住まいのコラム

騒音は警察に通報してもいい?
マンション・アパートの隣人トラブルの対処法や注意点

最終更新日:

監修者
亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト/株式会社real wave代表取締役
近隣からの騒音は警察に通報してもいい?
家主や管理会社から注意されても騒音がやまないようなら、警察への相談も検討しましょう。緊急性や事件性がない相談は#9110、現在進行形で問題が発生している場合は110番が窓口です。問題が現在進行形で発生していない場合には、被害届を出すという選択肢もあります。

マンションやアパートには、自分以外にも多くの入居者が生活しています。すべての人が同じリズムで生活しているわけではないため、近隣からの騒音に悩まされることも珍しくありません。

隣人間のトラブルは管理人が間に入り解決するのが望ましいですが、中には管理人の忠告が受け入れられず、生活の安全が脅かされるような騒音の被害に遭うこともあります。そのような場合、被害者はどのような対処を行えるのでしょうか。

今回は隣人による騒音トラブルへの対処方法と、対処の際の注意点についてご紹介します。

騒音トラブルはコロナ禍で増加傾向にある

賃貸物件では、どの時代でもさまざまな形の入居者間トラブルが発生しており、特に騒音問題は代表的なトラブルとして広く知られています。
特に近年はコロナ禍の影響により、以前よりも騒音トラブルが頻発しているといわれています。

騒音にかかる苦情の件数の推移

環境省が令和5年2月に発表した「令和3年度騒音規制法等施行状況調査の結果について」によれば、令和3年度(2021年)に全国の自治体に寄せられた騒音に関する苦情のうち、家庭生活に係る苦情が1389件となりました。

平成23年度(2011年)から平成28年度(2016年)にかけては、1005件から1015件とほぼ横ばいで推移していましたが、その後の5年では約1.4倍まで急増する結果となっています。

この背景にあるのは、テレワークに代表される在宅者の急増です。コロナ禍により外出を控える人が増えた結果、家庭から発せられる生活音が増加。同時に生活音を聞く側も増えたため、家庭生活における騒音トラブルが増加したと考えられます。

出典:環境省「令和3年度騒音規制法等施行状況調査の結果について」

「生活騒音」とは具体的にはどんな騒音?

前述の家庭生活に係る苦情の多くは、いわゆる「生活騒音」が原因であると考えられます。

生活騒音とは、日常的な生活行動や家庭用機器から発せられる音が対象です。生活騒音を出している側は必ずしも騒音であると認識しているとは限りませんが、騒音と感じる側には非常に深刻な問題として受け止められるケースが少なくありません。

生活騒音は隣家・隣室との距離が近いほど感じやすいため、主に人口が集中する都市部の集合住宅で問題になる傾向があります。都市部への人口流入が進む現代において、生活騒音による近隣トラブルは今後さらに深刻な社会問題になると考えられるでしょう。

以下は、実際に騒音被害を経験した人たちに行ったアンケートです。
※対象者:全国の20代~60代男女572人 調査時期:2024年1月

特につらかった騒音としてもっとも多かったのが「大きな声・騒ぐ声」で33.9%。生活音は次いで多く、26.0%。
騒音で悩んだ人のうち、1/4以上は生活音に悩まされていたということがわかります。

アンケートで聞いた 特につらかった騒音は?

大きな声・騒ぐ声:33.9% 歩く音・ドアの開閉・家電の音など生活音:26.0% 子どもの声・遊んでいる音:12.8% テレビやステレオ、楽器の音:11.4% ペットの鳴き声:5.1% その他:10.8%
回答者の声
下の階に住む人が寝る頃になっては、シャワーを浴びたり、お風呂に入ることが聞こえて、音が鳴り響き、寝れない。30代/女性
上の部屋の人のテレビや音楽を聞く音が、とても大きくて迷惑。どんな人かもわからないので、言いに行くのもためらってしまう50代/女性
壁が薄い物件だったので、隣の部屋の騒ぐ声、水道の音などの生活音など聞こえる音がストレスになりました。50代/男性
洗濯機や家電が外に置いてあり騒音に悩まされている。20代/男性
ドアの開閉音が気になります。壁が薄いので、よく聞こえます。寝てる時は、その音で目が覚めたりしてます。30代/男性
監修者

集合住宅では、多かれ少なれ、隣戸からの音の漏れはあるものです。これを「騒音」と捉えるかどうかは自分や隣人次第だといえるでしょう。従って、「これくらいの音だから大丈夫」「遮音性が高いから大丈夫」ということは一概にはいえず、あくまで状況次第というのが騒音問題の難しいところです。

アパート・マンションの騒音問題はまず家主や管理会社に相談する

多くの人が経験している、近隣住民による騒音。
被害にあった人たちは、どのように解決しているのでしょうか。同じく、アンケートで聞いてみたところ、以下の結果となりました。

アンケートで聞いた 騒音で悩んだ際どのように解決した?

