平屋の賃貸に住むことはできる?
平屋のメリットや物件の選び方を解説
最終更新日:

- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士/宅地建物取引士/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)/相続診断士/J-REC公認不動産コンサルタント
- 賃貸で平屋に住むことはできる?どんな人におすすめ?
- 物件数が多いわけではありませんが、平屋に賃貸で住むことは可能です。築古のイメージがある平屋ですが、リノベーション物件も増えて注目を集めています。家全体に目が届きやすく安全性が高いため、小さな子どもや高齢者がいる世帯にも向いています。いつか平屋を建てようと検討中なら、試しに賃貸で住んでみるのもよいでしょう。
平屋は戸建住宅のため、家を建てるか中古物件を購入しないと住めないというイメージがあるかもしれません。しかし、実は賃貸物件の平屋もあり、借りて住むことが可能です。
この記事では、平屋の賃貸に住むメリット・デメリットや、平屋の賃貸がおすすめの世帯について解説します。平屋の物件選びのポイントについても見ていきましょう。
平屋とは1階建ての戸建住宅のこと

平屋とは、リビングや寝室、キッチン、バスルームやトイレなどのすべての空間を1フロアに配置した、1階建ての戸建住宅のことです。
戸建住宅というと2階建てのイメージが強いかもしれませんが、近年はリノベーション物件の増加や、動線に優れた平屋の暮らしやすさが注目を集めたことを背景に、高齢層だけでなく若い世代の世帯でも平屋の人気が高まっています。
平屋は自身で家を建てるか、中古物件を購入しなければ住めないわけではありません。物件数こそ多くはないものの賃貸もあるため、借りて住むことも可能です。
平屋の賃貸を選ぶメリット

平屋の住宅には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。平屋の賃貸を選ぶ5つのメリットを解説します。
生活動線が集約できる
平屋は1階建てのため階段がなく、家の中をスムーズに移動できる点がメリットです。生活動線、家事動線のどちらも集約できるため、家事もラクになります。
たとえば、2階建てで水回りが1階、ベランダが2階にある住宅の場合は、1階で洗濯したものを2階のベランダまで運び、取り込むときも階段を上り下りしなければなりません。その点、平屋は上下移動なく洗濯を完結できます。掃除も1フロアですむため、時間短縮が可能です。
コミュニケーションが取りやすい
平屋は1つのフロアに居室がまとまって配置されているため、家族など同居人と同じ空間にいることが自然と増えます。そのため、コミュニケーションがとりやすくなるでしょう。
2階がないため、階段から落下するといった事故の心配がなく、小さな子どもや高齢者の動きに目が届きやすい点も安心です。
室内の高低差がなくバリアフリー
平屋は、階段の上り下りがなく生活できるバリアフリーな設計になっています。持病やケガで階段での移動が難しい場合や、転倒のリスクがある高齢者、小さな子どもがいる世帯でも生活しやすいというメリットがあります。
耐震性が高い
平屋は2階建て以上の高い建物と比べて構造的に安定しているため、地震などの揺れに対しても強いと考えられています。
高さのある建物ほど重量がある分、揺れも大きくなりますが、1階建ての平屋は建物自体が倒壊するリスクも低く、いざというときにはすみやかに外へ避難することもできます。
住宅の耐震性が高いとしても、家の中のタンスや食器棚、本棚などは強い揺れが発生すると倒れてしまう可能性があるため、平屋でも家の中の地震対策は必要です。
リノベーション物件が増えている
平屋の賃貸と聞くと、古民家のような古い物件をイメージするかもしれません。しかし、近年は古民家や中古住宅を大規模改修したリノベーション物件が増えており、きれいで設備や機能性に優れた平屋もあります。
それに伴い、生活しやすい平屋の賃貸の人気が高まっており、高齢者だけでなく若い世代からも注目を集めているのです。

平屋の賃貸物件にはさまざまなメリットがあります。室内の高低差が少なく、高齢者や小さな子どものいる世帯が生活しやすいことや、集合住宅より騒音が気にならない点も魅力です。もともと平屋物件は物件数が少ないため、人気物件となり競争率が高い場合もあります。
平屋の賃貸を選ぶデメリット
平屋にはメリットの一方で、暮らしにくさを感じる点もあります。平屋ならではのデメリットもふまえて、物件を検討することが大切です。
プライベート空間が確保しにくい
平屋は1フロアにすべての居室が配置されるため、家族や複数人で住む場合はプライベート空間を確保しにくいというデメリットがあります。コミュニケーションがとりやすいメリットがある一方で、常に人の気配があり、1人だけの時間をとりにくいという側面もあるのです。
また、2階建ての住宅と比べて居室の数も限られるため、居住人数によっては全員分の個室を用意することは難しくなるでしょう。
日当たりが悪い部屋がある場合が多い
平屋の形や立地にもよりますが、居室が多い場合は、外に接しない中心部のスペースなどは特に日当たりが悪くなってしまいます。
また、高さがないため、周囲の建物の影響を受けやすい点にも注意が必要です。周囲に2階建て以上の建物が多いと、南向きでも日当たりを確保できない場合があります。
防犯面の不安がある
平屋は1階建てのため、外に面している扉や窓が多く、不審者が家の中へ侵入しやすいという点はデメリットです。道路や周囲の建物から、窓を通じて家の中が見えてしまいやすいこともあります。セキュリティ対策はしっかりとしておく必要があるでしょう。
水害に弱い
2階がない平屋は水害に弱い傾向があるといえます。2階建て以上の住宅であれば上階に避難することができますが、平屋の場合は建物外のほかの避難先を確保しなければなりません。大雨のときや近くに川や海があり水害のリスクがある立地の場合は、注意が必要です。
賃貸を契約する前に水害マップなどをチェックして、安全性やいざというときの対処法を確認したうえで検討することをおすすめします。

