住まいのコラム

賃貸の管理費とは?
相場とアパート・マンションの入居で損しないための家賃表示の見方を解説

最終更新日:

監修者
矢野 翔一
2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者/有限会社アローフィールド代表取締役社長
賃貸物件の管理費とは?
管理費は、物件の維持や管理費用として、借主が貸主に支払う費用です。一般的に家賃の5%から10%程度が相場といわれていますが、法律や業界団体による金額の規制はありません。類似の費用に「共益費」がありますが、住民が共有する設備等の運営に必要な費用と定義されており、管理費とは用途が異なります。

賃貸物件の不動産広告の多くでは、家賃のほかに「管理費」の記載があります。物件によって金額が異なるこの費用は、どのような役割を持ち、どのような相場になっているのでしょうか。
今回は賃貸物件にかかる費用の1つである管理費の役割や金額の相場についてご紹介します。

賃貸の管理費とは?

賃貸物件の家賃と同時に徴収される管理費とは、具体的にどのような役割を持つ費用なのでしょうか。

管理費はアパート・マンションの維持・管理に使われる費用

賃貸物件の管理費とは、物件の維持や管理費用として借主が貸主に支払う費用です。不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」では「マンションの事務を処理し、設備そのほか共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用」と定義づけられており、住民全体が共同で負担しています。

なお、上記の通りに定義されているものの、管理費の用途に規制はなく、また徴収した管理費と実際に発生している管理費用が一致していないとしても問題はありません。

共益費との違い

管理費と類似の費用に「共益費」があります。
共益費は「不動産の公正競争規約」において「借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用」と定義されており、厳密には管理費とは用途が異なります。

ただし、管理費同様に用途は規制されていません。そのため管理費・共益費を合算して徴収されるほか、管理費の一部として徴収されるケースが少なくありません。

管理費が高めに設定されている物件は管理や維持がしっかり行き届いている良い物件と考える方も多いでしょう。しかし、管理費の全額が管理や維持に充てられているとは限りません。家賃を低くする分、管理費を高く設定するケースもあるので注意しましょう。

賃貸の管理費の相場

管理費の金額には法律や業界団体による規制はありませんが、共通した金額設定の傾向が相場として扱われています。賃貸物件の管理費は、特殊な事情がなければ家賃の5%から10%とされるのが一般的です。この割合は大家さんによって異なりますが、おおむねこの範囲内で設定されています。

管理費という項目を設けず、家賃に管理費を上乗せして徴収している大家さんもいます。

管理費ゼロの賃貸物件はお得?知っておきたいアパート・マンションの家賃表示の見方

一定の相場が形成されるほど管理費の徴収が一般的である一方、管理費ゼロの物件も存在します。

不動産広告で物件を探している人にとって、管理費ゼロの物件は大変魅力的に見えるでしょう。しかし、管理費を徴収せずに賃貸経営を行える仕組みの裏には、物件を魅力的に見せるためのカラクリがあるため、必ずしも管理費ゼロ物件=お得な物件であるとは限りません。

なぜ一部の不動産物件では管理費をゼロに設定できるのでしょうか。そして管理費をゼロにすることで大家にどのようなメリットがあるのでしょうか。

管理費ゼロの理由

管理費がゼロに設定されている不動産物件であっても、物件の管理にまったくお金が使われていないというわけではありません。住民が心地良く暮らせる環境を作り、多くの入居希望者を集めるためには、どのような物件であっても管理業務は必須です。では管理費ゼロの物件では、どのように管理費を確保しているのでしょうか。

管理費の名目で管理にかかる費用を徴収しない物件の多くは、家賃から管理費を捻出しています。
一見、入居者に管理費を負担させずに大家が自己負担しているように見えますが、実際には家賃が管理費を含めた金額設定になっているため、管理費あり物件と同様に、入居者も費用負担していることになるのです。

管理費が家賃に上乗せされているかを見抜くには、周辺の類似物件の家賃と管理費を比較する必要があります。管理費がゼロで、家賃が高めに設定されている場合は管理費込みの家賃と判断できるでしょう。

管理費ゼロ物件のお得なポイント

管理費ゼロ物件はあくまで表記の違いでしかないことを説明しましたが、管理費ゼロに設定することには、入居者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

家賃補助の対象が増額される

入居者が得をするケースの代表が、会社から支給される家賃補助です。補助金額の算出方法は会社によって異なりますが、管理費や共益費を除く月額家賃に基づいて支給するケースが多いです。

管理費ゼロ物件ではすべて家賃の中に含まれるため、管理費に相当する金額も家賃補助の計算対象となります。家賃5万円管理費5000円では5万円の補助しか受けられないところ、家賃55000円なら全額が補助対象となるため、年間で6万円も多く補助を受けられるというわけです。

なお、前述の通り家賃補助制度は会社によって内容が異なります。どのような補助を受けられるのかあらかじめ会社に確認しておきましょう。

住居にかかる費用がわかりやすい

住居にかかる費用のわかりやすさもメリットです。
不動産広告に表記される家賃は、家賃本体の金額が目立つように表記されます。家賃5万円管理費5000円の物件であれば、広告の目立つところに「家賃5万円」と記載があり、「管理費5000円」の表記は小さくされるのがほとんどです。そのため入居希望者が後から管理費の表記を見つけ、予算をオーバーしていることに気づくケースもあるでしょう。

管理費ゼロ物件では管理費を表記する必要がないため、入居希望者ははじめから毎月5万5000円の支払いがある物件として検討できます。検討中に毎月の負担額が違うと知り「5万円なら入居したかったけれど5万5000円では難しい」と断念することがなくなり、予算内での部屋選びがしやすくなるでしょう。

管理費ゼロ物件だからといって必ずしもお得ではない?

管理費ゼロ物件は家賃がわかりやすくなるというメリットがある一方、入居者にとって不利な条件が発生する場合もあります。

注意したいのは初期費用・更新料が増える点です。初期費用や更新料は、一般的に「家賃の○ヵ月分」というルールで請求されます。家賃5万円・管理費5000円の物件で更新料として家賃1ヵ月分を請求されたなら、家賃として設定されている5万円を支払えば済みます。

しかし家賃5万5000円管理費ゼロの物件の場合、更新料として5万5000円を支払わなければなりません。同様に初期費用の1つである仲介手数料も家賃を基準としている場合が多いため、管理費が設定された物件よりも支払額が高くなるでしょう。

管理費が家賃に上乗せされているケースでは、家賃に基づいて設定される初期費用が高額になりがちです。ゼロ物件がお得とは言い切れないため、周辺の類似物件の相場やトータルでかかる費用などを比較しながら契約を決めましょう。

まとめ

賃貸物件の管理費は、快適に暮らせるアパートやマンションを維持するために必要な費用です。家賃の5%から10%程度に設定されるのが一般的ですが、中には管理費をゼロに設定する物件も存在します。

管理費を徴収しない物件であっても、実際管理にかける費用をゼロにするわけではありません。管理費用に相当する金額は家賃の一部に盛り込まれ、管理会社や大家さんは設備の維持や共用部の備品交換費用を家賃から捻出する仕組みになっています。

管理費ゼロ物件だからといって必ずしも安く住める物件とは限らない、ということを認識し、物件選びの際には家賃と管理費を合わせた費用が適切であるかを比較検討するように心がけましょう。

監修者プロフィール矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者。
不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

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