大家さんや管理会社に相談:30.4% 直接苦情を言った:12.8% 警察に相談:7.5% 引っ越した:5.9% その他:4.0% 特に何もしなかった:51.6% (複数回答)

解決法としてとった策としては、「大家さんや管理会社に相談」がもっとも多い結果でしたが、一方で、特に対策をとらず何もしなかった人が半数を上回っています。

アパートやマンションにおける騒音は、一日でも早く解決したいものです。もし周囲の部屋から発せられる音が気になるようなら、まずは家主や管理会社に相談し、騒音に悩まされている旨を伝えましょう。

相談を受けた家主や管理会社は、共用部の掲示板での注意喚起やポスティングなどを行い、騒音問題が発生していることを対象の住民に知らせるよう対応してくれます。心当たりのある住民はこの時点で気をつけてくれることも多く、角を立てない問題解決も期待できます。

注意喚起をしても騒音が収まらない場合には個別の対応が必要になりますが、これも家主や管理会社に任せるとよいでしょう。住民同士で直接苦情を伝えてしまうと感情的になりやすくなり、嫌がらせなどのトラブルに発展するおそれがあります。

さらには、もめ事が長引き事件にまで発展するケースもあります。騒音が気になるようになったら家主や管理会社に対応を任せ、住民同士による直接交渉は極力避けるのが無難です。

警察に通報してもよい騒音トラブル

家主や管理会社に相談しても騒音が鳴り止まない場合、警察への通報を考える人も多いでしょう。警察は原則として民事不介入のため、住民間のトラブルには対応できません。しかし、次に紹介するような事例は不法行為に該当する可能性があるため、警察への通報を検討しましょう。

隣人が常軌を逸脱した騒音を発している

隣室から常軌を逸脱した騒音が発せられている場合、軽犯罪法違反に該当する可能性があります。

同法第1条14項では「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」を拘留又は科料に処すると規定しており、警察官から注意を受けているにもかかわらず騒音を止めない住民は、処罰の対象となる可能性があるでしょう。

度重なる騒音で精神的にダメージを受けている

夜遅くまで聞こえ続ける話し声や音楽、就寝時間に響き渡るテレビの音など、生活を脅かすような騒音が続くと精神的なダメージを負うおそれがあります。

騒音により受けた睡眠障害や精神障害といった傷害は、刑法204条の傷害罪に該当する可能性があるため、加害者は罰せられる可能性があります。

文句を言ったら執拗な嫌がらせをされた

騒音に対する苦情を申し入れた後に受けた嫌がらせは、不法行為に該当する可能性があります。前述の軽犯罪法に抵触するような行為だけでなく、脅しを受ければ脅迫罪、心身への直接的な攻撃は暴行罪や傷害罪、ドアや窓ガラスの破壊は器物損壊罪など、行為によってさまざまな犯罪に該当する可能性があるため、警察に相談しましょう。

警察に騒音トラブルを通報・相談する方法

警察への通報を行う際、真っ先に110番をイメージする人は多いのではないでしょうか。110番は代表的な警察への通報手段であることは間違いありませんが、騒音被害の状況によっては異なる通報手段が有効である場合があります。

相談したい場合は「#9110」

騒音による迷惑は受けているけれど、不法行為であるか判断がつかないというような場合は「#9110」を利用しましょう。#9110は警視庁総合相談センターに繋がる番号です。現時点で事故や事件になっていないトラブルに関する相談を受け付けており、騒音に関するお悩み相談にも対応しています。

ダイヤルするとまず警視庁総合相談センターへと繋がり、相談内容に応じて専門の相談窓口へと取り次いでくれます。緊急性はないものの事件性があるような内容も、適切な窓口へと誘導してくれるので、まずは気軽に#9110に相談してみるとよいでしょう。

緊急性が高い場合は「110番」に電話する

今現在騒音による被害を受けている、騒音を発する住民から嫌がらせを受けているというような緊急性がある場合の通報は110番へ行いましょう。110番は最寄りの警察本部や指令センターへと繋がり、現場に近い警察官に出動するように命令を出します。

110番に通報すると最初に「事件ですか?事故ですか?」と聞かれるので、騒音の被害を受けている旨を伝えましょう。続いて出動に必要な情報を集めるための質問をされます。具体的かつ冷静に被害状況を説明します。

その後は現地を訪れた警察官が騒音の状況を直接確認し、必要に応じて騒音を出している主に注意を行います。いきなり逮捕や拘留が行われることはほとんどありませんが、前述の軽犯罪法の要件に「公務員の制止をきかずに(中略)静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」とありますので、騒音が鳴り止むまで何度も通報するつもりでいるとよいでしょう。

被害届を出すという選択肢も

騒音問題の解決を警察に頼る場合の選択肢のひとつに被害届の提出があります。被害届は、犯罪による被害の存在を警察に知らせるための書類です。110番への通報が現在進行形の犯罪行為に対する対応であるのに対し、被害届は過去に被害を受けた犯罪への対処を求める対応であるという違いがあります。

なお、被害届は必ず警察に受理されるとは限りません。「隣人がうるさいからなんとかしてほしい」というような内容では受理されにくく、警察への相談実績が残る以上の効果は期待できないでしょう。

騒音被害に対する被害届を出す場合には、具体的な被害に関する情報や録音などの記録、騒音レベルの測定記録などの証拠があると、被害届を受理してもらいやすくなるでしょう。

監修者

無用なトラブルを避けたいというのであれば、引越しも視野にいれて検討してみましょう。「どうして被害者が転居しなければならないんだ」とのお考えもあるでしょうが、騒音問題は解決が難しく、トラブルが継続している間は常にストレスを抱え続けることになってしまいます。

まとめ

コロナ禍以降増加傾向にある騒音被害は、賃貸住まいにおいて大きな問題です。家主や管理会社への相談で解決できるのが望ましいですが、騒音を出している住民によっては被害が拡大する恐れもあり、時には住民同士のトラブルまで発展する場合もあります。

騒音被害の拡大が続くようなら、#9110や110番など、警察へ相談するのもひとつの手です。騒音問題が自然に解決することは稀ですので、騒音により静かで安全な生活が脅かされるようなら、健康被害や犯罪被害を受ける前に警察の力を借りるとよいでしょう。

監修者プロフィール

監修者

亀梨 奈美 株式会社real wave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年に株式会社real wave設立。不動産全国紙の記者として、不動産会社や専門家への取材多数。
「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに執筆している。

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