平屋の賃貸物件にはデメリットもあります。防犯面でのデメリットや水害に弱いというデメリットは安全性に直結する重要な事項です。防犯カメラの設置などのセキュリティ対策や水害マップ、避難経路、避難場所の確認など必要な対処はできる限り検討しておきましょう。
平屋の賃貸がおすすめの人

メリットとデメリットを踏まえて、平屋の賃貸はどのような世帯におすすめなのでしょうか。3つのケースについて見ていきましょう。
居住人数が4人以下の世帯
平屋は相当な広さのある物件でない限り、居室の数に限りがあります。居住人数が多いほど、プライベート空間の確保がより難しくなるため、居住人数は4人以下程度が望ましいといえます。
また、賃貸の平屋は、戸建てに住んでみたいという一人暮らしの方にもおすすめです。2階建ては一人には広すぎて家賃も高いですが、平屋であれば広々とした家でペットと暮らしたり、趣味を楽しんだりすることができます。
小さな子どもや高齢者がいる世帯
平屋は1フロアで家全体に目が届きやすい、安全性が高い、バリアフリーといった特徴を持つため、小さな子どもや高齢者のいる世帯に特におすすめです。階段の上り下りがないため、持病やケガのために家の中の移動をラクにしたい方がいる世帯にも向いています。
平屋の家を建てようと検討している人
平屋の戸建住宅を建てたいと思う一方、防犯面やプライバシー空間を確保しにくいことへの不安があったり、日当たりの状況を知りたかったりと、家を建てる前に知りたいことが多いという人もいるでしょう。
実際に住んでみなければわからないことも多いため、賃貸で住み心地を試してみてから、どのような家を建てるべきかを検討してみるのもひとつの方法です。
平屋の賃貸物件選びのポイント

暮らしやすい平屋の賃貸物件を選ぶためには、物件情報を確認するときや内見の際にいくつかチェックすべきポイントがあります。ここでは、5つのポイントに分けて見ていきましょう。
防犯面のチェック
人目につきにくい侵入経路がないか、玄関の鍵や窓などに防犯対策がしてあるかなど、セキュリティ面は必ずチェックしてください。「高い塀で囲まれている」「中庭側に窓がある」「二重ガラスを採用している」といった平屋なら、防犯性が高いといえます。
周囲の建物、日当たりはどうか
平屋の周囲に高い建物があると、平屋は日陰になったり風通しが悪くなったりします。周囲の建物で日当たりや風通しを妨げられないかは要チェックです。
日当たりは、時間帯ごとにチェックできるとなおよいです。周囲の建物から家の中が丸見えではないかも確認するとよいでしょう。
また、今は周囲に高い建物がなくても、すでに建設予定がある可能性があります。平屋の近くに建設中の土地がある場合は注意が必要です。
築年数やリフォーム歴
平屋の築年数は幅広いため、築年数やリフォーム・リノベーション状況も確認します。また、内見時は使いにくい場所や設備がないか、どの空間もきちんと手入れされていて老朽化していないかも要チェックです。
一見きれいにリフォームされていても、設備などが古くて使いにくいケースもあります。不安な点は、細かいことでも都度不動産会社へ確認することをおすすめします。
水害などに弱い立地ではないか
平屋は水害に弱いため、ハザードマップで過去に水害被害がないかなども確認します。川や海の近くを避けることが望ましいですが、難しい場合は標高の高い場所にある平屋を選ぶなど、立地に気をつけることもポイントです。
庭がある場合は掃除ができそうか
平屋の場合、賃貸でも庭がついていることがあります。その場合は、家の中だけでなく庭についても、雑草が生えたまま放置されていないか、害虫被害のリスクがないかなど整備状況を確認します。雑草などは住みはじめてからの手入れも必要です。
掃除ができるか、庭の手入れに必要な道具などの費用は借主と貸主のどちらが負担するのかなども、契約前に大家や管理会社に確認しておくと安心です。

平屋の賃貸物件を選ぶときには、間取りや設備など通常の賃貸物件選びのポイントに加えて、1.防犯性、2.日照・通風、3.築年・修繕履歴、4.ハザードマップ、5.庭の管理責任・費用負担などについて総合的に確認して、検討するとよいでしょう。
まとめ
平屋は実際に住んでみると便利で暮らしやすい要素が多く、幅広い層からの人気が高まっています。また、平屋を建てようかと検討中の場合も、賃貸で試しに住んでみると家づくりで優先すべき条件がわかるかもしれません。メリット・デメリットをふまえて、賃貸の平屋を住まいの選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
監修者プロフィール

- 三輪 歩己
- 不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント。
約20年間の鑑定・宅地建物取引業の経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として活動を行う。