6ヵ月分程度のまとまった支払いが必要になるため、少しでも抑えたいと思うのは自然なことでしょう。
フリーレントにより1ヵ月分程度の家賃の支払いが無くなるなら、それだけお金の用意がラクになります。
二重家賃の期間がない
賃貸物件から別の賃貸物件へ引っ越すときには、転居前の物件と新居の契約が重複する期間が発生するのが一般的です。両方の家賃を支払う二重家賃の期間が発生しますが、フリーレントの期間があれば新居側の支払い開始が遅くなるため、2つの物件の家賃を支払う期間が無くなります。
二重家賃を避けられる点は、金銭面のメリットとして大きいでしょう。
焦らずに引越しできる
フリーレントによる二重家賃期間の回避は、精神的にも大きなメリットがあります。
引越し期間はライフラインの解約や新居での再契約、住民票の移転など対応しなければならない手続きがたくさんあります。二重家賃で損をする期間を短くするために手続きを急いだ結果、手続き漏れやミスが多発し、余計な手間や出費が発生するというケースも珍しくありません。
フリーレントにより二重家賃期間が無くなれば、精神的に追われる理由が1つ無くなり、落ち着いて手続きを進めやすくなるでしょう。また、家賃が重複しない範囲でゆとりを持った引越しスケジュールを組むことが可能に。安く対応してくれる引越し業者をじっくり選ぶゆとりも持てそうです。
フリーレントのデメリットと注意点
入居者にとって得ばかりの制度に見えるフリーレントですが、家賃を無料にする裏に見えない落とし穴が潜んでいる場合があります。初期費用の安さにばかり注目せず、ほかの条件で損をしないようにじっくりと検討しましょう。
短期解約違約金が発生する
フリーレント物件は、一定期間の家賃を無料にする代わりに、短期解約違約金の特約を結ばなければならない場合があります。短期解約違約金とは「入居後1年未満で退去する場合には、フリーレント期間分の家賃を支払う」といった、短期間での解約に対するペナルティです。
入居時点では長く住み続けるつもりでいたとしても、急な転勤命令によるほかの地域への転居や、近隣住民が引き起こすトラブルを回避するための退去など、短期間で解約せざるを得ない場合があります。しかし、短期解約違約金の特約が結ばれてしまえば、いかなる理由があっても定められた違約金を支払わなければなりません。
短期解約違約金がある物件に住む際には、1~2ヵ月のフリーレントと引き換えに短期退去で支払いが発生するリスクを念頭に置いておく必要があるでしょう。
家賃以外の費用が無料とは限らない
フリーレントで一定期間の家賃が無料になっても、ほかの費用が無料になるとは限りません。毎月家賃と一緒に支払う費用に管理費や共益費がありますが、それらはフリーレントの対象ではありません。毎月の支払いが家賃6万円+共益費1万円だった場合、フリーレント期間中は1万円だけ支払う必要があります。
家賃・管理費等の設定によっては、毎月の支払いが完全に無料にはならないため、契約内容を確認し滞納しないように注意しましょう。
家賃が相場より高い可能性も
フリーレントは一見支払いが少なくなるように見えますが、もともと家賃が高く設定されているというケースがあるため、周辺の物件の相場も確認しておく必要があります。
例として、2ヵ月のフリーレント期間が設けられる家賃6万円の物件Aと、同地域にある家賃5万円の類似物件Bの年間支払い家賃を比較すると
A …… 6万円×10ヵ月=60万円
B …… 5万円×12ヵ月=60万円
となり、トータルの支払い金額に差が出ないことも考えられます。それどころか、2年目以降の物件AはBよりも高額の家賃を支払わなければならないため、長い目で見れば得であるとはいえないかもしれません。
ただし、長期的な支払い家賃よりも初期費用の安さを重視するという選択もあるので、一概に損をしているとはいえません。また、物件Aが1万円多く家賃を支払ってでも住みたい部屋なら、むしろ良い選択であるとも考えられます。
住まい選びには金額だけでは図れない価値があります。トータルの支払い金額を含め、前向きな選択になるように考えてみるとよいでしょう。
フリーレントと家賃の値上げを組み合わせ、トータルで損をしないような経営戦略を練る大家さんも少なくありません。住居費を少しでも抑えたいと考えている方には、フリーレント物件の家賃が適正なのか、周辺の類似物件の家賃相場を比較することをおすすめします。
フリーレント物件の探し方
最近はフリーレント物件が増加しており、シーズンを問わず不動産広告が出ています。次に紹介する探し方を参考に、お得に入居できる物件を見つけましょう。
条件を絞って検索する
基本的な探し方が不動産ポータルサイトでの検索です。フリーレントは数こそ少ないものの、すでに一般的な契約条件の1つとして広く認知されています。
大半の大手ポータルサイトでは、フリーレント付きの物件に絞った検索が可能です。検索方法は条件のボックスにチェックを入れるだけ。まずは一度どのようなフリーレント物件の広告が出ているか確認してみましょう。
不動産会社に紹介してもらう
検索サイトを使わずに、地域の不動産会社に紹介してもらうのも良い探し方です。
広告ではフリーレントに触れていないとしても、話をすれば前向きに検討してくれる大家さんはたくさんいます。不動産会社は、大家さんの性格などネット上に出てこない情報も多く持っているもの。ひと言相談してみると思わぬ掘り出し物を紹介してくれるかもしれません。
交渉も可能
過去にフリーレントを実施したことがない物件でも、交渉次第で無料期間を作ってくれる場合があります。特に1~3月の繁忙期を避けた期間に相談すれば、前向きに検討してくれる可能性が。繁忙期前に契約が決まるのは大家さんにとっても不動産会社にとってもうれしいことです。話を持ちかける価値は十分にあるでしょう。
ただし、フリーレントに慣れていない大家さんは、2~3ヵ月といった長期間のフリーレントに難色を示すかもしれません。あまり要求をしすぎると断られてしまうおそれがあるので、月末までの数日+翌月1ヵ月といった短期を目安に、不動産会社に相談しながら交渉を進めましょう。
フリーレントの交渉が最適とは限りません。長期間の居住を考えているのであれば、家賃を下げてもらったほうがトータルの家賃負担を抑えられます。初期費用を抑えたいのか、家賃を抑えたいのかよく考えてから交渉しましょう。
まとめ
フリーレントはここ数年の間で急速に広がりだした契約条件です。大家さんからすれば入居者を集めやすくなり、入居者から見れば初期費用を下げられるため、両者にとってメリットの大きい契約形態として広く導入されています。
フリーレント物件は大手不動産会社のポータルサイトでも検索できます。初期費用を抑えたいのであれば、まずはフリーレントに対応している物件から優先して物件選びを進めるとよいでしょう。
監修者プロフィール
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。